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残響
合奏は終わった。
なのに、あの音だけが耳に残る。
楽器を片付ける音。
椅子をたたむ音。
誰かの笑い声。
そんな音が耳に入らないくらいに、
あの揺れだけが、私を残していた。
ケースを開ける音がした。
湿った音が鳴る。
リードを取り出す指先には、迷いがなかった。
削る前のリードを眺める。
音を出していないはずなのに、そこに存在した。
誰の物でもない。
その人自身のような揺れが。
音楽室を出ても、その揺れだけが私を呼ぶ。
体が熱い。
私の普通が砂になって崩れて行く。
崩れたところからあの揺れが形となる。
耳の奥で、音が自我を持っていた。
街頭の光はいつも通りであるはずだった。
景色も。
匂いも。
音も。
なのに全てが違って見える。
自我を持った音が私をかき乱してくる。
いつも通りを望むたびに、あの揺れが囁いてくる。
崩れてくれない。
崩そうとしても崩れない。
普通が覆される。
校舎に入った瞬間、揺れが変わった気がした。
いや、違う。
変わったのは私の揺れの方だった。
笑い声のなかに、孤立した音がある。
体が揺れを追う。
音楽室の扉の向こう。
そこに、あの揺れがいる気がした。




