閉じられた幻想の扉
理由もなく、年甲斐もなく泣いている。
止まらない涙で見る天井は、水膜で歪んでいる。
白い天井に剥き出しの金属パイプ。太陽光で反射しているのがわかる。泣きすぎて、思考が上手く回らない。
部屋の中は、化粧品の匂い。
百合の花をベースにしたフローラル。
あの人にあげたハンドクリームの香り。
Love looks not with the eyes, but with the mind.
目で見えるモノが全てでは、ない。残念ながら。それは、この時間を通して、理解せざるを得なかった。
Wings and no eyes figure unheedy haste.
だから、転がり落ちる。自分自身の目的地が見えないのだから。
本当の意味で、最期のフェイスマスクをしていた時。柔らかい泡沫の夢を見ていた気がする。穏やかな香りと優しい温もりに包まれて。
嫌なことも。いいことも。清濁併呑して「ここから」いなくなる。柔らかく緩やかに夢を見る。
苦しくても、まだ負けられない。
俺にはまだ、時間が残っている。
All the world's a stage, and all the men and women merely players.
人生はゲームだ。生きていることは暇つぶしに過ぎない。
Though she be but little, she is fierce.
そう。今はまだ思考を、技術を言葉にできる以上、俺は止まらない。例え、場所が違っても、言葉にする思考が異なっても、俺は、俺の「神様から間違えて齎された」武器である言葉が出続けるまで、止まらない。
負けたとしても、俺自身から逃げ出さない。
願い事の全てが叶わないのは、わかっている。
Love takes the meaning in love’s conference.
見えないものは汲み取れない。だから、水を掬うが如く、気持ちは、涙は、流れ落ちる。だけど。
The miserable have no other medicine but only hope.
泡沫の夢が、ふっと、終わって目が覚めた。意識はどこかぼんやりしており、思考回路の一部が動かない。
だけど、ようやく涙が止まる。夢の中身は覚えているような、いないような。
俺はコインで決めた明日を生きていく。理由なんてない。だから、全ては偶然で。でも「何か」にケリはついた気がした。




