時計仕掛けの道化師
That which we call a rose by any other name would smell as sweet.
薔薇は如何なる名で呼ばれようと「美しい」。
ジュリエットの自問自答は、しかして、悲劇に終わる。
例え、それが「彼ら」にとっての「真実」だとしても。
どこか虚なまま、それでも時間は進む。いよいよ、引っ越しは最終段階。とりあえず、イオンにある区役所の出張所で転居届は出した。事務処理はあまりに「機械的」だ。
What's in a name?
バルコニーで月に向かって、ジュリエットは嘆く。
「名前」の意味を。「名前」の持つ「力」の前に「狂れ伏す」結末が「彼ら」には待っていることを示すかのように。
さあ、次だ。ああ、そうだ。どうせいなくなるなら、綺麗にいなくなりたい。何事もなかったように。
Nothing will come of nothing, speak again.
何もない。何も言うことはない。それが致命者へ至る道だとしても。
だから、関わった人達にきちんと御礼がしたい。仕事に限らず、いろいろな人達に支えてもらっていたと「わかった」のだから。「知るのが遅すぎた」としても、最期のお礼を言う時間は残されている。
最期のエステに、あと不動産屋へのお礼もしないと。もう相変わらずのラスクでいいか。考えるのが、珍しく苦痛だ。仕方ない。ラスク屋で相談する。
「意外と限定版は食べたことない方も多いと思いますよ」。
なるほど。確かに、あまりに身近すぎて食べたことがないかもしれない。なら、これにするか。
ニコニコ笑う、ラスク屋のお姉さん。
初めは見分けがつかなかった、みんな同じ顔に制服。
単なる「風景」。だけど、本当は「どっかの誰か」。
ふと、後何回、ここで買えるのかな。と思った。
なんだか不思議な気分。いつもの場所から「俺だけ」いなくなる。
ああ、そうだ。先方の寮にご挨拶として持って行こう。
いくつか買い物して、荷物と気持ちを置きに家へ戻る。
最期のエステに行く。
でも、その前にやるべきことや気持ちを整理しないと。
部屋の真ん中に寝そべる。
ぐるぐると、思考が回る。
もう、何も考えたくない。
I am a fool, thou art nothing.
道化師の笑い顔が告げる、何も無い機械だと。
それにしても、乾いた風に、灼熱を予感させる太陽。
ベタな曇り空から、移り変わる空模様。
夏だな。嫌でも時は止まらない。
夢の時間が終わる。晴れ渡る空。高い雲。
しかし、相変わらず、自分の両手には、何もない。
刻まれたのは、あまりに多くのborder lineだけ。
Who is it that can tell me who I am.
答えは「何もない機械」。




