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まっさらな自由

人恋しくなり、部屋から出る。

外は相変わらずの曇り空。雨はまだ降っていない。


適当に柵を越えて最短距離でイオンに向かう。

遠回りになるし正規ルートはクルマが多いから、ついやってしまう。


なにもないところ。そんなイオンモールのCDショップには「地元特集コーナー」なる不思議な特集棚が設けられている。県出身者の特集棚。だけど「彼ら」は一枚だけ。傷だらけの使い回しの防犯用ケースに入れられたDVD。


「1224」。

数字とシルエットが特徴的なデザインパッケージ。


いつからあるのかわからないぐらいにバーコードが日焼けしている。値引きもされないし、欲しい方は既に購入済みだろうから、おそらくこのままあり続ける「解散ライブ」。


改めて眺めていると、店員さんが話しかけてきた。

「何かお探しですか」

「「彼ら」に関するものは、これだけですか?」

「取り寄せなら可能ですが、今はこれだけですね」


何度か来ても残っているし、新たに入荷されることもない。


バイト戦士な丸顔のお兄さん。身長は俺より30cm定規分ぐらい高い。皺がないし、たぶん高校生。


「彼ら」など、全く知らないとしてもおかしくない世代。

この古ぼけたDVDが撮影された時代は下手しなくても親が生まれたかどうかのレベル。それぐらいに古びた物語。


今からみれば「郷土の英雄」なんて祭り上げられても、彼は人だったのだろう。彼がいなくなってしまった原因。それは、おそらく「人間不信」。ある時、自分が「裸の王様」だと気がついた。


世の中の仕組みを理解して、ご自身が単なる「神輿」だと気がついたときにはもう「誰もいなかった」。


そして雁字搦めにされる「恐怖」から「逃げ出した」。


様々な言い訳を重ねて、お為ごかしなキラキラした化粧を施したアバターをつけて、この国から「いなくなった」。


「商品価値」があれば、何をしても許される世界。運と実力に「時流を読み切る才能」。見た目も華やかな彼は「成功者」。


逆を言えば、売れなくなれば見向きもされないし、読み間違えると世論ってやつから「総バッシング」で人格否定まで喰らわされる場所。


ソロとバンドで2回成功した彼は、2人目のギタリストを大絶賛している。これだけ「溺愛」した2人目のギタリスト。一緒に曲を作れば良いのに、何故かしなかった。


「卒業」される前後に今でいうコンピレーションアルバムの録音をし、2018年に発売している。2020年にも平成時代を代表する作曲家のアルバムに歌詞を書いて歌っている。別に曲を作れなくなっていたとか歌えなくなった訳ではない。


人間不信に陥って、いなくなった「主人公」。

信じたものからある意味で裏切られた続けた人。


「引き金を引いた1人目のギタリスト」。過去を振り返らない、気にしないとしながら、おそらく、気にし続けていた。好き嫌いは別として。


なんか「いろいろあったけど、元気?たまには会わない?」ぐらいな問いかけを「売られた喧嘩」と受け止めてそう。


それは「壊れたラジオ」みたいに周年イベントに出演してはドラマーが「2人で話せ」と繰り返す。この台詞を言うためだけにイベントに出てるのかと思うぐらいに同じことしか言わない。もうお一人は「黙秘」。こちらも対象的な2人。


「そうですか」

DVDを棚に戻した。


そのまま店を出て、右へ進む。

あと少しの時間を過ごすための食糧を買いに行く。

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