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緑衣の悪魔と革命将軍

副題:革命という狂気


はい、というわけで今回は一章の黒幕が出てきます。

ちなみに、その黒幕には元ネタが二つあります。

タルコフとフェルディナン達が廃墟と化した集落に到着し、その日の宿として眠りに着こうとしていた頃、カペー王国の王都バルジャンにとある集団が辿り着いていた。


その集団は革命運動に参加した騎士の一派で、動乱の最中に処刑されたユーグ王の息子にして、王太子の一人であるフェルディナン。

そして、その婚約者であるロレーヌを抹殺するために追跡していた者達であった。


しかし、バルジャンに帰還した際の彼らは出撃した時よりも数が少なく、その一部は痛々しい姿を見せていたため、その姿を見た者達は言葉を失っていた。


これは超常現象たる魔法の仕業か、あるいは未知の怪物の仕業なのか。

バルジャンの人々はそう囁いていたが、その答えはそれから数時間後にあっさりと出ていた。


そして、その事実は革命軍も知るところになったのだが


「何?緑衣の悪魔だと?」


その指導者で人々から革命将軍と呼ばれている男こと、ヴィーニュ・ソーテルヌは、サングラスの下に隠された野望に満ちた目を輝かせながら、その話に興味と関心を抱いていた。


ヴィーニュは人の心を掴んでは瞬く間に引き寄せる才能を持っていたのだが、それと同時に人の心を持たぬ天才でもあった。

それ故に、彼は騎士から英雄として成り上がった反面、革命を成功させてからは独裁者としての一面が強くなりつつあった。


そんな彼にとって、フェルディナン達を追跡していた軍を追い詰めた存在.....もとい、緑衣の悪魔のことが気になったのか、彼は柄にもなく無意識のうちに興奮していた。


「はい、何でも例の部隊は緑の衣を身に纏った女にやられたようで....」

「......ほぅ?」


緑の衣を纏った女。

その言葉を聞いた瞬間、冷静を保ちつつも興奮してきたのか、自らの目を見開くヴィーニュ。


しかし、その目は獲物を狙う肉食獣と化していたことに部下は気が付かなかったのか、そのまま淡々と報告を続けていた。


フェルディナンの行方を追っていた騎士の大半は、馬を撃ち抜かれたがために落馬したことが原因で命を落としていた。

だが、一部の騎士の遺体にも何かに撃ち抜かれた痕があったため、当初は何かしらの魔法が使われたと予想されていた。


「つまり....その遺体の中から謎の鉄の塊が出てきたと?」

「えぇ、こちらが復元魔法をかけた上で修復した物になります」


ヴィーニュに向け、部下が見せたのは先端が尖った細長い鉄の塊であった。

その異質な見た目と雰囲気に対し、彼はその物体に拒否感を抱くどころか、心の底から感情が湧き上がるのと同時にこう思った。


これは何とも美しく、恐ろしい物体なのだと。


彼は政治家として成り上がる前は、剣を掲げて戦う騎士であった。

だからこそ、剣と剣を交えて戦うことが騎士の誇りであることを理解していた上に、それが騎士としての存在意義であることも分かっていた。


そして、彼は気がついてしまったのである。

そもそも、この物体が人の手で作れることを。


「一つ聞きたいのだが.....良いか?」

「は、はい!!何なりと!!」

「.....これは人の手では作れる代物か?」


ヴィーニュがそう尋ねた瞬間、その部下は喉に言葉が引っかかっていたのか、自身の顔を硬直させていた。

それは彼に対する無自覚の恐怖で、一種の忖度でもあったのは言うまでもない。


しかし、結局はヴィーニュへの忠誠心が勝ってしまったのか、彼に向けてこう説明した。


「ドワーフによれば、ある程度の材料と何かしらの粉さえあれば、技術的には量産可能とのことです」

「....何だと?」


部下の口からそんな言葉が出た瞬間、どこか引っかかるところがあったのか、ピクリと反応するヴィーニュ。


物作りが得意な種族のドワーフ曰く、例の物体はある程度の量産は可能であるものの、その物体の中に何かしらの粉末が入っていたこと。

そして、この武器は通常の投石器では効果を発揮しないこと。


それらの要因もあってか、その物体の量産は技術的には可能ではあるものの、材料面では難しいという結論にドワーフが至ったことを部下は緊張しながらも語っていた。


その結論を部下経由で耳に入れたヴィーニュは、怒るどころか驚くこともせず、ただ一言


「そうか、それさえ分かれば問題ない」


異様に落ち着いた様子でそう言っていた。


何とも言えない冷静さと、不気味と例えられてもおかしくはない懐の広さ。

通常の人間ならば、そのことに違和感と疑問を抱いても無理はないが、部下はそのことを感じるどころか自覚することはなかった。


何故ならば、彼は王家を倒した偉大なる英雄だったがために、誰もその違和感から目を逸らしていたのだった。


「.....この物体を何とかして実用化すれば、ギロチンを使わなくとも粛清が容易に進められるな」


実のところ、彼自身は絞首台やギロチンを用いた社会に飽き飽きしていた。

むしろ、派手という理由で飽き飽きしていたこともあってか、彼はその物体や緑衣の悪魔に関する興味が強くなっていた。


緑衣の悪魔を捕らえれば、例の物体についての何か分かるかもしれない。

そうなれば、カペーや大陸を脅かす多くの敵を粛清し、真の平和をもたらすことが可能となる。


一部の騎士達の命を奪った謎の物体さえあれば、カペーという国を再興する肝となると彼は考えていたのか、僅かながらもその口角は上がっていた。


「ヴィーニュ様?」

「いや、何でもない」


繰り返しにはなるが、彼は人の心を掴むことに長けていた反面、情緒や共感性と言ったモノを....人の心を持たない怪物であった。

そして、その物体....いや、それを用いた武器の存在を知ってしまった彼はこう思った。


周りに流されて始めた王家の断絶など、もうどうでもいい。

何としてでも、緑衣の悪魔を我が軍に引き入れなければならないのだと。


「各騎士団に伝えよ。フェルディナンの討伐と共に緑衣の悪魔を捕獲せよ....と」


サングラス越しに興奮と狂気を滲ませながら、目の前に居る部下に向けてそう命令するヴィーニュ。

すぐさまその命令は騎士達の間で共有され、多くの者達は緑衣の悪魔を捕えるために動き始めていた。


....誰一人として、その真意を知らないまま。


それから数日後、カペーは王国ではなく連邦として生まれ変わり、ヴィーニュ・ソーテルヌは初代議長として就任。

革命軍は連邦青軍として再編成され、人々は新たなる希望となる国の誕生に歓喜し、その狂気から目を逸らす形で彼を国の長として受け入れた。


これにより、後に緑衣の悪魔の纏わる伝説の一つ.....ヴィーニュの冬と呼ばれる戦いが近づきつつあったのだった。

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― 新着の感想 ―
ウワーッ! とんでもねえ奴がリバースエンジニアリングの取っ掛かりを手にしてしまったー!? 復元魔法ヤバいですねー
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