込めよ弾倉、放てよ銃弾
副題:元ミリゲープレイヤーの初戦闘
タルコフちゃんは褐色肌のエルフなので、見た目的にはダークエルフ寄りだけども、中身は元ミリゲープレイヤーなので銃火器のプロフェッショナルです。
なので、割と強めなのだとか。
現実世界でのタルコフは、才能と呼べるモノを何ひとつ持っていない側の人間であった。
勉強も、スポーツも、芸術も、それら全ての才能がことごとく無かった彼は、次第に周囲の目を恐れ始めたのか、自分の逃げ場所を求めていた。
そんな彼にとって、フルメタル・オンラインというゲームはまさに逃げ場所であり、この世界で唯一の居場所であった。
仲間と協力するだけではなく、フィールドの地形を把握した上で展開される戦略。
目の前の敵をクリアするためには、どういう風に対応すれば良いのか。
不思議なことに、タルコフは引き金を引くことに対しては迷いや躊躇いがなかった。
それどころか、ゲームを始めて数週間後には他のプレイヤーやフィールドに応じて戦略を変え、逆に戦いの舞台となるフィールドを利用して戦う....と言った戦い方を確立させたため、いつしか彼はこう思うようになった。
あぁ、自分の居場所はここだったのか。
フルメタル・オンラインは、俺にとって大切な場所なのだと。
そのこともあってか、ゲームに入り浸る形で銃火器の扱い方に慣れていった彼は、時代にその才能を開花させていき
「お、オイ!?お前何言って」
「大丈夫だ、動く的に銃弾を当てることには慣れてる」
異世界に女エルフとして転移した今では、困惑しているようで怒っているような御者に対し、アサルトライフルを構えつつそう言った後、馬車を追跡にしていた集団の乗っていた馬の一匹を撃ち抜いていた。
その場に銃弾の音が鳴り響いた瞬間、驚いたような表情を見せる追跡者達。
撃ち抜かれた馬に乗っていた男に至っては、その馬が的確に急所を撃たれたからか、別の馬を巻き込む形で倒れてしまい、その拍子に追跡者のうちの二人は馬から落ちていた。
それを見たタルコフは、ゲーム内の武器であったアサルトライフルが使えることや、仮想空間では感じることのなかった生々しい血の香りに対し、こう思い始めていた。
この銃を構えて撃つ時の感覚、それからこの血の香りは間違いなく現実のものだ。
アサルトライフルの重さは、目の前の光景が現実であることの証明なのだと。
内心そう思いつつ、一発一発を確実かつ的確に相手を狙いながら、躊躇なく引き金を引くタルコフ。
「あの女、我々ではなく馬を攻撃することで足止めをしているのか!?」
緑を基調としたフードを被ったタルコフに対し、驚きと恐ろしさが混ざった感情が宿った声でそう呟く男。
何しろ、この時点では既に何匹かの馬を撃ち抜かれてからか、次第に追跡者側はこのままだと追跡どころではなかったため、彼がそう思うのも無理はなかった。
そのため、男は生き残っていた部下に二手に分かれるように指示した後、馬車の両脇を挟むかのように分かれると、そのまま馬車を体当たりをしていた。
更に言えば、両脇からの体当たりだったために馬車の動きは不安定になっていったため、タルコフは一瞬だけ体勢を崩しかけていた。
しかし、タルコフはその馬車の上で踏ん張る形で何とか耐えた後、手に持っていたアサルトライフルを背中に背負うと、馬車の右側に居る追跡者達の方に飛び蹴りをする形にて、逆に追跡者側を襲撃していた。
結果的に言えば、襲撃は成功したようで....彼女はハンドガンとナイフで追跡者達を次々と倒していった。
「ぐぁっ!?」
「な、何だ!?」
突然のことだから、状況を理解できないまま倒されていく男達。
そんな男達を尻目に、そこから再び馬車の上へと飛び乗ったタルコフは、自分と同じように馬車に乗り込もうとする追跡者に対し、再びアサルトライフルを手にする形で撃退していた。
馬車が目的とは言え、一応は鎧を身に纏っていた追跡者は、着実に任務を遂行した上で成功させようとしていた。
しかし、案の定ではあるがアサルトライフルの弾丸はその鎧を打ち抜いていく光景を見たからか、徐々にこんな感情が生まれ始めていた。
我々は....あのエルフと戦うべきではなかったのだと。
そして、このままだと全滅もあり得ると判断した男は、アサルトライフルの餌食になっていない部下達を引き連れる形にて、逃げるようにそこから離れていった。
そのため、タルコフの異世界での初めての戦闘は勝利で終わったのだが....当の彼女は初めて人を殺したことに対し、手慣れた様子でアサルトライフルの弾倉を交換しながらこう思った。
ゲームとは違って、自分が殺した男達はリスポーンもリスタートも出来ない。
つまり、自分は真の意味での人殺しには違いない。
だが....この世界を生きていく上で、どうせいつか自分の手をこれでもかと汚すのなら、今のうちに汚れておいた方が良いのかもしれないのだと。
彼女はそう思うのと同時に、何故自分はそこまで冷静になれるのだろう?と自嘲に近い感情も抱いていたようで、改めて自分にはそういう才能だけはあったんだなと思い始めていた。
そんな中、その馬車の御者はズカズカとタルコフに近づくと、イライラとした感情を滲ませた様子でこう叫んだ。
「おい!!そこのエルフ!!」
「え、俺?」
「お前以外に誰が居る!!」
タルコフに対し、面倒なことに巻き込みやがったとばかりに叫ぶ御者。
それを見た彼女は、馬車を守るために戦ったとは言え、確かにアレは危ない戦い方だったなと反省していた。
そう思っているタルコフとは裏腹に、そのまま睨みつけるような顔になったかと思えば、彼女に向けてこう叫んでいた。
「勝手に馬車に飛び乗って、勝手にこっちを危険な目に晒すとは、一体何を考えているんだ!!」
「はい。おっしゃる通りです....」
返す言葉も無いとばかりにタルコフが答えると、それでも納得はできなかったのか....御者はショボンとしている彼女に対し、色々と文句を言っていた。
ただ、その騒ぎが耳に入ったのか....馬車の主は外のことが気になったのか、馬車の扉を開ける形でその様子を覗いていた。
しかし、その馬車の主が王侯貴族の格好をした男女であったため、タルコフは目を丸くしていた。
そして、彼女はすぐにこう思った。
これは中々に面倒な予感がするな....と。
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