羽化した彼女は強く美しい蝶となる
割とバイオレンスな表現とクソゲス貴族がちょろっと出てきます。ざまぁ(過激め)済みですのでご安心ください(?)
とうとう奴らは現れた。傲岸不遜をそのままに、みすぼらしい道化になってやってきた。金も地位も名声も尊厳も、名前ですら棄てて、ボロボロになりながら隣の国であるここまで落ち延びてきた。元居た場所にあったものなんて全てくれてやる。だけど今ここで手に入れた、自分自身で手に入れたものだけは絶対に奪わせない。
だがそれでも奪おうというのなら。彼らの何もかも台無しになるまで叩き潰そう
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対峙したとき。奴隷人形だったころには決して口にすることがなかったであろう言葉が濁流となって飛び出す。軛が外れ、手枷が壊れ、檻は朽ちた。最早止めるものなどありはしない。見た目ばかりのなまくら短剣を構えた頭でっかちとクズ男相手に躊躇などあろうものか。
まずは頭でっかちに釘をさす。物理的に釘を刺してもよかったが、この工房の釘を使うのは忍びないのでその辺の石を拾い足元目掛けて指で弾き飛ばす。マトモにやっていれば官僚にもなれたろうに、今では頭の悪いモヤシ男だ。悪意には慣れていても殺意には慣れていない、一発で失禁し行動不能に。次は貴様だ元王太子
王族や貴族に産まれるということは茨の道である。己を律し、責務を背負い、弱音など吐くことは許されない強者として在り続けなければならない。怠ればたちまち淘汰され寿命よりもずっと早く死ぬ、それが高貴なる者の生き様だ。
この元王太子もそうだった。彼もまた彼女と同じく子どもの頃から虐待一歩手前の厳しい教育と鍛錬をこなし、高貴なものとしての仮面をかぶり本音を隠し、国を動かすにふさわしい存在であれと育てられてきた。これが本来の真っ当な上流階級の人間なのだが、元平民のナナシーノはそうではなかった。
ゲスヴィッチ家当主はナナシーノを引き取ったはいいものの貴族としての教育を施さずただただ甘やかして育てた。将来自分の都合のいい慰み者にするために。最低限の体裁を保つために彼はナナシーノを何も考えず貴族学校に入学させたが、結果この始末である。
王族の調査の結果騒乱の元凶と断定されたゲスヴィッチ家当主は、貴族の名をはく奪され貴族名鑑からも除名、そしてさらに去勢された上国外追放となった。そんな彼は現在彼を『慕う』女性たちの下で『生かされている』。思考と意思と『ついでに』手足を奪われ、彼女たちのストレス発散用の愛玩動物として
話は逸れたが元王太子を堕落の道に引きずり込んだのは間違いなくナナシーノだ。だが王太子たるものハニートラップや堕落など跳ね除けて当然になるように教育されている、即ちナナシーノに感化された時点でポットーデの王への道は閉ざされてしまったのだ。
だがこんなゴキブリを無理やり人間にしたようなゴミクズ以下の汚物でも悍ましいことに一時は自分の婚約者だったのだ。慈悲を以てシバき倒しておいた。嗤いながら。哀れな彼は泣き叫びながら、だが恐怖で気絶することも出来ず、顔面が判別不可能なほどにボコボコになってしまったが、まぁ些事だろう。ゲスは消えるべし慈悲はない。
その後カレンは数週間工房を休んで傷心旅行をしていた。傷心 (した原因を完膚なきまでに叩き潰すための復讐行脚)旅行である。
最早この世界で本気で姿を隠した彼女を見つけることが出来るものはほとんどいない。探知方法が確立された魔力探知をもってしても魔力を持たない彼女を捕捉出来ない上、彼女が体得した気配をほぼ完全に消す技術『圏境』により眼前に居ても高速移動と併用すれば一瞬で彼女を見失う。キヤのただの思い付きがカレンの押し込められていた才能を開花させてしまった。才能というより災能かと言うべきだろうか
汚物を国が誇る壁に標本にした後は実家に戻り家族使用人隔てなく意識を刈り取り四肢の関節を外して荒野の掘立小屋に放り込んでおく。素っ裸にするのは手間だし、きちゃないのでやらなかった。これを自分を陥れた貴族やそれに関わった者の全員に施すこと数日。カレンの故郷の国は未曽有の大混乱に陥ったが、カレンの気はいくらか晴れた。乙女(天災)を怒らす方が悪いのだ。そう思いたい
そうして彼女は己の手で体得した技術を以て国一つを傾けた。まぁ元々傾いていた天秤を思い切り力業で平行にしたので、傾けたかと言われればそうでもないような気もするが。その後を見る限り上手にやっているようだし。
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旅行から帰った時、何事もなかったかのように工房メンバーはおかえりと受け入れてくれた。工房メンバーは今回の旅行を『やれ!やれ!やっちまえ!』とカレンの背中を推してくれた。止めろよ。ぼかして休暇の申請をしたものの、キヤも薄々と感づいているだろう。いるよね? 大丈夫だよね?
ともあれ、工房長に帰還の挨拶をしに工房に入る。いつも通りの場所でいつも通りの格好でキヤは作業していた。こちらに気付いたキヤはへらっとした微笑みを浮かべて軽く手を振ってくる
「ん、カレン! おかえり~」
「はい、ただいま戻りました!」
「あーその、なんだ。アレだ、お疲れさん。やっとゆっくり暮らせるな」
手袋を脱ぎ、少々汗で湿った手の甲がカレンの頭を優しく撫ぜる。次の瞬間カレンの思いは爆ぜ、思い切りキヤに抱き着いた。キヤも一瞬慌てたものの、少しで落ち着き頭を撫ぜるのを続けた。
余談だが、この光景を他のメンバー全員に見られており二人が数日マトモに顔を合わせることが難しくなったことを一応記しておく。
割とガチでキレさせたらヤバイ系ヒロインことウチのカレンです。カレンが本気を出したらどうなるかって? 悪は滅びキヤは死ぬ。ただしキヤの死因は尊死ですが




