15異形
初めての強敵です。
「………………」
異形のビーストは地上を睥睨し、そしてその視線ははっきりとボクの方を捉える。 ビーストは身体の調子を確かめるように手を開閉する。
そして……
ドッゴォオオオオ!
「くぅっ!?」
あれだけあった彼我の距離は刹那の内に消え失せ、今まで感じたことの無い衝撃をボクは両腕で受け止める。 というか……押されてる……!?
それで終わりではなかった。
4本の腕より放たれる横薙ぎ、振り下ろしの爪の斬撃をボクは捌き続ける。
「ちょっとホムレスさん!?こいつホムレスさんごとボクを殺そうとしてませんか!?」
「……だね。おつむよりも力を優先して設定したからかな」
「なんでそんな落ち着いてるんですか!?」
言っておくけどボクが庇ってなかったらあなた死んでますからね!?
月乃さんと枢木さんを見れば、異形のビーストが放つ猛攻の余波を浴びてロクに立つことすらできていなかった。
これはマズイ。ビーストの性能が相当に高い。いつまでも皆を巻き込まずに捌ききるのは無理だ。
こうなったら……!
「しっ!」
「っ!?」
異形の圧倒的な暴力の流れを力ずくで捻じ曲げ、身体を支える足を全力で蹴り払い、ボクの頭上に晒されるは無防備となった腹部。
「うぅおおおあああ!」
「!?」
ボクの出せる全力の跳躍力を掌底に乗せ、異形を上空へと打ち上げる。 しばし生み出すことのできた猶予。
「ちょっとすみません」
「え……ぐぇっ……!?」
ボクはホムレスさんの首をキュッと締めて気絶させる。 そしてホムレスさんの身体を月乃さんに託す。
「カオリ……?」
「この人を頼みます。枢木さんと一緒に本部へ戻ってください」
「でも、カオリは!?」
「ボクはあれを食い止めます。たぶん、ボクにしかできませんから」
異形のビーストが上空で体勢を立て直すのを確認する。
「とりあえずここは任せてください。それと、後のことは任せました」
「……分かった。絶対に死んじゃダメだからね!?」
「……ボクなら大丈夫ですから」
「っ!いくよ!小雪!」
「え、ええ」
月乃さんは気絶したホムレスさんと枢木さんを抱えて脱出を試みる。
しかし……くる!
「ウガァアアア!」
全身をビリビリと震わせる異形の咆哮。 異形は飛翔能力の全てを重力落下に乗せ、地上のボクに襲いかかる。 地上で激突することになれば、月乃さん達がひとたまりもない。 ボクは全身に溜めを作り、飛ぶ。
「くぅぁあああ!」
巨大な隕石のような異形の拳とボクの拳が激闘する。
「ぐっ!」
当然ながらボクは完全に押し負け、ボクの身体は羽虫のように地に叩きつけられる。 受け身は取れたとはいえ、無傷とはいかなかった。
それでも、異形の突撃を周囲への被害無くやりすごすことができたのはラッキーだ。
「カオリ!?」
「大丈夫です!行ってください!」
「グルゥアア!」
異形の猛攻は続く。 ボクはひたすらにダメージを負わないようにスレスレのところで捌き続ける。
「……月乃さん達はもう大丈夫か」
かなり後ろ髪を引かれるような様子だったが、無事に逃げ切ることができたようだ。 あくまでこの異形をここに縫い止めている限り。 しかし、
「これ……ちょっとマズイかも……」
今すぐどうこうなる心配は無い。しかし、長期戦になれば折れるのは必ずこちらが先。 そうなる前にこの戦局に変化が欲しいところだけど……果たしてどうだろうか。
ストックでは第一部の終わりが見えました。




