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歩く賢者の石  作者: 望月二十日
二章
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第23話:荒れた畑

 ――今、俺たちは町を出て近くの畑作りをしている。

 それは何故か。


 あの後、ノイエと合流した俺たちは、3ヶ月の時間をどう潰すか話し合った。

 結果、町はずれに、野生動物によって荒れ果てた畑があることを知り、再生することにしたのだ。


 いや、人に害をもたらす生き物は動物じゃなくて魔物って分類だったか。じゃあ、野生魔物だ。野生じゃない魔物とはなんなのか。

 それはどうでもいいとして、大会までの間、しっかり畑の再生を頑張ろう。



 あれ? 結局大会出ることになってる。



 ちなみに町に定住するつもりは一切ない。

 この町はアトレイアの国よりも差別の色が少しだけ強く、宿もすぐやめて、畑のそばに家を建てたくらいだから。


 家を建てたのに定住しないと言うのもまたすごいが、昨今は建築の技術はすごいので、あっという間に家が建つ。

 知ってる? 魔法っていう技術なんだけど。

 粘土で作った家にそのまま住めるくらい簡単に建つ。


 とにかく、俺たちは町の外の打ち捨てられた畑の横に家を建てた。


「この畑って私達が使ってもいいのかしら」


「町の方に聞いてきましたが、大丈夫そうですよ。また作物を取れるようになるならとても有難いことだと言ってました」


「なんか利用されてるみたいでむかつくな。最初の収穫終わったらまた荒らすか」


「やめなさい」


 はい怒られた。

 とにかく許可が出たなら自由に使わせてもらうか。


「でも、ノイエもアンコもよかったのか? 賢者の石なんて別になくてもいい代物だし、さっさと別の所行っても」


「平気よ、この位ならよくあるから気にしないで」


「んあ? ちょっと聞いてなかった」


 アンコは大丈夫そうだな。

 ノイエも強がりというわけでもなさそうだし。

 けど、なんかもやっとしたものが心に残る。


 そう、この慣れてる感が気に食わない。



「そんなことより早く始めましょう、あなた達と畑仕事っていうのが楽しみで仕方ないのよ」


 俄然ノイエがやる気だ。

 エルフってなんか、自然に手を加えるのは――的なやつで野生産を拾うもんだと思ってたけど、さすがに極端か。


 早速取り掛かろう。


「まずは水ね。前にここで畑をしていたなら水はあるはずよ」


「それは俺がやるよ」


「雑草も抜かないとね」


「それも俺がやるよ」


「それよりも魔物に畑を荒らされちゃうのをなんとかしないと」


「それも俺が――」


「ちょちょちょっと、ちょっと待ってください」


 そう言いかけたところでリリセラからストップが入る。

 なんだなんだ?


「全部トーヤ様がなされてしまったら、私達のやることがなくなってしまいます」


 おやおやすっかり働き者になってしまって。

 教育が行き届いてるな、あのトラウマの日々がお姫様を働き者に変えたか。


「一理あるわね」


 まるで言われて気づいたかのように頷くノイエだが、本当はわかってただろ。


「実際の所、トーヤに任せちゃうのが一番なのよね。でも、そうすると2人にやることがなくなるし、私もいらなくなっちゃうわね。そんなの良くないわ」


「ですから、分担をいたしましょう」


「アンコ、こいつの面倒見る」


「アンコさんとご一緒なら多少不安は残りますが、安心です」


「どっちだよ」


 結局分担は――俺が水源の確保をして、リリセラとアンコが雑草を抜いたり石の撤去。ノイエが魔物とかの調査となった。

 役割も決まったのでそれぞれで動き出す。


 単独行動は少し寂しいが、作業をするときは一人の方が集中できる。

 俺って人がいると遊んじゃうタイプだし。





「水源はどこだろなー。地下潜って、地下水脈から探すのは勘弁してほしいな」


 水はあっさり見つかった。

 単純な話で「使わなくなった畑にやる水はない」、ということで川の分岐を塞き止めたようだ。


 なるほどなるほど。


 答えはわかったけど、じゃあまた流しましょうとはいかないのが世の常。

 水は有限で、使い放題というわけにもいかないから。



 分岐点の確認を終え、川の上流へ行く。

 川の上流は当然山だ。


 ということで、川に流れる水量が変わらないように注意しつつダムを作った。

 言葉にすると簡単だし、俺からしてみても簡単だが、やってることはやばい。


 特に何も考えずにダムを作ったけど、ダムを作るのと作らないのではどういう違いがあるのかはよくわかってない俺。


 ダムがあると保水的なやつで、干上がり難くなって、水量が安定するって事でいいのかな?

 実際の所どうなるんだろう。インターネットがあればすぐわかるのに……。

 オンラインが懐かしい。


 そんな疑問は捨て置いて、とりあえずダムは完成した。

 しかし水量が圧倒的に足りない。そりゃそうだ。


 ダムはできたけど、水が足りない? 空を見ろ、雲があるだろう? あれって水でできてるんだぜ。



 その日、小さな雲が一つ忽然と消えたらしい。

 不思議だね。



 水位が上がると、水圧の関係か、川に流れる水量も増えた。

 ので、少しだけ絞る。


 ここでダムの説明をしよう。誰もいないが。寂しいので。


「ダムは基本的に掘って作りました」


「大木などで詰まってしまった時のために、穴は大き目のを3つ」


「増水した時に町の方に流れないように、反対側の高さをちょっと下げます」


 後、それでも万が一に決壊した時、町に被害が出ないようにするために、地形も少し変えた。


 詰まるのも怖いからダムの周囲の木はちょっとどけて、倒れてもダムまで届かないようにしよう。はいできた。所要時間180分程度。

 規模が小さいとはいえ、洒落にならない速度である。



 ダムが完成したので川のせき止めを開放したら、畑にまで水が流れこんでしまい、リリセラとアンコに怒られた。


「まだ雑草があるのに水を流さないでください!」


「ご主人がやらかした」


 珍しくプリプリするリリセラが可愛いな。


 女性の、『ムキー!』ってなってる怒り方は可愛くないけど、『んもー!』ってなってる怒り方って可愛いよね。そんだけ。


 やることはやります。はい。


「飢えた空を満たす渇いた大地『アクアエイリアス』」


 すぐ近くにため池を作り、そちらに水が流れるようにすると、水の魔法で畑の水を蒸発させる。はい終わり。


「それでノイエは?」


「んーん。まだ」


「ノイエさんの方は簡単に終わる作業ではないのでは?」


「魔物の調査だしな」


 ノイエは再生させた畑が再び魔物に荒らされないように、近辺の魔物の調査を買って出た。

 まあ一日二日で終わるものでもないだろう。


 俺がやればもっと早いんだろうけど、俺以外にダムはできないし。

 俺はダムを頑張りつつヘルプでもすればいい。




 ってことで、ため池に流れる水量をもう一度調節し、ダムに生き物でも放流することにした。


 川の下流に行き魚を生け捕ると、どんどんダムへ放り込む。

 もちろん川の方の生態系が崩れないように、いろんな場所から少しずつ集めた。


 何故こんなことをしたのかというと、水に栄養があれば畑の土が元気になる”はず”だからだ。

 水の栄養は、魚の糞やそれに群がるバクテリアが大事なんだろ?


 取った魚も食べれるようになるし一石二鳥だ。

 魚の餌はコケや虫。

 ダムの周囲に生息しているので、それで賄う。


 中学の頃、友達に聞いた――うんこを宇宙に置いとくと、どっかの星で生命が誕生する――という言葉を思い出した。

 それほどまでにうんこには可能性が秘められているのだ。


 インパクトが強すぎて忘れられなかったが、こんな言葉がまさか役に立つ時が来るとは思いもよらなかったな。

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