全てを切り裂く刃
久しぶりの投稿です。
読んでくださっている方は、遅くなってすいません。
遅くなってしまったのに内容は短いです。すいません。
でも、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「お前。今〝なんて〟言った」
トマズから笑みが消える。
「耳は飾りなのか。その自慢の鱗を切り裂いてやると言ったんだ」
男は抜刀の構えを維持したまま言う。
「君は、馬鹿なのか。この海竜の鱗は、いかなる攻撃を弾く、いや、防ぐ。剣だろうが、槍だろうが、銃だろうが、この海竜の鱗は最強の防衛能力だ」
トマズの神威が高まったためなのか全身を包むように輝いていた光が強くなった。
「そんなナマクラな刃じゃ、無理だね」
得意げに言う彼の顔には男を見下す笑みが張り付いていた。
「そうか」
しかし男はトマズの言葉に耳を貸すことなく、更に腰を落とす。
そして
「っ」
男が消える。いや、周囲の目では追いきれない速度の速さで動いたのだ。
次に起こったことは金属がぶつかる音。
そして、トマズの背後で刀を振り切った男の姿があった。
「無駄だと言っただろ」
背後を振り返って男を見る。トマズは勝ち誇る。その表情には絶対の自信があった。
「・・・・」
対して男は無言のまま、再び構えた。
今度は鞘に戻さずに刃を地面と平行になるように刀を構える。
「無駄だよ。愚かな男だね」
男が再び消えた。
「無駄だと・・・グゥエ!?」
余裕の笑みを浮かべていたトマズが突然呻いた。
そして後ろへと飛ばされ、壁に体を叩きつけられた。
壁から地面へと落ちる。
「悪い。切り裂くつもりが、吹っ飛ばしてしまった」
あくびれることなく男は呟く。
「貴様、」
「お。起きたか。良かったな。ご自慢の鱗のおかげで。でなかったら頭と胴体がお別れしていたところだ」
「キサマァァァァ!!」
「よっと」
「ガフッ!?」
トマズの激昂の一撃を容易くいなし、一撃を返す。
飛ばされるトマズ。
「何も斬るだけが戦法じゃない。お前にダメージを与える方法などはいくらでも存在する。だが、お前のその自慢の鱗。俺の刀の切れ味。どっちが上か試したくなった」
「愚かな」
男が再び迫り、刀を振るう。
しかし。トマズに傷はない。
「無駄だ。この鱗を斬ることは何人たりとも現れはしない」
「だいだいわかった」
「何?」
男は再び腰を落とし、抜刀の姿勢をとった。
足に力を込め、地を蹴る。
「無駄だぁ!私の体を斬ることはできはしない」
「・・・」
男は横凪に一閃。
アリシアはまた弾かれる。と思った。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
響いたのはトマズの苦しみの叫びだった。
アリシアは見た。
トマズの脇腹から溢れるように吹き出す深紅の液体を。
「何故だ!?リヴァイアサンの鱗が!?最強の鎧が」
脇腹を押さえ、呻くトマズ。
「最強の鎧・・・か」
男が血糊を払い、得物を肩に置く。
「俺の神器。妖刀村正の能力は〝絶対切断〟(パーフェクト・スラッシュ)。如何なる鎧も盾も、この刃の敵ではない」
絶対切断。
妖刀の由縁ともいうべき能力であった。
村正は、研いでいる裂手が斬れてしまったという伝説がある。
まさに、如何なるものも切り裂く刃。
「俺の村正に斬れぬものなし」
刀身には紫色の神威が纏われていた。
「大した鎧だな」
皮肉に呟く。
「くそ!?」
怒りのこもる瞳を男にぶつける。
(くそ!?くそ!いったいどこで間違えた!?何故だ!?どうしてこうなる!?)
トマズの心中に呪詛の様に言葉が出てくる。
ドクン。
(何だ)
トマズの内部で何かが脈打った。
「己れぇぇぇ!!!」
しかし。そんな変化もプライドの高く、高慢なトマズには大したことにはならなかった。
今の彼にはあるのは、目の前の男を倒す。
ただ、それだけしかなかった。
逆上して力まかせな一撃が出される。
そんな一撃は。
逆上した一撃なんて。
男はヒラリと容易くかわす。そして腹に蹴りを入れた。
「ガハ!」
その場に崩れ落ちる。
戦況は一変した。
「終わりだ」
男は、止めとばかりにトマズに近づく。
これで決まればこの事件はチェックメイトになる。
「・・・するな・・・・」
「?」
「邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突如トマズが咆哮とともに神威を放出した。
トマズを中心に神威が柱の如く天へと延びていく。
「なに!?」
これには男も驚愕する。しかし冷静に後ろに跳んで距離をとった。
「これは!?」
アリシアにも感じていた。
トマズから放たれる禍々しい神威を。
「まずい」
男は、アリシアを抱えると部屋を出た。
「ここにいてください」
そして再び部屋に戻り、扉を閉め、内側から鍵を掛ける。
「随分と、恐ろしい姿になったものだな。トマズ・ロックレス」
男の背後にいる存在に語り掛ける。
そこにいたのは、上半身は人しかし、鎧の様に鱗が付いていた。下半身は、青い鱗に被われた蛇の体。
そして大きさは人の域を越え、全長二十メートルはあるだろう。
「堕ちたか。魔器に」
神器リヴァイアサン。
表向きは
神器としての側面がある。だが、悪魔としての裏の面も持っていた。
魔蛇剣レヴィアタン。
それがトマズの振るっていた神器の正体だった。
「堕ちた。いや・・・。プライドの高さに漬け込まれたか」
魔器は、神器以上に継承者の〝そういった〟部分に敏感だ。
油断をすれば服に染み込む水の如く。漬け込まれる。
「しかし」
トマズの変わり様に言葉にならない感情が湧いてくる。
怒りなのか、哀れみなのか。わからない。
だが、これだけははっきりしていた。
「俺が斬るしかないか」
男のため息混じりの呟きが怪物となったトマズの雄叫びに下記消される。
「うるさいなぁ。まったく」
緊張感のない呟きが紡がれる。
しかし。仮面下の顔は真剣だった。
ムラマサを水平に構える。
「直ぐ様。黙らせますよ。アリシア様」
男は床を蹴り、怪物となったトマズへと再び剣を振るった。
隣の部屋。
「何だ!?」
「こ、この揺れは、」
隣の部屋では、エクラ、アリシアの祖父、父、そしてロックレス商会の現当主、ゴウマン・ロックレスがいた。
ここでは、エクラが、ロックレス商会の陰謀と証拠を突き付けてゴウマンを捕らえるところであった。
(このおぞましい神威は、トマズ!?いや、だが)
エクラは感じとった神威から推測する。
その時にトマズが暴走したのだった。
「逃げましょう」
冷静にエクラはカイズ達を促す。
「だが、「大丈夫です」
カイズの言葉をエクラは止める。
「心配には及びません。あそこには、〝私の最も信頼する〟者がいますから」
自信を持って言うエクラ。
(申し訳ございません。また、お願いします。義兄上)
戦っているであろう男に祈るのであった。




