20核
まさかここまでついてきてくださる方がいたとは……感謝です。
「……月乃さん、枢木さん。ちょっとすみません。校舎の無事は保証しかねることになります」
『カオリ!?』
『いいわ!やっちゃいなさい!』
『いやマズイでしょ!?わたしらどうすんの!?』
月乃さんが何か喚いてたけど、枢木さんのゴーサインも出たことだし、もう少しエンジンを上げていこう。 クレーターとかもう気にしない。 校舎も屋上さえ無事ならばそれでいい。
『魔法少女』は待ち焦がれたように犬歯をむき出しにして笑う。
「いくよ」
「きひっ」
拳と拳が互いの顔面めがけて交錯する。 向こうの拳が空を切り、
ドッガァアアア!
「がっ!?」
こちらの拳が顔面を打ち抜いた。 錐揉み気味で吹き飛んでいく『魔法少女』にボクは追撃を仕掛ける。
折れ曲がっていた首は黒い霧に包まれた途端修復され、同時に身体全体の形を霧変形させることで、崩れた姿勢を無理矢理立て直す。
ボクが間合いに入った時には向こうは万全に迎撃の態勢に入っていた。 しかし、
ドガァアア!
「きっ!?」
ボクの拳が『魔法少女』の拳を弾き飛ばす。
「不思議そうな顔をしているね」
「〜っ?」
力が己より劣る相手に力で負ける……そんなはずはないって顔だ。
力の優劣というのは大きさだけで決まるわけじゃない。言っても分からないだろうけどね。
「ていっ!」
「ぎゃふっ!?」
ドッゴオオ!
「不思議そうにしてる余裕なんて無いんじゃない?」
「ぎぃっ!?」
打って変わって今度はこちらが一方的に攻める番だ。そして、
「ぶっ!?ぎゃっ!?」
『魔法少女』はボクの攻撃を一発も防ぐことができない。
「悪いけど君じゃボクに勝てない」
「ぎぃいいい!」
見切ってしまえばそれまで。『魔法少女』が取るであろう攻撃手段の全ては対処可能。 もっと言ってしまえば相手の一挙手一投足をこちらで操ることも可能だ。
「裏拳」
パシッ。
「っ!?」
「次は蹴りでしょ?」
スカッ。
「ぐぐがっ!」
「で、ビームと」
トン。
「っ!?」
ビームを放とうとしていた手を小突いて照準を上空に逸らしてやる。 このように全部こちらの狙い通りに動いてくれる。
『いっけぇえ!カオリ!』
「任せてください!」
ボクは『魔法少女』の顔と足を執拗に狙っていく。
『優勢なのはいいけれど忘れてないでしょうね!?核をさらけ出さないと!』
「分かってます!」
だからこそ慎重にならなければならない。 もしもこちらの狙いが『魔法少女』にバレてしまい、核を守ることに専念されてしまったら対処はかなり難しくなる。 チャンスは狙いがバレていない間の一度きり。
ボクは『魔法少女』の全てを暴力で叩き潰す。
「っ!?っ!?」
「顔つきも人間らしくなってきたね」
為す術を全て叩き潰すボクを前に、『魔法少女』の顔に狼狽の色が刻まれていく。
さらに言えば、
「これ以上の進化もできないんでしょ?」
「ぐぎっ!?」
なぜならば、力でボクに劣っているわけではないから。ボクに圧倒されている理由が理解できていないから。 そして、その不理解は確実に『魔法少女』を蝕んでいく。
もはや『魔法少女』はこちらの動きに対応するどころか、自分の思うように身体を動かせなくなっているくらいに追い詰められていた。
ダメージを与えるだけが追い詰めることにはならない。圧倒的な理不尽を叩きつけることこそが相手を一番に追い詰めるのだ。
今なら……いける!
「しっ!」
「がはっ!?」
ボクの抜き手が魔法少女の胸を貫く。 そこには、
「あった!」
初めて見るけど間違いない。穴の中に直径10センチほどの真紅の球体があった。 勝負を決めるにはここしかない!
あと少しですのでどうか最後までお付き合いください。




