女性とは、強(シタタ)かで、強(つよ)い
時間が取れずキリのいいとこまでで上げておきます
時間は少し巻き戻って、キヤと元隣国の貴族たちが邂逅したとき。扉の前で仁王立ちしていたサツキが戻ってきたのを察してカレンたちは立ち上がる。
「……来たんですね、奴らが」
扉越しに聞こえてくる不愉快にも懐かしい声がカレンの心をかき乱す。奴らの声だけなら何も思わないのだが、問題はそこに大切な人の声が混じっていることだ。それも今まで聞いたことないくらいの感情が込められた怒声。確実に血を見る展開になるだろう。多勢に無勢、早く助けに行かなければならない
「カレンはここにいて。私たちが出るわ。マーソウ」
「わかってる」
「ゴルドさんは……」
「平気よ、イケるわ。久しぶりに血沸き肉躍るわねぇ、ウフフ」
「ちょっと待ってください、なぜですか?!」
カレンは無視して出る準備を始めるサツキ達。置いてきぼりを食らいそうなカレンは思わず声を大きくしてしまう。だが心ではわかっているのだ。彼等が優しいからこそ自分を置いていこうとしていることを
「だって……今のカレン、あいつらを容赦なくブチ殺しちゃいそうで……友だちを殺人犯にはしたくないかなって」
「工房前が惨劇になるのは、な……一応客商売だし」
「大きい声じゃ言えないけど、高貴なご身分の人も来るから……ネ? 工房の前で殺人事件なんて、ご近所さんとしてもね?」
「そっちですか?!」
大体合っている。現在進行形で奴らはカレンの大切な人をヒドい目に合わせているのだ、手加減出来る気がしない。世界一汚い赤い花火が地面で上がるだろう
「お願いします、私も出ます! ちゃんと殺さずに手加減しますから!!」
「どのくらいまでならいけると思ってる?」
「…………両手足の関節の可動域を増やそうかと」
「ウーンダメね」
「ダメですか?!」
と、外からキヤがえずく声がし、サツキ達は窓から外を見る。カレンの目はあの令嬢に釘付けとなった。また彼女か。再び彼女はカレンの大切なものを簒奪しようとしているのか。カレンの脳が、そしてメンバーの脳が一気に氷点下まで下がった。もはや誰も止める者はいなくなっていた、
キヤが外から扉にロックをかけていたが、そんなものは彼女らの障害にはなりえない。真っ二つになり無残な姿となった扉が虚し気にパタンと倒れた。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「エリアス! やはり俺の元に帰ってくるのだな!! だが高貴の象徴たる長い金髪を無くしてしまっているのはマズい、戻り次第カツラ職人を」
「寝言は地獄の底で言ってもらえませんか? 高貴のカケラもない、どこかの没落した落ちぶれ元貴族様?」
一切温度のないカレンの絶対零度の視線と態度に、思わずポットーデは冷や汗を垂らす。彼の中ではエリアスことカレンは自分に絶対的に惚れており、自分の言うことは絶対服従する都合のいい女だったはずなのだ。だからこそこんなアホ全開の作戦が成功すると妄想していたのだが
「な、貴様、俺を忘れたのか?! 幼少のころから婚約者として共に過ごしてきたではないか!!」
「人違いです。エリアスという奴隷人形は死んだのですよ。私はカレン、カレン・フェアリス。コウタ・キヤさんの下で働くただの従業員です」
「おのれ、まだシラを切るか!! ならば無理やり連れ帰るのみだ!! いくぞガリヴェン!!」
懐に隠していたナイフを取り出し、名前の判明したヒョロガリの男と共にジリジリとカレンに近寄るポットーデ。カレンはゆったりとした仕草でしゃがみ、転がっていた石を拾い掌で転がす
「残念ながら私は隣国なんて狭苦しい価値観に縛られたカビ臭くホコリ塗れの王家に嫁入りするなどまっぴらごめんです。店の前に悪臭が漂うので早々に痛い目にあって帰ってくれませんか? 今なら物理的に大出血サービスも付いてますよ? 無論出血するのは貴方方ですが」
はっちゃけて以降カレンは物凄い毒舌を身に着けていた。身に着けたというか、一応以前から心の奥底の隅に置いてあった程度だったのだが。貴族という身分上悪口は貴族言葉として大分オブラートに包んだ形のものだったのが、平民になったことでその極厚オブラートが溶け消えてしまい直球ド真ん中の殺人的な暴言となったのだ
「女のくせに生意気な……! 行け、ガリヴェン!!」
「は! おいエリアス君、今なら王太子様は寛大なお心で許すだr」
「ゴタクはいいのでとっととかかって来てもらえます? 時間のムダなんで。頭でっかちの割にその頭の中にはスポンジしか詰まってないんですか?」
「貴様、何様のt (ズドォン!!!!) ………………ぇ?」
激昂しようとしたガリヴェンの足元が爆発した。カレンがデコピンの要領で射出した石が直撃したのである。
「次は当てます。安心してください、抵抗せず帰るのであれば殺しはしません。ただその股座の粗末なモノを踏み躙り潰します」
ガリヴェン君、チェックメイトである。リィンという音を伴って突きつけられた槍の刃先にガリヴェンは腰を抜かして地面に座り込んでしまった。ついでに股間から生暖かい液体を漏らしながら。戦力が減ってしまったポットーデが焦りから激昂する
「貴様エリアス!!!」
「人違いと何度言えば……いえ、脳みそでなく汚物が詰まっていればそういう都合のいい考えに固執するのは仕方ないことなのかもしれませんね。いっそ生まれる前からやり直されてみては?」
「殺す!!!」
懐に忍ばせていたのか、やたら豪奢なナイフを振りかざしてカレンに突きつけるポットーデ。それを見たカレンは嗤った。大義名分を手に入れたからだ
「抜きましたね? 刃を。殺すということは殺される覚悟があるということ。もはやあなたに逃げ場はありませんが、よろしいですね?」
「ほざけ!!」
ナイフだというのにまるで剣を持つように両手で持ち大きく振り上げて迫るポットーデだが、走り出した瞬間カレンの姿が消えた。
「どこへ行った?! 薄汚い売女め!! 王家に伝わるこの件でその汚らしい顔の皮を剥いで切り刻んでくれよう!!」
「か弱い乙女を前に怖いお人。どうせそのナイフも勝手に持ち出してそのまま簒奪したものでしょうに」
右耳のすぐ近くで聞こえたカレンの声にポットーデは驚きつつもナイフを振るうが、一閃は虚空を切り裂くばかり。ただ風がざわざわと辺りを吹き抜ける。まるでそこにはポットーデ以外誰も居ないかのように
「あなたはどうしようもなく残念な愚物ですが、それでも私の婚約者だった人。せめて命だけはとりません。それ以外を置いていってもらいます」
そしてポットーデの意識は暗転した。
短いですが追記したものを上げる予定なのでもうちょい待っててね
PS キリのいいとこまで追記しました。次回本格的ざまぁです!




