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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第四部 君が立ち上がるために差し伸べる手
76/199

復讐は変革を齎(もたら)し、そして彼女は飛び立った

パソコン治ったのでようやく復帰できました、ありがとうございます(出費が痛い)


カレン編ざまぁ回です。その後のエスパランシア公国のお話


 隣国 エスパランシア公国、王城にて。辺りは薄暗く巡回の兵士は仕事熱心に夜警をしていた。王城を囲む堅牢な石壁は生半可な攻撃では揺るがない、エスパランシア公国王城のシンボルであり誇りでもある。


 兵士は異常がないのを確認し、帰ろうと踵を返したその時だった。ドゴォン!!! と地響きがするほどの轟音が夕闇に響いた。不意を突かれたものの瞬時に切り替え、手にした槍を構えつつ辺りを見回す。と、警備の帰り道の王城の壁に異常事態があった。



 堅牢な石壁に『縫い付けられた四人の人間』がいたのだ。それぞれ頭を下にして十字架を逆向きにしたような格好をし、下着以外ほぼなにも身に着けていないような格好で。手足をコの字形をした杭で壁に固定され、全員の顔面が判別できないほどボコボコにされている。



「て、敵襲――――!!!!!」



 夕闇のエスパランシア公国は一瞬にして大騒動となった。混乱の冷めやらぬ朝、エスパランシア王が執務室に頭を抱えながら入った時に昨日にはなかった覚えのない書類が執務机に山と積まれていた。王は胃潰瘍で倒れた。


 そして一週間後、公国に蔓延る悪徳貴族や違法な取引で私腹を肥やす商人が一斉摘発された。慢性的な胃潰瘍を発症した王は腹部を撫でつけながら、それでも不遜に笑う。



「まだまだ王座は明け渡すことは出来そうにない、愚息の件もあるしな。彼女なりの復讐なのかもしれないが、あの娘がここまでやったのだ。できうる限りの贖罪をして余は王座から下りよう。やはり、女とは怒らせてはならんな、息子たちに妻となる者たちには優しく接するように教え込んでおこう」





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「まさかこんなことに……」



 エスパランシア公国公爵、ダメダディ・フォン・ラインツェヴェルグは届けられた手紙を見て頭を抱えた。手紙の内容とは



『拝啓、ダメダディ・フォン。ラインツェヴェルグ様。近いうちに以前あなたにお借りしたもの全てをお返しに参上いたします。あなたが棄てた娘、エリアス・フォン・ラインツェヴェルグ』



 もう死んだはずの娘から届いた手紙にダメダディは震えた。娘の筆跡で間違いなく、そして封筒に同封されていた長い金髪にはあるはずの魔力がない。通常魔力を持つ人間の髪は抜け落ちても微量に魔力が残った状態で残る。この世界で魔力無しの人間はほぼ居らず、魔力がないのがエリアス本人のものである何よりの証拠だ。



 様々な冤罪をかぶせて魔物が徘徊する危険な森へと追放したダメダディは焦る。この男、自分のした後ろめたいことの罪も纏めてエリアスに押し付けて追放したのだ。あのナナシーノ達と競合して。



「私は悪くない、悪いのは全てあの元王太子どもだ……」



 後ろ暗いことなど色々なことが明るみになりかけて、もちろんダメダディも罪に問われたが色々なツテを利用しどうにか誤魔化した。が、あれ以来社交界ではいい顔はされず針の筵に居るような状態に陥っていた。火消しが終わりどうにか復権しようと画策していたところでこの手紙だ、最早ダメダディの胃袋はハチの巣のように穴だらけなっている。



「恐らくエリアスは近いうちに復讐に来るだろう……その前に屋敷に厳重な警備を……」



 刹那、由緒正しきラインツェヴェルグ公爵の屋敷が全壊した。跡形残さずペッシャンコに。屋敷にいた人間が気が付いたときには遠く離れた地で見覚えのないあばら家にぎゅうぎゅう詰めで押し込まれていた。四肢の関節を外された状態で。押し込まれていた者たちは口を揃えてこう言ったという



「居なくなったはずのお嬢様の声が聞こえた」



と。そして彼らがエスパランシア公国王都へ戻った時には自分たちの立場は平民に成り果てており全員絶望したのは余談だ




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ




深夜エスパランシア公国国境、月の照らす見通しのいい草原に男は立っていた。フード付きの外套に身を包み表情はうかがい知れないが、その異様な雰囲気は男が只者ではないことがわかる。男はいきなり小さな鉄のトゲを虚空に凄まじい勢いで投げつけた。


 当りどころ次第では人を殺せそうな勢いで投げつけられたトゲは突如空中で止まる。男が瞬きをし目を開けた瞬間、そこには黒いアオザイを着た少女が鉄のトゲを掴んで立っていた。この国の名前を棄てた少女、カレンである



「王家の影、ですか。その様子、恐らく王を直接守る影の頭領『絶影』でしょう? 王の傍からほとんど動くことのないあなたほどの影が、どうしてここに? やはり私を殺しにですか?」


「いえ。手塩にかけて育てた手練れの部下の監視をすり抜ける猛者に興味がわきまして。まさか貴女様だったとは」


「あら、私を知っていたのですね」


「王は貴女様を気にかけておられました。隣国との会談で国を離れていなければあの男の愚行など放っておきましょうか」


「子育ての不始末を私のような出来の悪いはねっ帰りに押し付けるのは愚策ですよ」


「そうですな」



 ふと男は月を見上げる。そしてため息一つこぼすとカレンへ向き直り頭を下げた



「突然の無礼をお許しください。これからこの国がどうなるかはわかりませんが、この国からあなたの幸福を祈っております」


「……気持ちだけ頂いておきます」



 たった一言。カレンはそれだけ呟いて草原から姿を消した。そしてほどなくして男も姿を消し、草原には一陣の風と月明かりだけがあった。






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 彼等影の一族は貴族のように名字を持たない、どちらかといえば平民寄りの家系だ。それどころか一定の名前すら持たずに任務によって名前はコロコロ変わる。影の一族とはそういうものなのだ。公国のまつりごとは上層部による会合で決められているが、その円卓に一つだけ空席がある。そこには居ないものの、だがしかし確かに存在する一族のための空席だ。


 彼らは王家や国が道を踏み外しそうになった時にその空席に座り過ちを正すために存在する。だが今回の件は彼らと言う存在がありながらも止められなかった、いわば影の一族始まって以来の大恥だ。一族を裏切り責務を果たせず、あの尻軽に尻尾を振ったものは既に粛清された。彼は命尽きるその時までエスパランシアのために、あらゆる毒薬や拷問技術などの後ろ暗い人体実験用の検体として扱われることになった。


 影の世界で生きる者とて情はある。彼女を助けられなかった一族は己を恥じ、彼女が幸せに逞しく生きていることを知った。もうこれ以上彼女のような不幸な者が現れないように彼らは奮起する。


 より良い公国の未来を作っていたであろう彼女の、別の道の先にある幸福を祈りながら

私がガチでざまぁするとゴア表現待ったなしなので多少ボカしてあります(自重


今回長い間お休みしちゃったのでいずれなんかお詫びに短編でも上げます。丁度GWだし

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