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 夜流との勉強会が終わるとすぐに帰宅した。家に入って親と特に会話を交えず部屋に閉じこもる。机に置いてあるパソコンを起動させ、カメラと接続させればさっきまでいた部屋が映し出される。夜流はまだ勉強を頑張っているようだ。偉すぎる。しかし画質が悪い。次部屋に入る機会があれば高性能のものと取り替えよう。そのためにはもう少し小遣いが必要だ。

「お兄ちゃんー、勉強教えてくださーい。開けるよー?」

 急いでパソコンを閉じ、ノックされた部屋のドアを開ける。

「僕は今金欠なんだ。」

「げっ。またお金とるの?ケチだねー。」

 可愛さのカケラもない弟の(のぞむ)だ。毎日のように勉強を教えろと僕に寄ってくる生意気なクソガキ。頭が良くないからこいつなりに危機感は持っているんだろう。それを利用して僕はたまにお金をもらっていた。

「どこがわからないんだ?1問二千円で教えてやろう。」

「高くない?僕そんなにお金ないんだけど。」

「ローンも付けてやる。」

 弟に慈悲なんてものはない。そう、こいつにトランプで負けたときに誓った。これ以降はもうどんな事をしてでも絶対に負けるわけにはいかないと。兄としての威厳を失うなんてことはできないのだ。

「お兄ちゃん趣味悪いねー。」

「本当にお前は…感謝という気持ちはないのか?」

「お金に貪欲な人に言われたくないね。そんな性格だと恋人できないよ?あ、友達すらいないか。」

 最悪なワードを言われた瞬間、インターホンが鳴った。臨に蹴りを入れてから玄関の扉を開ける。

 そこには、沈む太陽に影響され暗くなった空を引き戻すような明るい夜流が立っていた。

「急にごめんね。昇くんの家やっぱりここなんだ。」

「堺くん…あの、ど、どうかした?」

「シャーペン忘れてたから返しに。」

「ありがとうございます…。」

 そんなの明日でも良かったのに律儀だ。めちゃくちゃいい子。まずい、好き。

「あ、弟くん?初めましてー。そっくりだ。小さい昇くん見たいで可愛いね。」

 夜流は奥の臨を見つけると軽く手を振った。

「いやいや…全然似てないしあいつ生意気で兄弟なんて…。」

「いいなあ、俺一人っ子だから羨ましいや。」

 夜流が言うんだ。兄弟がいる僕は幸せだ。

「昇くんじゃあね。また明日。」

「うん…また…。」

 カメラで見るより生のほうがやっぱり可愛かった。わざわざ届けにきてくれたんだ、明日もう一度礼を言おう。

「なんでシャーペン袋に入れてるの?」

「夜流が触ってるんだ。直で、素手で。保管しないわけがない。」

 貴重な物資。他人ならもちろんのこと、僕ですら触るのが惜しいくらいだ。それなら誰にも触れさせず僕が持っているのがベストである。

「お兄ちゃん気持ち悪…。」

「愚弟は黙ってろ。」

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