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失った真実

引っ越し日入れて、残り5日。


どこか泣き濡れた顔のままに不動産屋に向かう。

寂れた風俗街の駐車場の中にある建物。


予定された線路が繋がらなかった街。

唐突に途切れた「他の路線」へのアクセス。

そんな「行き止まり」、歪な街の不動産屋。


Fairest, that art most rich, being poor;

Most choice, forsaken; and most lov'd, despis'd!


自転車を止めて、扉を開こうとするが開かない。重たい。

ガチャガチャしていたからか、内側から扉が外に開いた。


1人ではどうしても開かなかった扉は、ぶつかるかと思う勢いで開いた。知らない人。


社長さんがいらっしゃるかを確認する。慣れない街で困っていた俺に、おすすめのカフェや持ち帰りなどのMAPを提供してくれた人。


今日は外回りでいないそうだ。残念。会いたかった人には会えなかったけど、手土産と「彼女」への感謝を伝言として頼んだ。


この不動産屋は駅前にあるから、扉から出ると会社が線路を挟んで遠くに見えた。輝かしいエンブレム。見上げた空は夕焼け。


Thou shouldst not have been old till thou hadst been wise.


歳を重ねたところで、得られた「知恵」など何もない。

ただ「憧れ」だった。1番初めの小さな会社。その会社の先輩が作ってこの会社が採用してくれた製品。それを記念して、みんなでここまで来て、見上げた「あの日」。


エンブレムを見て思い起こされたのは、先日調べたギタリストが語ったヴォーカリストについての記述。ギタリストにとって、ヴォーカリストは「憧れ」だと。


それなりに歳を重ねてから書いた本であり、ビジネス発言や過剰なリップサービスが目立つギタリスト。本やインタビューでも自分勝手な台詞が目立つが、その台詞はそれまでの「嫌い」という発言とは違った。行間から読み取れるのは、「諦観」だろうか。


先方からは「他にギタリストの知り合いがいなかった」「音楽性は合わないとわかっていた」と回答され、マネージャーからは「初めは別の人を要望していた」とか、散々な言われよう。


人は、太陽や星に焦がれずにはいられない。

だが、太陽や星からしたら人は塵芥でしかない。


That sir which serves and seeks for gain, And follows but for form, Will pack when it begins to rain, And leave thee in the storm,


言い訳ばかりが出来るようになったところで「知恵」ではない。それは「知識」だ。


But I will tarry;

the fool will stay, And let the wise man fly:

The knave turns fool that runs away;

The fool no knave, perdy.


それでもなお「あり」続けるのは何故なのか。古典の解釈が示す通り、それは「選択肢を間違え続ける王様」の「狂気」が成し得た心の形とでもするのか。


相変わらず、何もない街の中を自転車で帰る。

無機質な「エンブレム」に背を向けた。

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