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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第五部 超古代の息吹に新たなる姿を
98/199

無力な幼虫だった私は蛹(サナギ)となる

カレンの回想です。貴族令嬢というカゴの中の幼虫だった彼女






 懐かしい夢を見た。もう見ることはないと思っていた過去の夢だ。



「エリアス・フォン・ラインツェヴェルグ!! 貴様には国家反逆や犯罪の嫌疑がかけられている!! よって貴様との婚約も破棄としこの国からも追放とする!!」



 壇上でこれでもかというドヤ顔で嗤う婚約者。いや、もう元婚約者か。隣には見慣れない女を侍らせ、周囲には同じようなドヤ顔をした取り巻きを引き連れている。味方はおらず、たった一人晒し物にされ捕らえられ、有無を言わさず国境にまたがる魔物が徘徊する巨大な森に追放された。無我夢中で彷徨った。生きたいと。神はまだ自分を見捨ててはいなかった。白馬の王子様が現れたのだ。



 白馬ではなく鋼の軍馬に乗っていたのは、その、ちょっとした見解の相違とかそういうやつだろう。いや、ゴブリンを輪切りにして物騒なことを言っていたので鋼の軍馬に跨った魔王だったのだろうか? 見解の相違で誤魔化せるレベルではなくなってしまった。だが自分にとっての救世主だったのはブレていないので大丈夫だろう。多分。





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ






 気が付けば見慣れぬ天井を見上げていた。傍に控えていた女の子が洗面器とコップに入った水を手渡してくれ、それで口を濯ぐ。飲まず食わずで逃げ続けてきて口は乾ききっており、そこに齎された水は砂漠のオアシスのようなものだった。どうやら助かったらしい。渡されたすり潰された野菜のスープを飲むと、体に活力が戻ってくる。もう礼儀作法など忘れて無我夢中でスプーンを動かしスープを飲み続ける。人と食事の暖かさで無意識に涙を流しながら。




次の日、改めて助けてくれた人に挨拶に行く。朧げに助けられた時の記憶がよみがえり、なんだか物騒なことを言っていたような気がして会うのが少し怖かった。そんな心配は杞憂だったのだけれど



「お、目ェ覚めたんだ。おざっす」



 おずおずと声をかけるとニカっと笑いながらごく気軽に手を上げ答えてくれた、頭にタオルを巻いた青年。コウタ・キヤ。まだ二十にもいかない年で自分の工房を持ち、この国の貴族や大商会をパトロンに持つという信じられない経歴の持ち主。現在彼は何やら彫り物をしているようだ。



「あの、助けていただいてありがとうございます! なんとお礼をしたらいいか……」


「ん、いえいえ。礼は受け取っとくけど、一番はあなたの幸運が重なった結果だよ。色々と勝手が違うだろうしゆっくり馴染んでいってくンなー」



 そう言って再び手元の作業に戻る彼。どうやら事情アリなことに感づいてるらしい。深く聞いてこなかったので、今はその優しさに甘えさせてもらう。ところで彼は何やら不思議な羽のついた棒をいじっている。



「あの、何を作られてるんですか?」


「あぁ、さっちゃん……君を世話してたツインテールの娘ね。が、使う調理器具だよ。ハンドミキサーって言うんだけど。前に作ったやつは有り物でワリとザツに作っててさ、いい加減ちゃんとした形に仕上げてほしいって言われてね。作業的にも時間が空きだしたから改良してるとこなんよ」



 謎の丸っこい箱に先ほどの棒を差し込み固定、フタを閉めるとそれは見たこともないものになった。これが本当に調理器具なのだろうか?



「この箱ン中に回転の魔石が入っててね、魔力を流すと高速で回転するンさ。後で使ってるトコ見せてもらいな、けっこうおもしろいと思うぞー」



 その後は驚きの連続だった。失礼ながら奇妙奇天烈な道具……機械を使用し作られていくこれまた奇妙奇天烈な生活用品、冒険者のための道具、そしてサツキ・イガラシの手によって作られていく食べたこともない美味しい食事やお菓子。


 平民の生活に明るくない私ですらそれが尋常でないことがわかる。人力では数人集まってやっと持ち上げられる重い馬車をたった一人で動かせるようになるジャッキ、巨木を数時間かからず倒すことのできるチェーンソー、魔石を連動させ強烈な蒸気で相手を無力化させる蒸気銃、未完成だとキヤは言うが完成すれば馬無しで高速移動するバイク。なるほど、これほど革命的なものを次々開発できるなら十代で自分の工房を立ち上げることが出来るのも納得だ。この工房から始まっていくであろう数々の革命に、ほんの少しワクワクしてしまった。





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 とある日、大口のお客様であるギルバが工房を訪ねてきた。この人もコウヤ・キヤの道具に助けてもらった口らしい。一緒に全員で食事することになったときにギルバは言った。




「新人のその雰囲気、どうせ面倒ごとの果てにこの工房に流れ着いたんだろう。詳しくは聞かんが、姿を隠せる程度で面倒ごとの元凶に対抗できるのか?」



 穏やかな日常に浸っていたせいで忘れかけていた危機感が、背を這いあがるように蘇ってきた。




 貴族時代には魔力ゼロということで虐げられ、家同士の繋がりのために半ば売られるようにして婚約させられ、挙句何もかもを奪われ追放された。流れ着いた結果とはいえやっと手に入れた平穏。過去を忘れかけていた己を心の中で叱責し、彼女は戦う力を求めた。


 彼と、彼らと過ごす日常を護るために

なんでかカレン編が二部構成になっている、なんでだろう?

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