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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第四部 君が立ち上がるために差し伸べる手
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友のために怒れるか


「人間にしては固いな。スキル持ちか?」


「その通り!! 俺様は『タフネス』、そして『硬化』のスキルを持っている! 平民である貴様の攻撃など効かん!! というかお前何なんだ?! 執拗に急所ばかり狙ってきおって!! 痛いものは痛いんだぞ!!」


「貴様がキヤにしたことと同じことをしてるだけだ。小物め」




 マーソウが剣士ことコケドーシ・ザコナンデスと対峙している。先ほどからマーソウが路地裏で鍛えたケンカ殺法でコケドーシの目や喉、鳩尾などを狙って執拗に攻撃しているもののあまり効果は無いようだった。効果があまりないだけで痛みは感じている分地獄かもしれない


 タフネスと硬化は名の通り耐久力を上げるスキルで、この二つのスキルの相乗効果でコケドーシはほぼ鉄壁と言っていいほどの防御力を持っている。生半可な攻撃では彼に通用しないだろう。





「俺様にそんな軽い打撃は通用しない!!」


「そいつはいいことを聞いた。正直コイツは人間相手に使うような品物じゃないんだが、モンスター並みの耐久を持つお前になら使ってもいいだろう」



 マーソウは口元だけを歪ませて右腕と左脚の武装を魔力を流して起動した。



 破砕突杭パイルハンマー。マーソウの右腕と左脚に付けられたその異様な武装は、仕込まれた魔石に魔力を流すと一メートルほどの金属杭を推進の魔石を使って撃ち出し攻撃する武器だ。


 いや、これを武器と呼ぶにはあまりにも非効率的で取り回しに欠ける。精々が岩盤を砕くのに少々便利程度か。だが彼等キヤとマーソウはそう思わなかった。彼らは逆に考えたのだ。ただの一発。その一発を以てケリを付ければいいのだと。こいつら頭おかしい。誰だってそう思う。俺もそう思う。


 推進の魔石はもちろんマーソウが合成し強力なものになっており、全出力の時の推力は一瞬とはいえ音速に届かん勢いだ(過大評価)。その腕が武器と一緒に飛んで行きかねない、早すぎる速度を重い金属の杭で押さえつけることでどうにかギリギリ取り回しが可能となった。


 今更だがマーソウにもスキルはある。工房に来る前に、マーシュンを養うためにひどい労働環境に身を置き、そこで身に着けた『剛力』と『闘争心』だ。剛力は名の通り膂力を上げる初歩的な身体強化スキルで、闘争心は心が折れない限り何度でも立ち上がり戦う耐久強化スキル。泥臭く、決して優美なものではない、だがどうしようもなく美しい戦い方。そんな彼にこの尖り切った性能のこの武器パイルハンマーは奇跡の相性の良さを見せた。



 ガキュン、と飛び出していた鉄杭が後ろに下がる。待機、突出の動作どちらにも推進の魔石が使われ、鉄杭を待機位置まで移動するのは通常の魔石だ。どちらの魔石も最低限の魔力で起動し反応するようにマーソウが調整しながら合成した魔石だ。突出の魔石は流し込む魔力で威力を調整できるようになっており、その繊細な魔力操作が出来るのはマーソウくらいだろう。やはりというか、ピーキーが過ぎる



「なんだ? それは武器か?」


「前からお高く留まった騎士サマを思い切りブン殴りたいと思っていたのは言ったな。そういうことだ。よくも俺の、俺たち兄妹の恩人を。俺の友達ダチを!!! あんな目に合わせてくれたな!!! テメェらマトモに死ねると思うなよ?」



 それはあまり大声を上げないマーソウの、慟哭にも近い叫びだった。誰にも頼れず、信用も出来ず、妹しかいなかった彼の世界に新たな風を吹き込み、そして肩を貸してくれた友。どれだけかかっても返しきれない恩。出来損ないの自分にでも出来ること、例えキヤが糾弾されようとキヤと共に友として歩む。上流階級に叩き込むこの一撃はその覚悟の現れだ。



「ほざけ!! 一匹平民が死んだところで……」


「もう貴様は喋るな」



 右腕を大きく引き、左脚を前にしつつも左脚のパイルの先端は後方へ向いている。満漢の思いを右腕のパイルハンマーに込めて、照準を合わせる



超速突進ロケットダッシュ破砕突杭パイルディストラクション



 バキュ、と何かが激しく砕け散る音が響く。それはマーソウの左脚があった地面が砕けた音だ。同時にコケドーシが吹き飛ばされ壁に叩きつけられた音が響いた。




 瞬殺だった。左脚のパイルハンマーを起動の反動で接近、右腕のパイルハンマーをコケドーシ直撃寸前に起動、見事一番威力の高い所でコケドーシに一撃を叩き込んだのだ。マーソウが加減せず威力を全力で奮っていたら、確実にコケドーシの腹部には大穴が空いていただろう。コケドーシが叩きつけられた壁は僅かに人型に凹み、パラパラとホコリが落ちてきている。それを確認するとマーソウは膝をついた。



「ッ、チッ……」



 加減したとはいえ尋常ではない衝撃が右腕と左脚を襲ったのだ、マーソウは右腕と左脚の筋肉を傷めてしまった。もうこの場では戦うことは出来ないだろう。留め金を外しパイルハンマーを外すと、大きな音を立ててハンマーは地面に転がった。ガゴン、ガゴンというおおよそ武器が出すような音ではない音が響く。



「要改良、だな。だが悪くない」



 マーソウは笑う。いけ好かない騎士崩れに拳を思い切り叩き込んだのだ。マーソウは壁に埋まり気絶したコケドーシに向けて中指をたてる



「ざまぁみやがれ、騎士崩れ」






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「ヌ゛ゥゥゥゥゥエオリャァァァァァァァァ!!!!!!」



地震のような腹の底から響く大声を上げてゴルドワーフが吠える。同時に両手に引っ掴んでいた正気を失った一般人を、襲い来る他の一般人に投げつける。もちろん加減はしているが、数十キロの人間が飛んで来たらただでは済まない。正気を失った一般人には悪いがしばらく動けなくなってもらう必要があった。



「ハァ、ハァ、ハァ……寄る年には勝てないのかしらね?」



 覇気は衰えていないものの、体の反応がどうしても遅れてしまう。数十人の人間を相手にするのは六十の大台に乗ったゴルドワーフには少々荷が重かった



「ゴルドさんお待たせ!」



 ナナシーノを仕留めたサツキがゴルドワーフの援護に入った。



「サツキちゃん、そっちは終わったのね? ちょっと手を貸してくれないかしら! オラァ!!!」


「了解、おこれ、狐火!」



 サツキが再び蒼白い炎を纏い狐娘モードに変身する。そして右手の掌を空高く掲げるとそこに巨大な蒼白い火球が瞬時に出来上がる



「燃え広がること燎原の火の如し、汝らが心に寄生せし異物を焼き尽くす!! 『浄化の大火』!!」



 正気を失った人に向けて何の躊躇いもなく巨大火球を投げつけるサツキ。前話にも書いたがこの炎は物理的ダメージは一切ない、物理的なもの以外でサツキが焼き尽くしたいと思ったものを消滅させる炎だ。狂気を植え付けられた人間の狂気の部分だけを狙って焼き尽くす、平たく言えば精神的状態異常を強制的に終了させる技にもなるのだ。



 炎に焼かれた人は倒れ気絶したものの、命に別状はない。被害を最低限に抑えることが出来たのだ



「ふぅ……ありがとうサツキちゃん、アタシ一人じゃキツかったわ」


「むしろ私が来るまで持ちこたえたゴルドさんスゴすぎるよ……」


「ウフフ、鍛え方が違うのよ」



 ゴルドワーフは満面の笑みでサイドチェストをキメた。


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