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『大凶少年と邪悪な招き猫の絶対死なない大開運ロードムービー』  作者: 今日も今日とて黒猫さん


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8/8

第8話:邪悪な猫は、急襲作戦をゴーストタウンへ導く


「鉱山の入り口の見張り……! うん、そこなら一番安全だし、僕でも絶対に迷惑をかけないよね!」


大商人ギルバートの国家反逆罪を暴いた結果、憲兵団とギルドの精鋭たちから「深謀遠慮なる若き総大将」として祭り上げられてしまったアルト。


彼らが立案した大陸最凶の暗殺ギルド【冥府の牙】の総本山──街外れの廃鉱山への急襲作戦において、アルトは涙目で懇願し、最も戦闘から遠ざかることができる『入り口の留守番』の任務をもぎ取っていた。

しかし、憲兵団長たちの受け取り方はまるで違った。


「さすがアルト閣下、敵の退路を完全に断つために、最も重要な『逃げ口の封鎖』を自ら買って出るとは……。どこまで隙のない完璧な布陣を敷かれるのだ……!」


「ああ、我々も閣下の背中に恥じぬ戦いをせねばな!」


熱い正義の炎を燃やす精鋭たちが次々と薄暗い鉱山の奥へと突入していく中、アルトは「いや、本当にただの留守番なんです……」と呟きながら、ポツンと入り口に立ち尽くしていた。


リュックの特等席からその様子を見ていた黒の招き猫──妖精王ケット・シーは、陶器の内部で邪悪な舌なめずりをしていた。


『クハハハ! 逃げ口の封鎖だと? 愚か者が。突入したマヌケどもを助けることもできず、ここで一人寂しく木っ端微塵になるがいい!』


実は、この廃鉱山の入り口一帯には、【冥府の牙】が侵入者を一網打尽にするために仕掛けた古代の特ド級爆破魔術──『地雷の魔陣』が幾重にも埋め込まれていた。この暗殺ギルドもまた、ケット・シーが数百年前に闇の知識を授けて組織の基盤を作った「お気に入りの人脈」であり、アジトの構造も罠の配置もすべて把握していたのだ。


『我が暗黒の魔力で、その足元にある爆破スイッチを今すぐ強制起動させてやる。大切な手駒は渡さん。お前という大凶の存在ごと、この鉱山ごと消し飛び去るがいい!』


深夜の静寂の中、ケット・シーは体内の魔力を限界まで練り上げ、アルトの足元の地面へ向けてドス黒い起動呪波を放った。

と同時に、反動で置物の左手が「クイッ」と動いた。


──【黒の招き猫:大開運システム起動】

パチチチチッ!!と黒の招き猫の表面が、これまでになく激しく黄金に輝く。

ケット・シーが放った「アルトを跡形もなく爆殺する呪い」が、招き猫の幸運反転エンジンを通過した結果、なんと「プラス500」の【エネルギーを全量逆流させ、座標を反転させる、超・地殻変動パルス】へと強制変換されてしまった!


ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォォン!!!!!


「うわあああっ!? 地震!?」


突然、廃鉱山の『奥深く』から、大地を揺るがすような凄まじい地鳴りと特大の大爆発音が響き渡った。アルトはあまりの衝撃にその場に飛び上がり、尻もちをつく。


本来ならアルトの足元で大炸裂するはずだった絶大な爆破エネルギーが、魔力回路を真逆に逆流。あろうことか、憲兵たちを迎え撃とうと武器を構えてアジトの最深部に潜伏していた【冥府の牙】の暗殺者たちの真真ん中でピンポイントにテレポートし、大炸裂したのだ。


「ギ、ギャアアアアッ!?」


「なぜだ! なぜ俺たちの罠がここで爆発して──」


自分たちが仕掛けた最凶の爆発をド頭から喰らった暗殺者たちは、戦う前に一瞬で半数が消し飛び、さらにその凄まじい衝撃によって廃鉱山の内部構造がメキメキと大崩落を始めた。天井から容赦なく降り注ぐ巨大な岩石の山に、暗殺ギルドの精鋭たちは次々と生き埋めになり、アジトは一瞬にして地獄の叫び声に包まれた。


一方、何も知らないアルトが入り口で煙が噴き出す坑道を見つめてオロオロしていると、奥からゴホゴホと血を吐きながら、命からがら這い出てきた一人の男がいた。

全身ボロボロで、煤まみれになった【冥府の牙】の最高幹部である。


「お、お前が……裏で糸を引いていた、あのゴールドクラスの……化け物、か……っ!」


幹部は入り口に佇むアルトを見上げると、その底知れない恐怖に絶望し、そのまま白目を剥いてアルトの足元にドサリと力尽きて倒れ込んだ。


「え? えええっ!? だ、大丈夫ですか! あ、こら、噛んじゃダメだよ!」


アルトはパニックになりつつも、倒れた男の匂いを嗅いでウズウズしていた子犬ヘルハウンドの首根っこを慌てて掴んで引き剥がす。

目の前で勝手に自滅していく暗殺ギルド、そして勝手に足元に転がってきた最高幹部の姿を見て、アルトの純粋な心に、またしても一点の曇りもない閃きが訪れた。


(……そっか、そういうことだったんだ!)


(黒猫様は、僕たちが危険な炭鉱の中に入って、怖い暗殺者の人たちと戦わなくて済むように、先に中の悪い人たちの仕掛けを大爆発させて、ボスを外に追い出してくれたんだね……っ!)


「やっぱり黒猫様は、戦わずして勝つ、究極の兵法の神様なんだなぁ……っ!」


アルトはまたしても溢れる涙をボロボロと流しながら、黒の招き猫を胸に強く抱きしめ、その慈悲深さに感謝を捧げた。



直後、崩落の隙間から命からがら戻ってきた憲兵団の精鋭たちが、入り口の光景を見て文字通り開いた口が塞がらなくなった。


「な、何ということだ……。我々が突入するより早く、敵の罠のエネルギーを完全に逆流させて内部のアジトを壊滅させ、逃げ出してきた最高幹部を一歩も動かずに無傷で捕縛したというのか……!」


「これがゴールドクラスの『神速の先制攻撃』……。最初から、我々が中に入る必要すら、お見通しだったのか……!」


凄まじい歓声と、神を見るかのような畏敬の眼差しがアルトに注がれる。

しかし、縛り上げられた幹部の懐を検閲していた憲兵が、一枚の不気味な魔術スクロールを発見し、その顔を極限まで引きつらせた。


「お、おい、嘘だろ……! 団長、大変です! 幹部が、この街の地下に仕掛けられた【魔力集束崩壊爆弾】の遠隔起動スイッチを、死に際に押しやがった!!」


「何だと!? 爆発までのタイムリミットは!?」


「あと、約二時間……! このままでは、この街全体が跡形もなく消し飛びます!!」


「そんな……っ!」


団長が顔を青ざめさせ、スクロールを持つ手を激しく震わせる。


「爆発までのタイムリミットはあと二時間……。街の全住民を避難させる時間などない。このままでは、この街全体が跡形もなく消し飛ぶぞ……!」


一瞬にして、勝利の歓声が絶望の静寂へと塗り替えられていく。

怯える憲兵たちの中で、アルトだけは、リュックの黒の招き猫をそっと強く抱きしめていた。その瞳には、恐怖を堪えるような、しかし確かな信頼の色が宿っている。


(……黒猫様。街のみんなが危ないんだね。僕がここに残ったのも、きっとこの危機を僕たちに止めさせるためだったんだ)


ゴクリ、と唾を飲み込み、アルトは震える声を絞り出した。


「あ、あの……! 爆弾の場所はどこですか!? 諦めないで、僕たちで探しに行きましょう!」


その真っ直ぐな言葉に、絶望に暮れていた憲兵たちがハッと目を見開く。


「アルト閣下……。この期に及んで、一歩も引かぬというのか……!」


一方、リュックの中で、ケット・シーは自身の陶器の皮膚がストレスで剥がれ落ちるような、凄まじい絶望のカタカタを刻んでいた。


『(ハハ、ハハハ……! 見ろ、私の仕掛けた【魔力集束崩壊爆弾】が起動したぞ! あと二時間でお前も、この街の人間も全員絶滅だ! ざまあ見ろ、これぞ我が──)』


「大丈夫だよ、黒猫様。僕が、絶対に君を守るからね」


リュックの隙間から差し込まれたアルトの小さな手が、黒の招き猫の頭を優しく撫でる。その手の温もりに、ケット・シーの脳内での勝ち誇った絶叫が、ふっと冷や水を浴びせられたように凍りついた。


『(ま、待て。なぜその大凶の目で私を見る。お前、まさかその最凶の不運(開運)で、爆弾の場所まで無理やり引き当てるつもりじゃないだろうな……!? やめろ、私のお気に入りの爆弾を、これ以上私の魔力で変な暖房器具に変えるのはやめろォォォ!!!)』


カバンの中で、マンドラゴラと子犬が主人の決意に応えるように小さく鳴き声を上げる。

街のカウントダウンが冷酷に刻まれる中、少年と邪悪な招き猫は、爆弾の眠る暗い地下通路へと、一歩を踏み出すのだった。


(またしても世界を平和にしてしまった……。なぜだ……なぜ我が呪いが全てプラスに変換される……!)


――黒猫様の絶叫が響く中、アルトの珍道中は続きます。

皆様、評価やブクマでの応援、本当にありがとうございます!

その応援が、猫様の置物を割らない程度に励みになります。

引き続き、聖人として祭り上げられるアルトを見守ってやってください!

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