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『大凶少年と邪悪な招き猫の絶対死なない大開運ロードムービー』  作者: 今日も今日とて黒猫さん


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第7話:邪悪な猫は、呪いの密輸品を暴く


「よし……! これなら僕でも、絶対に、何があっても安全だよね!」


街の猛者であるボアを(勝手な自滅によって)下し、不正を暴いた結果、新しい街でも一瞬にして「深謀遠慮なるゴールドルーキー」として崇拝され始めたアルト。そんな彼の元に、街の経済を裏から牛耳る大商人、ギルバートから直々の指名依頼が届いていた。


依頼内容は、商会が近々国宮へ献上するという、伝説の最高級ワイン『神の雫』が保管された地下倉庫の夜間警護。

頑丈な鉄扉に閉ざされた室内で、ただ一晩じっと座っているだけという、戦闘要素が一切ない依頼である。


「一晩座っているだけで大金が貰えるなんて……。やっぱりコツコツと地道に頑張っていれば、良いこともあるんだなぁ」


アルトはホクホク顔で、カバンから密航者(マンドラゴラ)と、すっかりただの可愛い黒子犬になったヘルハウンドを出し、冷たい床の上に毛布を敷いて座り込んだ。


リュックの特等席に鎮座する『黒の招き猫』──妖精王ケット・シーは、その様子を薄暗い闇の中で見つめながら、陶器の内部で邪悪に舌を巻いていた。


『ククク、地道に頑張る、だと? どこまでも脳天気な大凶モヤシめ。何も知らずに我が手の平の上で踊りおって』


実は、この大商人ギルバートは、ケット・シーがかつて人間の歴史の裏側でコソコソと悪事を働いていた際、自身の闇の知識を授けて大金持ちに成り上がらせた「お気に入りの手駒(人脈)」の一つだった。


ギルバートは今回、ゴールドクラスであるアルトの圧倒的な威光を「隠れ蓑」として利用し、ギルドや憲兵のガサ入れを完璧に防ぎながら、国宮への献上品に紛れ込ませて『ある物』を密輸しようと企んでいたのだ。


『我が仕込んだ闇のルート、まさかこんな形で役に立つとはな。だがガキよ、ここで我が直々に、そのワインに特級の【劇薬・即死の腐敗呪】を注ぎ込んでやる。ワインは一瞬でドス黒い猛毒に変わり、お前は「国への献上品を台無しにし、大商人の財産を破壊した大罪人」として、明日の朝には処刑台行きだ!』


深夜。アルトが心地よい静寂の中で、ついうとうとと居眠りを始めた、その瞬間。

ケット・シーは体内の魔力を一気に練り上げ、厳重に封印された高級ワインの樽へとドス黒い呪詛の光を放った!

と同時に、反動で置物の左手が「クイッ」と動いた。


──【黒の招き猫:大開運システム起動】

パチチチチッ!!と黒の招き猫の表面が青白く輝く。

ケット・シーの放った「ワインを毒に変える呪い」が、招き猫の幸運反転エンジンを通過した結果、なんと「プラス500」の【あらゆる不純物や隠蔽魔術を強制解除する、超・浄化活性化の光パルス】へと強制変換されてしまった!


パキィィィィィン!!!!!

静まり返った地下倉庫に、ガラスが鋭く割れるような、美しい高音が響き渡った。


「うわぁっ!? な、何事!?」


跳び起きたアルトが慌ててランタンを掲げると、そこには信じられない光景が広がっていた。

神聖な光の余韻が漂う中、絶対に壊れるはずのない『神の雫』の頑丈な木樽が、内側からの圧力に耐えかねたように真っ二つにパッカリと割れていたのだ。


そして、割れた樽の「二重底」になっていた隠しスペースから、ワインではなく、禍々しい闇のオーラを放つ大量の【漆黒の違法魔晶石】が、ガラガラと床一面に転がり出てきた。それは、この国では所持しているだけで一族郎党が死罪となる、裏社会の最高危険物だった。


さらに、浄化の光を浴びたことで、樽の表面に施されていた巧妙な隠蔽魔術が完全に霧散。隠されていた「本物の帳簿」が、パサリとアルトの足元に落ちてきた。


「こ、これって……高級ワインじゃ、ない……?」


アルトはおそるおそる足元の帳簿を拾い上げ、ランタンの光で中身を確認した。そこには、大商人ギルバートが、今回のワイン護衛を隠れ蓑にして国宮へ大量の違法魔石を密輸しようとしていた計画と、裏の取引履歴がびっしりと書き連ねられていた。

アルトの背中に、ドッと冷や汗が吹き出す。


(……あ、危なかった……っ! この商人さん、最高級ワインを護衛してほしいなんて嘘をついて、本当は僕を騙して国家犯罪の手伝いをさせようとしてたんだ……!)


目の前の割れた樽、転がる密輸品、そして決定的な証拠。アルトの純粋な心は、すぐに一つの答えへと辿り着く。


(黒猫様がわざわざ樽を割って、隠された悪い石とこのノートを見せてくれなかったら、僕は明日、何も知らずに憲兵さんに捕まって処刑されるところだったんだ……。僕のピンチを察して、寝ている間に助けてくれたんだね……っ!)


「ああ、やっぱり黒猫様は、どんな悪事も見逃さない正義の神様だぁぁぁ!」


アルトは恐怖を吹き飛ばすほどの感動を胸に、涙をボロボロと流しながら黒の招き猫を強く抱きしめた。そして、足元で一緒に毛布にくるまっていた子犬(ヘルハウンド)とマンドラゴラを急いでカバンに詰め込むと、証拠の帳簿を抱えて、夜闇の中を憲兵団の元へと全力で走った。


◇


翌朝。街は、歴史的な大事件の発生にひっくり返るような大騒ぎとなった。


「おい聞いたか!? 街の一番の大商人、ギルバート商会が、国家反逆および違法魔石密輸の罪で夜のうちに全員逮捕されたってよ!」


「マジかよ! 誰がそんな国家レベルの犯罪を暴いたんだ!?」


「あの王都から来たゴールドルーキーの少年さ! 護衛の依頼を引き受けた初日の夜のうちに、完璧に偽装された二重底の密輸トリックを完全に見破り、証拠の裏帳簿まで完璧に押収して憲兵に突き出したらしい!」


「どんな隠蔽魔術もあの少年の前には無意味なのか……。どこまで恐ろしい鑑識能力をしてやがるんだ……!」


ギルド長も憲兵団長も、アルトの前に深く頭を下げ、国家を救った英雄として特大の報奨金を差し出した。ギルバート商会は一瞬で取り潰され、街の経済界の闇は綺麗に一掃された。


だが、物語はここでは終わらない。

押収された裏帳簿の最下部、ギルバートと繋がっていた「密輸の真の黒幕」の欄には、血のような赤文字で、ある恐るべき裏組織の名前が刻まれていたのだ。


【大陸最凶の暗殺ギルド・冥府の牙】


「アルト閣下、君のおかげで、我が国を裏から脅かす暗殺ギルドの尻尾を、ついに掴むことができました! 憲兵団は直ちに、この帳簿に書かれた彼らのアジトへと突入します!」


憲兵たちが正義の炎を燃やす中、アルトは「いや、僕はただ黒猫様が樽を割ったのを見つけて……」と相変わらず困惑して手を振っていたが、誰も聞いていなかった。


一方、リュックの中で、ケット・シーは己の陶器の体から魂が完全に抜けかけ、深刻な胃痛(?)でカタカタと震えていた。


『(ち、違う……。ワインを毒に変えてガキを処刑させるはずが、なぜ私の大切な手駒(大商人)が国家反逆罪で一発退場しているのだ……。しかもあの帳簿、よりによって私が数百年かけて築き上げた、別ルートのお気に入りの暗殺ギルド【冥府の牙】の総本山のアジトの住所じゃないか!! 私の人脈を、私の魔力で、芋づる式に壊滅させてどうするんだこの大凶モヤシィィィィ!!!)』


自身の悪巧みが、巡り巡って身内の本拠地を憲兵団に差し出す最悪のブーメランとなってしまった。ケット・シーはカバンの中で、冷や汗(のような結露)をだくだくと流す。


『(おのれ大凶モヤシめ、こうなればアジトの連中に連絡を……いや、間に合わん! 憲兵どもが総出で押し寄せるぞ! 待てよ、ならばむしろ、あの廃鉱山に仕掛けた数々の凶悪な罠で、突入してきた憲兵ごとあのガキを消し去ってやれば──)』


「黒猫様、なんだか外が騒がしくなってきちゃったね……」


不安そうにリュックを覗き込んできたアルトの無垢な瞳と、バチリと目が合う。

カバンの中では、マンドラゴラと子犬(ヘルハウンド)が、主人の心配を察して「きゅ~ん」と寄り添っていた。


アルトのその何も知らない『大凶』の笑顔を見つめながら、世界一邪悪な猫の王は、これから始まるであろうさらなる因果の暴走に、ただただ不吉な予感しかしない虚無のカタカタを刻み続けるのだった。


(またしても世界を平和にしてしまった……。なぜだ……なぜ我が呪いが全てプラスに変換される……!)


――黒猫様の絶叫が響く中、アルトの珍道中は続きます。

皆様、評価やブクマでの応援、本当にありがとうございます!

その応援が、猫様の置物を割らない程度に励みになります。

引き続き、聖人として祭り上げられるアルトを見守ってやってください!

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