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第五楽章 2

小学校にあがってすぐの頃、「草競馬」という曲をピアノ教室の同年代六人で連弾する事になった時、一人分の楽譜がピアノではくウッドブロックの楽章だった。


みんなピアノを弾きたがったため、ウッドブロックはあみだくじで決める事に。


それが絵茉に当たった時、仲間たちは「ごめんね」と口々に謝ってきた。

だが絵茉はホッとしていた。


連弾でミスはできない。

だったらピアノは弾けなくても同じリズムを叩いていればいいウッドブロックの方が気が楽だと。


中学に入ってからのフルートもそうだ。


同学年の仲間は、3年生と一緒に吹いて覚えられるため、どの子も1stパートを割り当てられていた。

クラリネットやトランペットの同級生は、メロディが多いと喜んでいた。


だが絵茉に配られたのは2ndパート。

どうせ吹けないんだからなんでもいいでしょと先輩から渡された楽譜だったが、絵茉にとっては「2」という数字に少しだけ楽になれた気がした。

目立ったメロディが多い楽譜よりも、その方がいいと思えた。


けれど今日はフルートは自分だけ。

メロディも自分。

奏のサポートがあるとはいえ、今までのように逃げ場がない。


「でも…」


頭の中で何か大きな音がなり始めた絵茉の肩を、母親がポンと叩いた。

その暖かな手に絵茉の中から余分な音が消えた。

振り向くと母親が笑顔を自分に向けてくれている。


「今日はお母さん一人じゃないもんね。緊張してるけど、絵茉もいるし奏先生もいる。だから大丈夫だね」


先程の溜息は何処へやら、その微笑みは何人をも包み込む聖母のような穏やかな笑みだ。


「お母さん…」


いつの間にか絵茉からも緊張が消えているような気がして、奏はこれが母の愛なんだなと二人の姿を絆を感じて温かい視線を向けた。そして確信する。


きっとこのコンサートは絵茉を成長させてくれると。

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