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 吸い込まれそうな瞳から力強い意志を感じる。オクタリヌの眼力に、ルービスは自分の心の動揺を隠し通す自信がなかった。

 オクタリヌはアムとは仲間のはずだ。

 そのアムを殺害したのが自分たちだと知れたらどうなるかわからない。

「エンジェルと呼ばれる美貌の持ち主はそうそういまい。それとも美化されているだけか?」

 オクタリヌはルービスの青ざめた表情を抜け目なく観察した。

(アムは美人に弱いことは有名だ。この目の前の女ならアムも自分の妻にしたがるだろう)

醜いアムの容姿を見て、サーブ王はカツタフォルネを統治するのに条件を付けた。非の打ちどころのない妻を選び据えることだ。ただでさえ謀反を起こした役人が民衆から受け入れられるとは思えない、アムの印象を変えるほどの妻を探す必要があったはずだ。

 しかし情報によれば、どうやらそうして手に入れた妻こそが反乱の首謀で、美しい剣士だったという。

 アムは自分の身近な内部から、そして地下に潜んでいたその女の仲間により外部から同時に攻められたという。その上、謀反が驚くほど早く民衆の耳に入ったため暴動も同時に起きたということだった。

 それほど役立たずだとは思っていなかったが、あっさりとこの世を去ってしまった。

 だが、それでも王族を滅ぼしてくれたことで彼は役目を果たしている。統治者が存在しない国など、すぐに制圧できる。アムの訃報とともに、ユリのカツタフォルネ制圧の知らせも届いていた。

(しかし、この女がイルメニであれば事は複雑だ)

 オクタリヌはルービスの表情から、イルメニである可能性はほぼ間違いないと感じていた。

「おい、腑抜け王子の報告はないのか」

 オクタリヌは報告に来た騎士を振り返った。

「は・・・? 腑抜け王子・・・?」

「チュチタの行進を捕らえたという報告は? それも計画だったはずだ」

 ルービスはさらに顔面蒼白になる。オクタリヌはその表情を観察してさらに考える。

(この女が腑抜け王子の恋人であることも間違いなさそうだ。これはいったいどういうことなのだ。偶然か・・・必然か)

「チュチタの行進は捕らえられなかったそうです」

 騎士の言葉にルービスはたまらず安堵のため息を洩らした。

「なぜかマラハラから早馬を調達して、全員でチュチタに駆け戻ったそうで・・・」

「なんだって!? 早馬?」

 オクタリヌはルービスを睨んだ。

(カツタフォルネの出来事から、今回の事を予見して王子に報告したのだろうか)

 チュチタの行進が早馬で帰還するなど聞いたことがない。オクタリヌはルービスの胸倉を掴む。

「お前…、あの腑抜け王子に・・・」

 ルービスの怯えた表情を見てオクタリヌは言葉を止めた。使命を持っているものにしては、この頼りない目や怯えた表情はなんなのだろうか。演技なのだろうか。奇妙だ。

「この女の連れは口を割ったのか」

 今度は兵士を睨む。

「いえ! まだです! 痛みに強くて・・・なかなか口を割りません」

「まだ仲間がいるはずだ。・・・あとから捕虜にしたもののなかに剣を所持していたものは?」

 オクタリヌはルービスから手を離し、兵士に向き直った。

「3人います。みな男です」

 兵士の報告にオクタリヌは満足そうに微笑んだ。

「私が話に行こう。出発は遅らせる」

 オクタリヌは騎士を見た。

「兄上に報告を。チュチタの腑抜け王子の恋人と、アムを殺害した一味を捕らえたと」

 敬礼をして駆け去っていく騎士を見送り、オクタリヌは再びルービスを見た。

「この女は元の所に縛り付けておけ」


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