21いただきます
決着です。
『もうそろそろ合図を出します!狙撃の準備を!』
インカムに届くカオリの声。
「了解。いつでもいけるわ」
小雪はロッドを構える。魔力を充填させ、ロッドが眩い光が灯る。
この作戦は小雪の狙撃が全てを決める。横で控える月乃は固唾を呑むしかできなかった。
「……ごめんね。見ていることしかできなくて」
「……何を言っているのかしら」
小雪は月乃に一瞥をくれることなく告げる。
「あなたはすでに十分すぎるくらいに成果を上げてみせた。後は高みの見物でも決め込んでいなさい」
「小雪……」
それ以上の言葉は無かった。小雪の視線は『魔法少女』のみに注がれている。
(さすが……狙撃モードの時は恐いくらい落ち着いているんだから……)
世界が滅ぶか否かと言っても過言ではない大博打を前にしているというのに、小雪の顔には一切の揺れが無い。
(頼りにしてるぜ……相棒……!)
『壊れろ』
カオリの声が聞こえた時には『魔法少女』の首が跳ね、四肢が爆ぜ、胸に大きな風穴が開いていた。
『打ち上げます!』
「!」
カオリの合図。
核がむき出しになった胸部が上空に打ち上げられた。
『マズイっ!』
その言葉だけで月乃が意味を理解できたのは奇跡だった。
『魔法少女』の跳ね飛ばされた顔が大口を開けてエネルギーを充填していたのだ。そしてそのエネルギーの照準は小雪の狙撃ラインに交わっていた。
「させるかぁあ!」
距離はおよそ30メートル。威力も何も考えない早撃ちのみに力を集約させた月乃の光弾は……
バヅン!
「きぃっ!?」
見事頭部を捉え、『魔法少女』の砲撃を阻害した。 もう遮るものは何も無い。
「小雪っ!」
『枢木さん!』
小雪の照準が核を捉える。
「イージーね」
短く吐き捨て、細く鋭い眩い閃光が夜空を駆けた。
その閃光は真紅の球体を音もなく吞み込み、そして消滅させた。
「あいつは!?」
見れば、『魔法少女』の散り散りになった身体は砂が崩れるように、サラサラと消えて無くなっていた。
「…………やった…………」
「ふん……当然の結果ね」
クールに言ってみせる小雪だったが、笑みが溢れてしまっていた。
「やったよ小雪〜!」
「わぷっ!?急に抱きつくんじゃないわよ!」
「小雪小雪小雪〜!やればできる子だって分かってたよ〜!あんたすごい!」
「ふ、ふん。当たり前じゃない」
シュタッ。
屋上に人影が降り立った。 カオリだ。
「月乃さんこそさすがです。あの土壇場であれだけの機転をきかせられる人はそうはいません」
「ありがと。というか、カオリって何者なの?」
「え?」
「そうよ。身体能力の異常強化ってだけでは説明できないわ」
「えっと……実は武術を嗜んでいたり……」
「いやいや、武術で片付けられるようなもんじゃないでしょ……」
「やっぱりサイヤ人なのね!?サイヤ人は実在したのね!?」
「……もう何でもいいです」
「説明する気ゼロ!?」
「というか何?力も速さも向こうが上とか言って……全くの嘘じゃない」
「嘘じゃないんですけど……」
説明が難しい…………っと、そうだ。
「対戦格闘ゲームでキャラスペックは負けてるけどプレイヤースキルで圧倒するみたいな……そんな感じです」
月乃さんと枢木さんはなるほどと無理矢理頷き、その場は納得してくれる。
「とにもかくにも……やったね!」
「……ですね!」
「ふん、当然ね」
パシッ!
ボク達は三人仲良く息の合ったハイタッチで締めるのだった。
✳︎
「目標……消滅しました……」
カナメの唖然とした声に、すぐに返事を返せる者はいなかった。
局長である如月でさえ口をポカンと開けることしかできないでいた。 先ほどまで国に住民の避難の要請、報道の規制の要請、自衛隊の出動要請など、応待で忙殺していたのが嘘のような静寂。
「……とりあえずケントッキーフライドチキンでも食べて落ち着きましょう」
サクサク。もぐもぐ。
「食ってる場合か!」
スパン!
「痛っ!局長に手を上げるなんて!カナメあなた錯乱してますね!?」
「ええ、おっしゃる通りです!ですが錯乱してんのはあなたもでしょうが!」
「当たり前です!錯乱するに決まってるでしょうが!どうすればいいの?喜べば良いの?」
「そりゃあとんでもない敵を倒したわけですから喜びましょう」
「……なら、お祝いにチキンを食べましょう。皆さん、チキンを手に取りましょう」
意味不明な局長命令でありながら、この場のスタッフは全員錯乱状態にあるため、疑問を疑問と思わずに皆チキンを手にする。
「では、我々の勝利を祝して……乾……いただきます」
「「「「……いただきます」」」」
サクサクサクサク。
後はエピローグだけです。ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます。




