砂嵐
ルービス一行は順調に歩を進めていた。北に向かっているというのに、なぜか暑くなってくる。ルービスは何度も地図を確認した。
「この辺りはなぜか暑い地域が広がるんだ。ちょうどマラハラの真ん中あたりだ」
ケディはルービスの地図の《嵐》と書いてあるところを指した。
「嵐って何?」
ルービスがケディに尋ねると、横にくっ付いていたレイがルービスを突いた。
「目の前を見てごらん」
レイの言葉に皆前を向く。この辺りは風が強いため、皆フードを深く被って下を向いて歩いていたのだ。
目の前には砂煙が立ち上がっていた。見上げる高さだ。汚い雲が地面まで降りてきているようだ。
「なにあれ」
ルービスは眉をひそめてそれを見た。
「こりゃあ、悪い時期にぶつかっちまったな」
ケディも眉をひそめ、その場に座り込む。
「悪い時期って?」
「マラハラ国のちょうど真ん中にな、砂漠があるんだよ。ある時期には砂漠は大荒れに荒れてとてもじゃないが通れなくなる」
「もしかしてそれがあれ?」
「そう、それがあれだ」
ルービスも隣にしゃがみ込むのを見て、後ろにいた男たちも次々に座り込んだ。
「どうするのさあ、いつ終わるの?」
ルービスはケディを揺すった。
「どうするって言われてもなあ。止むまで待つしかないな」
「いつ止むの?」
「さあ・・数時間か何日か・・・。オレにもわからない」
ルービスは向かってきそうな勢いの砂嵐を眺めてため息をついた。
「通れないの?」
「そりゃあ、ゆっくり行けば通れるだろうけど、砂だらけだぞ? 時間もかかるし、体力ももたないだろう」
ルービスはすくっと立ち上がった。ケディが手を伸ばしてルービスを座らせようとするが、ルービスはすばやく身をかわす。
「行くつもりか?」
「ここを抜ければどうなる?」
「抜けたら、サーブ王国は目の前だ。ユリ領への国境も近い」
「行こう」
ルービスは荷物を背負い直して歩き出した。
「ちぇ」
ケディ達は仕方なさそうに腰を上げた。
「ねえ、ケディ、馬なんて使ったらどうだろう」
ルービスは横にそびえる馬小屋を眺めながら言った。
「馬ァ?」
ケディは大きく手を振った。
「だめだめ、馬なんてあの嵐の中連れたら暴れまわって大変だ。振り落とされるぜ」
「でも乗りこなせば?」
「・・・よせよ、大体馬を貸してくれるわけが・・・」
ケディが後を続けようとすると、ルービスが忽然と姿を消していた。
「?」
「ケディ、あれ!」
皆が指差す方向を見ると、なんとルービスが馬にまたがっていた。
「な・・・何する気だ!」
「GO!」
ルービスが馬の腹を叩くと、馬は馬小屋を躍り出て、一直線に砂嵐の中に駆けだした。
「ゴーじゃない! ゴーじゃ!」
ケディは慌てて自分も馬小屋から馬を引っ張り出した。馬小屋の主人を見ると、青い硬貨を大事そうに握ってニコニコしている。
「あいつ…っ! 全然わかってないっ!」
ぞろぞろと困惑した表情で男たちも追いかけてくる。
「ケディ、無茶だよ。あの中を追いかけるなんて!」
「そんなこと言ってらんないだろう、あの無鉄砲野郎!」
ケディは嫌がる馬を叱りつけて嵐の中に入っていった。
残った3人も渋々馬にまたがり砂嵐を見つめるが、気おくれが馬にも伝わり、なかなか中に入れずにいた。




