誰も不運とは踊らない
食欲は相変わらず、あまりない。
正直に、味わうって言われてもよくわからない。
店内は賑やかだ。入れ替わり、立ち替わり、人が訪れる。
元気な挨拶が交わされ、物理的には「冷たい」どこか「温かな」飲み物が運ばれていく。
あまりに穏やかな時間。コーヒーの匂いがする。
どことなく、苦い。悲しみも、喜びも、噛み締める。
変わらない。いつもと変わらない日。
でも、多分、もうここには来ない日。
今日が、ここでのborder line。
また、か。意外と長くいたからか。あまりに線引きが多すぎて、俺は身動きが取れなくなりそうだ。
食べているクリームシャンティがあまりに苦い。
本当は、生クリームたっぷりで甘いはずなのに。
寂しい。
なんで「選択肢」を選んだ「責任」って重いんだろう。
自分1人の「責任」ですら、こんなに重い。
嫌だな、本当に。
世界は変わらず周り続けるのに、俺だけが相変わらず、また切り離される。
食事が終わり、席を立つ。
だいぶ、混んできた。1人で4人席を占領し続けるのは流石に良くないだろう。
「ご馳走様でした」
「あれ?もう帰るの?」
速やかに会計終える。
「ありがとうございました」
バイトの子は優秀だな。対応がはやい。
最期にお姉さんが出てきてくれた。
店内忙しいのに。なんか悪いことしたかな。
「ありがとうございました」
「寂しいね」
抱きしめられる。何故か、涙が溢れる。
優しさ、寂しさ、寂寥さ、感謝。
急に言葉が紡げなくなる。
言葉に特化して仕事をしていても、こんなときは言葉が紡げない。
苦しい。こんな、どうにもならないジャンク品を、ずっと支えてくれてありがとう。
「また、来るよ。落ち着いたら」
相変わらずの、その場限りの嘘。だけど、今だけは本当だと、信じたい。いつもそう思ってお別れする。
一度も守られない「嘘」。
だから、なんとか笑って、お別れをする。
言いたいこと、いっぱいあったけど、何も言葉にならなかった。全部嘘になりそうで。
いくつもの街、いくつもの別れ。また、会うことなど、いつだって、なかった。なかったんだ。
だけど、また、会いたいという今の気持ちに、嘘はない。
緩やかに、だけど、それでも、止まらない時間。戻ってもくれない時間。ほのかに甘くて、苦くて、苦しい時間。
神様。何故、どうして、俺は止まれないんだ?
どうして俺に、安らかさを、安寧を与えてくれないんだ?
一体、どんな罪を犯したんだ?そんなに許されない罪なのか?
早く、殺してくれ。
なあ、いつまで、俺は、神様、あなたと踊り続けられるんだ?ねえ、教えてくれよ、運命の女神様。
自分勝手に生きてきた、代償の支払い方を。




