独善
くだらない。
だけど、なんとなく悔しい。
白色の太陽にムカついてくる。
風もなく、まっさらな世界が気に入らない。
気分のままに江ノ島まで歩くと決め、左に曲がる。携帯電話で地図を確認すると目的地まで直線距離で10km。右手に海を眺めながら歩き始める。
次第に思考がぼんやりしてくる。
言葉が虚にかき消える。走馬灯が流れてくる。
そういや、23かそこらの頃はよく海に来ていた。そうそう、この橋で会社の先輩と取り止めも無く話をした。
足が進むにつれて、人が増えていく。視界という「画面」は、太陽、江ノ島、海、空、砂浜、植物で構築された柵、自転車、人を映し出している。
波音が聴覚を刺激してくる。
この「景色」は、今も変わらない。
何も変わらない。記憶のまま。
変わったのは、受け取り手である俺か。
暑い。
ほぼ真夏日。
日差しが容赦なく体力を奪っていく。自分を物差しとすれば、時間の経過による老化が顕著に感じられる。
だけど、目に入るのは変わらない景色。
湿度のせいか、肌感覚はなんとなくタイに近い気がする。
この辺りは釣りをしに来ていたりしたから、いろいろと記憶が蘇る。
若かったあの頃。周りがきらきらしていて、嫌だった。何もない、何にもなれない自分を、俺は「嫌だ」と思った。
そうだ。だから、2年掛かりで学歴ロンダリング出来るところを探した。そして、教授に拾われ、俺は「生まれ変わった」。思い出した。
気がつくと、視線の先には江ノ島が見える。
鳥が優雅に飛んでいる。
まるで葬式だな。自分への。
事実、死んだんだろう。きっと。
だから、思い出したんだ。何度も「挫折」してきたことを。この景色が思い出させてくれた。嫌だから、忘れていた。
疲れた。左手には片瀬江ノ島駅。江ノ島には行けそうにない。明後日には入社式、無理はできない。
振り返ると足跡。波で消え去る程度の足跡。
帰るか。
素直にそう思った。




