誰にもある地図
ガチャ。
カランコロン。
「あ、いらっしゃーい」
「あ、いらっしゃいませ」
相変わらず、元気な声。
今日は2人か。
住宅地の一画。狭い路地。
イオンから社員寮までの抜け道から少し入ったところ。
すれ違いすらまともに出来ない道のため、店の駐車場はもっぱらすれ違いように使用されている。
どこか、寝ぼけたままでいつもと同じように喫茶店に向かう。
自室の扉を開ければ、目の前はイオンモール。ベタ塗りの曇り空。湿気混じりだ。改めて見ると、巨大な建築物である。こうして、客観的に見たことなかったな。画一的で無駄があまりない。思想が入らない「建築物」。
交通量が多く、狭い路地裏。自分の身長より高いブロック塀を伝っていけば、急に開けた空間。外には一本の木。その下にはテーブルと椅子のセット。童話の世界のような行きつけの喫茶店。
ピンク色の看板。こうしてみると「異質」だ。さっきのイオンモールと比較しても、思想が入った、生きている「建築物」。
テイクアウェイ用の小窓もあり、ソフトクリームなどはそこから買って、そのまま外で食べられる。
ここにくる以前は別の場所で営業していたらしく、前の店時代からの常連客も多い。
まだ仕事していた時期に通りがかったら、バイクだらけになっていたことがあった。見た目も大変いかつい。てっきり、完全に「事故事例」だと判断して、警察に電話しようか、本気で迷った。とりあえず、話を聞こうと店に入ったら、前の店からの常連客様達だった。かなりびびった。
とりあえず、話をするのは有効だ。とりあえずで殴って解決することはない。余計な手間が増えるだけである。まあ、衝動的に110番しなくてよかった。
そんな今日、行きつけの店の今月最終日に顔を出す。
正面は持ち帰りアイテムの飾り棚。冷蔵庫。プリンやシフォンケーキが見える。
店内は全体的に木目調で、中二階がある。
パッとした感じは「バンガロー」かな。子供が好きそう。
そんなに広くない店内は、非常に残念なことに植物だらけ。色とりどり。しかも、俺は壁際が大変苦手だ。逃げられないという心理的圧迫感は、かなり厳しい。
だから、いつも同じ席。店の真ん中。
植物からも一番遠い席。カフェのお姉さんは笑うが本当にダメなんだ。
いつも変わらず、同じものを食べる。
クリームシャンティとチャイ。
毎回違う味がする、不思議な食べ物。




