雨上がりの約束、揺れる距離
翌日、学校が終わると外はまだ雨の名残で濡れていた。
ボクは傘を握りしめ、約束の場所へ急ぐ。
心臓がやたらと高鳴っていて、自分でも少し恥ずかしかった。
「みおちゃん、待った?」
声に振り返ると、夏海が傘を差して立っていた。
少し濡れた髪が光って、思わず見惚れてしまう。
「ううん、ちょうど来たところ」
ボクがそう答えると、夏海はにっこり笑った。
「よかった。濡れちゃうと大変だから」
その言い方、優しいのにどこか甘くて、胸がぎゅっとなる。
両思いに見えるけど、やっぱりボクだけの片思い――この距離感が心地よくて、でも苦しい。
雨上がりの公園を歩きながら、夏海はふと立ち止まった。
「みおちゃん、足元気をつけて」
小さな気遣いだけど、ボクには特別に感じる。
夏海は自然にボクの傘を少し自分の方に傾けて、距離を縮める。
その瞬間、胸がドキドキして、心の中で小さく叫ぶ。
──好きだ……夏海が、すごく好きだ。
でも、口には出せない。
無自覚な彼女に告げても、意味がわからないまま終わってしまうかもしれない。
だから、今日もボクは黙って、ただ一緒に歩く。
「ねぇ、みおちゃん」
夏海が軽く肩を寄せてくる。
「明日もこの場所に来る?」
「うん……来るよ」
「ふふ、楽しみだな。私も待ってるから」
その声は甘くて、柔らかくて、ボクの胸をぎゅっと締め付ける。
自然に笑うだけで、心臓が跳ねる。
ベンチに座ると、夏海はボクの隣で小さく背伸びをして、空を見上げた。
「今日の空も、きれいだね」
「うん……本当に」
言葉少なに答えるボクの胸は、甘く切なくていっぱいだった。
一緒にいるだけで、こんなにも心が温かくなる。
でも、それと同じくらい、好きすぎて痛い気持ちもある。
「みおちゃん……私ね、みおちゃんといる時間が、すごく大事なの」
「……ボクも、同じ気持ちだよ」
思わず口に出すと、夏海はくすっと笑った。
その笑い声だけで、心の奥の甘さが一気に溢れそうになる。
雨上がりの空に、ふたりの影が並んで伸びていく。
手は触れ合っていないけど、距離は確かに近くて、胸に響く温もりがある。
「明日も……一緒に来てくれる?」
夏海の声は少し小さくて、でも真剣だ。
「うん……絶対だよ」
ボクの返事に、夏海は満足そうに頷き、微笑む。
その笑顔は、甘くて優しくて、片思いの切なさも、少しだけ和らぐ。
ふたりだけの秘密の時間。
雨上がりの空の下、ボクの胸は甘く締め付けられながらも、幸せでいっぱいだった。




