第22話:次の町。魔法の大会
王都を出てから何日経ったっけ? 二か月くらい?
新月が来れば大体の日数はわかるんだけど、まあいいか。
王都にあまり近い町は、リリセラの事がバレるからも知れないから、と避けていたらこんなに経ってしまった。
徒歩からトカゲになったから、進むペースも大分速くなったし、随分遠い所まで来たもんだ。
「それなら、この先の町で行われる魔法の大会に参加されるのはどうでしょう?」
「魔法の大会ってなに? 競い合うの?」
「いえ、お互いにぶつけ合い戦うのです」
「まじかよ」
ヒールの魔法があるからって、野蛮な世界だな。
そりゃ、あの大魔法を使えば勝てない相手なんかいないけど、面倒くさい。っていうか死ぬわ相手。
例の魔法を使うまでもないし、そもそも寝っ転がったままでも目を瞑っていても勝てるし。
っていうか、多分一般人の魔法じゃ、俺の賢者の石の回復効果を上回れない。
「トーヤ、面倒くさいって気持ちが顔に出てるわよ」
「だって目立つの嫌だし、名声が欲しいわけでもないし……。ノイエが出れば?」
ノイエだってエルフなんだし、魔法は得意な方だ。
町一つでやってるような地方大会じゃぶっちぎりだろう。多分。
「私を引き合いに出さないで。私だって嫌よ、人前なんて」
「そうですか、残念ですがワタクシが言うことでもないですし、しょうがありませんね。アンコさんはどうですか?」
なるほど、身体強化の魔法です。って言い張って物理で出るとかありかもな。なしだよ。
ノリの軽い集団に染まってリリセラも適当なことを言うようになったもんだ。
「出るー」
ノリの軽い筆頭は俺とアンコだったな、反省。
妹がこんな扱いになってるって知られたら姉姫に殺されるんじゃねーの? 俺ら。
おっと、その姉姫に殺されたのは妹のリリセラの方だったか。わはは。
で、話合いの結果、大会には出ないけど近くを通るのだからと寄ることにした。
流石に物資の補給的な事がしたい。
◇
さらに何日か経過して、ようやくその町に着いた。
この先に~~が、数日っていうのも日本に居た頃じゃ考えられないけど、とにかく着いた。
ノイエ達と出会った最初の町より少し規模が大きいかな? 程度の町だ。
王都と比べたらちっぽけな町だ。当然か。
「おー、着いた。ここがアンコの町か」
「えっ? そうなんですか?」
嘘に決まってるだろう。
アンコも何を思ってそんなこと言い出したんだ。
やっぱり久しぶりの町はテンションが上がる。人がいるから。
なんでだろう。
多分、刺激が欲しいのだろう。
「じゃあ、俺は宿探してくるから」
「私は買い出しに行ってくるわ」
「ワタクシは大会について聞いてきます」
リリセラはまだ諦めてなかったのか。
っていうか、顔、大丈夫か?
知名度的に。
ブロマイドみたいな写真が出回ってるとは思わないけど、似顔絵くらいは出回ってるだろう?
「ワタクシは序列も3番目ですから大丈夫ですよ」
兄、姉、リリセラで3番目の姫だから顔もあまり知られてないと。そういう事?
こっちの文化はよくわからんな。
ならいいけど。
「まあ、仮に何かあっても、生きていれば迎えに行くから。生きてさえいれば」
「怖いこと言わないでください」
いや、お前はそういう立場なんだから少しは警戒しろ。
こいつ、あるいは俺より世間知らずなんじゃねーの?
「アンコはどうするの? 私とくる? それともトーヤと行く?」
「ワタクシでもいいですよ?」
「アンコは……、んー? ノイエと行くー」
「じゃあ後で俺が適当に迎えにいくから、適当で」
「あーい」
集合場所も決めずに、みんなして思い思いに解散した。
なんか小学校の引率の先生みたいになったみたいだ、俺。
旅の最中に余った肉を売り払って金にした後、無事、広めの宿を取った。
王都で思ったけど、金が掛からないからといって、地下に作るのはあまりよくない。
不法占拠ってやつ?
人の目を気にしながら出入りするのも大変だし、地下だと酸素とかの関係であまり安心できない。
けど、王都での稼ぎは馬車とトカゲでほとんど消えたから、またギルドか何かで稼がないと。
ノイエもその余り賃で買い物に行ってるはずだから、大した買い込みはしてこないだろう。
もしかしたらへそくりとか持ってるかもだけど。
「さて、迎えに行くか」
まずはリリセラだな、かかる時間的に。
――で。
魔力を頼りに合流した時、リリセラは落ち込んでいた。
ちなみにリリセラは大体いつも落ち込んでいる。
「次の大会は3ヶ月後でした~」
「そりゃそうだ」
予定も組まずに進行して、着いたら都合よく大会は明日でしたー、なんてこと普通はない。
「そもそもその大会の頻度はどの位なんだ?」
「1年に一度ですよ、去年の大会は盛り上がったそうです」
俺たちの話を聞いてたのか、周りに居た人も大会の話を始めていて、それが耳に入ってきた。
『前の魔法大会は優勝したら城勤めへの斡旋だったんだが、今回は小さい賢者の石だとよ。今回はしょぼいぜ』
『でもよぉ……。大会でいい成績出せば国や貴族の目に付くし、もしかしたら招待されるかもしれねえだろ?』
『たしかにな……。まあ魔法の使えない俺らには縁のない話だが、賭けの方で稼がせてもらうとしようぜ』
『そうだな』
魔法、使えないのかよ!?
関係ないのに報酬の話で盛り上がるとか、買いもしない宝くじを当たった時どうしようか、って話をする青少年かお前らは。
「トーヤ様、聞きました? 賢者の石ですよ」
リリセラも聞き耳を立てていたらしく、ひそひそ声で話しかけてきた。いい声質だ。
たしかに賢者の石は欲しい。
俺の容量を上げるのに使ってもいいし、魔力バッテリーとして使ってもいい。
色々なことに使えそうだ。
その為には目立ちたくない気持ちを抑えてもいいかもしれない。けど――。
「大会は3ヶ月後だし。どのみちさっさと国境越えしないといけないから、諦めるしかないだろ」
「何言ってるんですか? もう国境は越えましたから、ここはアトレイアの国じゃないですよ?」
ほざいたリリセラの頭をガッと掴む。
「あだだだだだ、い、いだいです」
「――何言ってるんですか?――は、お・ま・え・だ。……なんでそういうことを先に言わねえんだよ」
俺たちはお前の為にもって、今まで町を迂回しながらやってきたんだぞ。ボケナスが。
「すみません、すみません。トーヤ様達が知らないってことをつい忘れてました~」
ぺいっと掴んでいた頭を放すと、距離を取られた。
頭を抑えてこちらを警戒している。軽く涙目だ。
ちなみにりりセラは大体いつも涙目だ。
それなのに泣いてませんって言う。
「俺の感覚だと、国境には塀が立ってて駐屯地とかあって、憲兵がいるもん思ってたから、すんなり国境越えできるとは思ってなかったんだよ」
「なるほど。たしかにそういう場所もありますね。でも、そういうのは仲の悪い国との国境とかに置くものですよ」
「そか。まあ越えられたならなんでもいいさ」
とりあえず急ぐ理由もなくなったので、ここから先のことを相談するにあたってノイエ達と合流することにした。




