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 登校中に夜流と出会った。正確に言えば、僕がそうするようにした。朝起きてから家を出るまでパソコンを開いて夜流が起床した時間から何時に家を出るのかを予測するだけで、こうもあっさり夜流と遭遇できるとは。

「昇くんおはよー。昨日はありがとう。」

「おはよう…。僕も、シャーペン届けてもらって…。」

「全然!教えてもらったの俺だから。昇くん困ると思ってさ。」

 どうやって育てたらこんな聖人ができるんだ。お義母さんありがとうございます。

「あのさ、昇くんが良かったらまた勉強教えてよ。」

「もちろん。聞いてくれたらいつでも…。僕も教えるの好きなんだ。」

 会話をしながら歩いていたら、夜流が急に立ち止まって振り返り僕を見る。

「昇くんがタメ使ってくれるの嬉しいよ。」

「そう…?堺くんに言われたし初めてで。」

「じゃあ俺が特別だ。やった。」

 手でピースサインをつくると僕に向けた。

「名前も夜流って呼んで?俺、昇って呼びたいから。」

「え。夜流でいいの?」

「いいよいいよ!だってもう友達じゃん?」

 いつのまにか夜流の中で僕は友達になっていた。どうだ臨、僕にも友達がいるんだ。世界一可愛い友達だ。夜流に対する気持ちが、よりいっそう高まった。


 それから夜流は、休み時間によく話しかけにきてくれる。夜流の頭に僕が入っているのがまだ信じられない。

「昇、昼一緒に食べよ。購買行く?」

 こうやって昼食も誘ってくれる夜流。なにもかもうまく行きすぎて逆に不安になる。

「ずっと聞きたかったんだけどさ、連絡先交換しよー。いい?」

「あ、もちろん。スマホどこやったっけな…。」

 まさか夜流と連絡先を交換する日がくるなんて。今日は本当にいい日だ。

「夜流ー、先生が呼んでるよ。課題やり直しだってさ。」

「ありがとー。すぐ行く。ごめん昇、あとでしよ?」

「ああ…うん。じゃあここ片付けとくよ。」

「サンキュー、あとでね。」

 カバンからペンケースだけ取り出すと、夜流を呼んだ人のところまで行ってしまった。まったく怒ってない。夜流と連絡先を交換するためならなんだって我慢できる。僕は器が大きいから。

 食べ終わったゴミを捨てようとダストボックスに自分のゴミを投げいれる。夜流が使った割箸とか夜流が口をつけたペットボトルは捨てるなんてできない。そもそもゴミじゃない。いったん僕が預かるということで、自分のカバンにいれた。そうだ、家宝にしよう。

「…ゴミ、持って帰るの?」

 立ち去ろうとしたらおそらく見ていたであろう女子生徒に話しかけられる。僕は財布から一万円札を取り出して渡した。こういう人は口止め料さえ渡しておけば言いふらさないはずだ。

「お金、受け取れません…。」

「まだ足りないのか…?あと五千円で我慢してくれ。」

「そ、そうじゃなくて。ここにゴミ箱あるから捨てないのかなって。」

「なんだ…取られちゃうのかと。」

 いったん胸を撫で下ろし、一万円を返してもらった。

「鏡見くんだよね。私のこと知ってる?クラス一緒なんだけど。」

「人の名前覚えるの苦手で…知らない、かも。」

 夜流のことで頭いっぱいだしな。他の人なんてみんな同じに見えている。

「昇ー!聞いてよ、自分でやったとこほぼ間違えててさー。あ、話の途中だった?ごめん。」

 いつ戻ってきたのか、夜流が僕の肩に手をおいた。思っていたよりも小さくはない手。制服越しでも体温を感じる。

「あれ。昇と仲良かったっけ?」

「ううん、私から話しかけたんだ。」

「お前身長高いの好きって言ってたもんなー。」

 ちょっとマズくないか。このふたりなんでこんなに親しげなんだ?恋仲じゃないだろうな。いやいや、ただのクラスメイトと喋ってるだけだぞ。何をそんなに心配する必要がある。大丈夫だ、落ち着こう。

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