2人だけの秘密、交わる視線
午後の光が教室を柔らかく染める中、ボクは机に突っ伏していた。
目の前の窓から、夏海が微笑みながら手を振るのが見える。
「みおちゃん、今日も一緒に帰ろうよ」
その声を聞くだけで、胸が熱くなる。
でも、ボクの胸の奥にある期待とは裏腹に、夏海の“好き”は友情や憧れであって、恋愛のそれではないのが分かっている。
「うん、行こう」
ボクが答えると、夏海は嬉しそうに笑って、自然に隣に並ぶ。
歩幅を合わせて歩くその距離感に、心は甘くざわつく。
でも、夏海はただ、みおと一緒にいることが楽しいだけで、ボクの気持ちには気づいていない。
「ねぇ、みおちゃん、この前の公園、覚えてる?」
「うん……もちろん」
秘密にしていたあの場所。二人だけの特別な空間。
夏海はただ無邪気に楽しそうで、ボクは胸が締め付けられる。
「私、みおちゃんといる時間って、本当に楽しいんだ。なんか……安心するっていうか」
ボクは思わず小さく笑う。
“安心する”っていう言葉に、胸がぎゅっとなる。
両思いに見えるのに、実は片思い。
ボクだけが、夏海に恋する気持ちを抱えている。
雨上がりの街を歩きながら、ボクは心の中で小さく呟く。
──この想い、夏海には届かないんだ。
でも、目の前の彼女が笑っているだけで、ボクは満たされる。
夏海は恋愛の“Love”ではなく、友情や憧れの“好き”でボクを見ている。
それでも、ボクはその笑顔に救われて、甘くて切ない胸の痛みを感じる。
「みおちゃん、今日はここで少し休もうか」
ベンチに座る夏海は、傘をボクの隣に広げる。
小さな距離が、心臓にじわじわと効く。
触れないけど、触れたくなる。
でも触れられない。
夏海の“好き”はボクへの友情だから。
「うん……いいね」
ボクは頷き、心の中で小さく誓う。
──いつか、この気持ちをちゃんと伝えられる日が来るといい。
でも今日も、夏海の優しさと笑顔に甘えていよう。
雨上がりの空の下、ふたりだけの秘密と、片思いの想いが重なり合う。
甘くて切なくて、でも心地よい時間――ボクの胸は、今日も夏海でいっぱいだった。




