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【連載版】脇役令嬢日記~私のことよりメインストーリーを進めてください!~  作者: コーヒー牛乳


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9/11

一緒にドレスを買いに行って欲しいの。それが答え……

 某月某日。今日は小雨。

 いよいよ音楽会当日。


 準備はばっちり、目はバキバキ、私の両手も脚力も仕上がっている。

 

 音楽会は制服でも私物のドレスでも可となっているため、本日ほぼ全ての女子生徒はドレスを着用していた。


 私も今日のために深い青の光沢が上品なドレスにした。

 お父様が用意してくださったものは、ライムグリーンだった気がしたのだけど。


 青はマデリン様の瞳の色なので大好きだ。あれ、でも少し色が深い気が・・・・・・?

 おかしなことは重なるものだ。

 なぜか馬車止めに立っていた、アルフレッド殿下に出迎えられた。

 馬車止めからここまで、私の周囲をウロウロと回りながら歩いていて、邪魔可愛かった。


 少しだけワンコとお散歩の気分になっていたところで、騒ぎに気付く。

 人だかりの中心ではエドワード殿下の側近候補方が立っていた。

 その輪の中に、ぽつんと頼りない小さい影がある。


「ナタリア、どうしたの?」

「あ、いえ、あのッ。先に行っててください、私は」


 ここで見てます、と言おうとしたが。アルフレッド殿下はスチャッと隣に立った。

 あ、一緒に見るんですね。はいはい。見るのはこっちじゃなくて、あっちですからね。


 視線の先には桃色の髪。

 あれは、あの図書館の日にマデリン様の御み足に触れた男爵令嬢ではないか。

 色とりどりのドレスの中、制服をまとった彼女はひどく浮いて見えた。


「──ひ、ひどい・・・・・・っ、これじゃあ音楽祭に出られません!」


 男爵令嬢はドレスだった布きれを握りしめ、涙をぱらぱらと次から次へとこぼした。


「──これはナイフで切られた跡じゃないか?」


 エドワード殿下の護衛騎士見習いは、令嬢が握っていた桃色の布きれを検分するとそう言った。

 

「──ドレスの保管は女子寮で?」

「──はい・・・・・・っ」


 男爵令嬢は続けて、今日という日をどれだけ楽しみにしていたのかを涙ながらに語り始めた。うむ。令嬢の喉の調子は準備万端で、しっかり温まっている様子だ。負けられない。


「──つまり、女子寮内にナイフを所持した女子生徒がいるということか。持ち物検査を実地するか」

「──今から行うのは現実的ではない。持ち物検査を行うなら、本日の帰寮時だろう」

「──では、寮の管理人に言づてよう。あとは報告と」


 男爵令嬢から聞ける情報は全て聞き取ったと判断した、側近候補の令息たち。

 令嬢を輪から外してポンポンと意見を交わしている。


 さすが王族の側近候補。未来の出世株に見込まれた若者たちである。

 てきぱきと状況を確認し、実行していく手腕は見事なものだ。


 まずは感情を共有したい男爵令嬢は「え?」「あのっ」「まって」と戸惑っている。

 乙女としては、話を聞いてもらいたい時ってありますよね。うんうん。どうしてそうなったかを聞いて、そして一緒にドレスを買いに行って欲しいんですよね。うんうん、わかりますよ。


 でも残念ながら国の中枢で生き残る人材って、結論主義なのかもしれない。


 ところで、女子寮で切り裂かれたドレスの切れ端を、講堂前の広間という一番人通りの多い場所まで持ってきて、涙を流すのはなぜ?


 そんな疑問をいだいているのも、まだしぶとく動かないのも私たちだけのようだ。

 周囲を取り囲んでいた生徒たちは、状況が動いたことを確認してそれぞれ散ろうと動き始めた。皆、ここで野次馬をしている暇はないのだ。


 今回の音楽祭は学園内の交流会という名目ではあるが、その実態は生徒会役員へのアピールの場となるらしい、からだ。


 生徒会とは、生徒が主体となって学園の自治活動をするための機関である。

 その役員には選ばれし生徒──将来、国を動かす令息・令嬢たち──が集まっている。


 この音楽祭で爪痕を残して、生徒会へ入部することができれば。

 中枢機関へのコネクションや有望株との縁が掴めて大逆転! ということらしい。


 入学したばかりだというのに。みんな、将来のことまで考えていてえらい。


「私も将来を見据えて行動しなければなりませんね」

「・・・・・・っ、ああ! そうだよ!」


 いつの間にか握られていた手をギュムギュム握られては、ナデナデされているがまあいい。



 観客が減ってきたので、私たちも物陰に移動する。

 アルフレッド殿下がポテポテついてきたので、ついでに一緒に隠れることにした。

 ちょっと。ただでさえ大きいのですから、もっと気合いを入れて隠れてください。


 サッと、しゃがみ込んだと同時に、アルフレッド殿下の上着が肩にかけられた。


「あ、え、ありがとうございます・・・・・・?」

「素敵なドレスを隠すのは惜しいけど、ちょっと背中が無防備すぎるから。我慢してね」


 コートからはふわりとアルフレッド殿下の香りがした。

 不思議と嫌ではないのが、不思議だ。そばにいることが最近多いから、慣れたのだろうか。

 慣れたのに、不思議と鼓動は大きくなる。

 ドキドキと速さを増す鼓動が、耳に届くほど。


 もしかして、これが、殺されそうな恐怖・・・・・・?

 コートの両袖で絞め殺されそうなほど、ギッチギチに結んで来る殿下。顔が怖い。


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