表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第8章 楽園の破壊者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/374

もう一つの道を進む者

更新遅れました。もうしわけありません。

解説をどうするかで本当に難産でした。


「答えや解き方を先に教わって知っているから、古来種たちもオレたちも優秀だ。だがそれゆえに、分からないという動機から、何もないところで足掻き悩んで、解き方を追い求めた経験がない」


 ザルガラの言葉は、いまいちルドヴィコに届かなかった。


 古来種カルテジアンは現地の人々から、そのように呼ばれ始めたため、自らを古来種と名乗るようになった。

 彼らが地上で活躍していた当時は、階級や地方で呼ばれ方がさまざまあった。

 古来種という呼ばれ方は、この地を去ってからである。


 そんな彼らの名は別にある。

 創造主たる存在が与えた、種としての名ではなく、道具の名を持っている。


 本来は身体のない情報体であり、胞体石――創造主は別の名で呼ぶが――胞体石が持つ膨大な余裕・・が彼らに自我を与えた。


 彼らもまた知識と知恵を授けられた身ではあるが、この星の原住民に対しては、知識と知恵を与えたと古来種たちは自負している。

 種としての、個人としての、そういった得手不得手で遅れを取ることはあっても、頭脳で負けることはないと、ルドヴィコを含めてすべての古来種は自信を持っていた。


 それが、今。

 崩れようとしている。


「残念だよ、古来種カルテジアンの変人さん。オマエならゼロから最後まで観測して、何もないところから考えるってことに挑戦できるヤツだと思ってたんだが」


 膝をつくルドヴィコと見下ろすザルガラの構図は、図らずも現在の優劣を表していた。

 うろたえるルドヴィコは、ブツブツと呟き思考に捕らわれている。


 一般的な解法と求められた値と同じであるが、ザルガラの使う解法は単純に別解とはいえない。

 答えは同じだが、このやたら面倒な公式がどこから生まれてきたのか、まったく見当がつかず、ルドヴィコは頭を抱える。

 その姿はやけに小さく見えた。


 ザルガラは古来種の姿を憐れんで、ヒントを与えることにした。


「この村の住人。どうやって測量している? ごく自然に、三角関数つかってるだろ? あれって、【険路求道】なのか?」


「いや……え? はあ?」

 

 難しいことを考えていたルドヴィコは、緩い角度から入ってくるヒントをかみ砕けない。

 一応、頭には入っているが、意図を掴めないといういう様子だ。

 

「それからマクローリン展開前提で、機械式の時計造ってる村人ヤツもいたぞ。アレ、教えたのオマエか?」


 さらにザルガラはヒントを与えた……、というより呆れ混じりの質問を投げた。


『マクロリ……? どういうことなの? ザルガラさま』


 まだ悩んでいるルドヴィコに代わり、反応したのはタルピーだ。


「オマエが質問してくるのかよ」


 肩上の真横から質問を受け、真面目に答える。


「おおざっぱに説明すると、方程式全般に言えることなんだが、振り子とかに使われる方程式に三角関数入ってると面倒くせぇし難しいから、近傍……近い数字で考えても同じだよ、誤差を無限に小さくしてるから変わんねぇしってことだ」


『う、ううーむ……そうか。そんなむずかしいことをしてるのか、ここの人』


「そう、難しいことを最初から知っていて使ってるんだよ、この村の人たちもオレも…………って熱い、熱い、オマエはあんまり難しく考えるな」


 わかったようでわかってないが、とにかくなにか難しんだということを難しく考えてタルピーは発熱する。


「魔法には頼らない……いや、たまに頼っていたようだが、それがバレないように誤魔化すくらいには気にしていた。だが、高度な数学は当たり前のように使っていて、隠そうとも隠すべきとも思っていない。まあ魔法だけ無くなった世界を想定してるんだから、当然なのかもしれないが」


 ザルガラは熱源体を肩から降ろし、ルドヴィコを問い詰める。

 これはもはやヒントではない。責めているかのような口調だった。


「三角関数どころか、テイラー展開まで、知識と技術をジャンプして受け取り、当然のように使っている。ちっとも険路を求めて歩いていないな、オマエら」


 ルドヴィコは反論できない。

 彼ら古来種は、その名も知能も与えられたものであって、自ら獲得した経験は長い歴史の中で一度もなかったからだ。

 それを指摘されて、ルドヴィコは唇を噛む。


 古来種から悔しそうな視線を浴びるザルガラは、昨日の模擬戦で使われた投石機をチラりと見た。


「アザナたちが作った投石機か……なあ、古来種様。空中に発射された物体は、どういうふうに空を飛んで、どんな落ちてくるのかな? その軌道ってさ、円かな? 楕円軌道かな? それともパラボラ曲線か、双曲線かな? はたまた射角の延長線上に飛ぶだけ飛んで、地面に垂直に落ちてくるのか、それとも撃ちだした方向へ同じ速度でまっすぐ上昇して、頂点になるとデコッ! と曲がって射角のマイナス角度で等速直線運動しながら落ちてくるのかな?」


 これが難しいんだよ、と顔をしかめるザルガラに対し、ルドヴィコはなんでそんなことを悩んでいるんだという表情を見せる。


「放物線……パラボラ曲線ではないのですか?」


「それはそう教わったからではないのですか?」

 

 当たり前だというルドヴィコに対して、そう学んだからその答えを出すのは当たり前だろうと、口調を真似してザルガラはおちょくるように反論した。


「じゃあ、ザルガラ君。……君はどういう弾道を描いていると思っている?」


「あー、これがまだわかんないんだよ。観測魔法を無しにしてるし、難しんだこれが。重力とか等加速度運動とか知らない前提でやるとさ、どうやって調べるのかなかなか難しくてな。なので、あとで思いついたやり方で実験してみる」


 ザルガラの頭脳を持ってしても、計算や脳内の発想だけで答えが出せるものではないらしい。


「その点、古来種たちが来る前の古龍とかすごいぜ。積分で面積求めたり、自分たちで数学的アプローチをしてる。ああいうのが、本当の学者なんだろうな。感心するぜ。もしかしたら弾道軌道の発見も、独自にしてるかもしれないぞ。もしそうだとしたら尊敬するぜ」


 本心から感動している様子のザルガラを見上げ、ルドヴィコは彼が出会えた機会に嫉妬した。


 ――彼は本当に険路を進んでいる。


 険路求道の村人たちが魔法の便利さを捨て、技術や文明を巻き戻したように、ザルガラは数学の歴史を巻き戻し、疑似的に「わからないから調べる」という過程に挑んでいる。


 そのことに気が付いたルドヴィコは、無意識にザルガラから離れることを選んだ。


 今のままでは彼の魔法陣を書き換えるどころか、防御することすら難しい。

 

 だが時間さえあれば、どうやって彼が図形を描いているかをルドヴィコは解明できる。


 とはいえ、すぐには無理だ。

 今はその優れた計算方法が、探究の邪魔をしてしまう。惑わされないように一人静かに、落ち着いて取り組まなければならない。


 彼は結果として、時間を稼げるように距離を取った。

 具体的には空を飛んで、逃げようとした。

 その姿を見て、ザルガラはほくそ笑む。


「もちのろん、相手が距離を取ることも想定済み」


 なぜザルガラは、まっすぐ駆けて殴ったのか?

 それはあわよくば、この【魔法名はオマエが考えろ】が近接専用の魔法であると、誤認させるためだ。

 ルドヴィコはザルガラの思惑通り、相対しては危険と判断して、空へと逃げた。


「【約束された熱暴走ライフルマンフルセット】」


 高次元物質化した手でのみ再現可能かと思われた【魔法名はオマエが考えろ】は、ルドヴィコの予想に反して、通常の魔力弾の如く投影胞体陣から無数に撃ちだされた。

 だが、それすらも欺瞞。


 膨大な魔力を投じ、辛うじて魔力弾を防ぐルドヴィコの懸命な防御をあざ笑うかのように、ザルガラの手が魔力弾に紛れて飛んできた。


「【魔法名はオマエが考えろ】からのッ……【除け者は床に座れ!】」


 魔力から衝突エネルギーや発生する音まで、すべての力を殴って吹き飛ばすという力に変換する魔法が、ルドヴィコの顔面を捉えた。

 本来ならば、顔面を殴られれば後方に仰け反り、宙ということもあって回転するはずだが、【除け者は床に座れ】という不自然な魔法の効果によって、ルドヴィコは殴られた瞬間のポーズのまま吹き飛んでいく。


 田園風景の上を、人がそのまま微動だにせず飛んでいくという滑稽な光景であった。

 ルドヴィコとザルガラの諍いを知らない村人たちは、作業の手を止めてぽかんとその様子を見上げ、村長が背中を進行方向にして面白い飛び方をしてるなぁ、と勘違いするほどだった。


 間抜けな吹き飛ばされ方をしたルドヴィコだったが、【除け者は床に座れ】という魔法の効果には必要以上な抵抗をしなかった。


 そのため飛んでいる姿は無様だったが、着地はふわりと危険なく見事である。


「無傷で相手を吹き飛ばす魔法か……。距離を取るつもりだったので良いのだが……。まさか、彼はここに私を?」


 ザルガラの意図を探るルドヴィコに、かかる声があった。


「驚いた。着地地点。だいたいあってる」

 

 膝をついたまま顔を上げて身構えるルドヴィコの視線の先に、一つ目のアイマスクをつけた少女がいた。


「これはこれは古来種様。お会いできて光栄の至り。昨日ぶりにございます」

 

 アイマスクをした女が、立ち上がろうとするルドヴィコに手も貸さず、慇懃無礼な振る舞いで見下ろしていた。


 イマリーは未だ支配から脱していないため、明確な敵対は行えない。

 だが、辛辣な言葉をかけることはできるようだった。


「サイクルオプス……か。この私に何か……」


「用。というか。私の調査結果。それを教えてあげろ。って頼まれた」

 

「調査? 頼まれ……た?」

 

 膝の土を払い立ち上がり、上位種サイクルオプスの発言に眉をひそめる。


「そう。昨日。ザルガラに頼まれた。村の調査」


 あくまでザルガラの協力者という立ち位置で、イマリーは村を調べたと言い張る。


「ばかな。君は調査などできなかったはずだ」


 協力者であることは納得したのか、重要度は低いと思ったのか、ルドヴィコは村を調べ上げたということに反応した。

 その指摘にイマリーは、最初は小さくうなずき、その後にはっきりと首を振った。


「ええ。東の隠された施設を捜索。それはできなかった。でもそれは偽装。他の事。それを調べてた」


 隠している物などないルドヴィコは、隠された施設について思い当たる節がない。

 話してみろという命令的な視線を差し向けると、イマリーは静かにうなずいた。


「わかりました。お話しましょう。古来種あなた様のつくった村。その不出来具合。その真実を…………」



結果的に解説は省きました。

結果的に3000文字くらいボツ。

結果的に降参。


解説は次回以降、文字数足りないなどなんとか短い話の時に回そうかと思います


ふわっとザルガラがどういう道を選んだか、に重点を置いた表現にしました。

簡潔に解説してる漫画とか小説とかありますが、あれこそ作家さんたちが本当に頭が良いんでしょうね。

あとニュートンとガリレオとかとにかく偉人ほんとうにすごいです……。


子供のころ笑い話にした経験がありますが、偏見を取り払ってデ○ジャンプも突き詰めて考えるとなかなかに深いです。

歳がバレたッチ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ