悪意、襲来 前編
数日後、キヤがギルガメスと彼のオトモと一緒にバイクの教習から王都に戻ってきた時だった。工房に近づくとなにやら人だかりが出来ている。キヤとギルガメスは顔を見合わせ、「あーこれなんかやばいな」と言う表情を浮かべる
「とりあえず俺は行きますけど、ギルガメスさんは帰って執務してくださいね」
「どうしてもダメか?」
「ダメですね、王族が下町うろついてるのが外聞が悪すぎるので」
心底不服そうなギルガメスをオトモさんに預けてキヤは人だかりに入り込んでいく。すると嫌な予感が的中してしまった。妙に薄汚れた男女の集団が工房の前で傲岸不遜にたむろしていたのだ。
帯剣しているものもおり、ただ事では済まされない。この国では武器を持ったものは許可のある場所(武器屋の試し場や騎士団の訓練場)以外では入国する際に武器に布を巻くなどすることが義務付けられている。入国する際には配布される布を巻き終わらなければ入国できないほどなのだが……
工房の扉の前でサツキが不快そうな表情を隠そうともせず仁王立ちしている。サツキの前に立ち、アイコンタクトでサツキを中に下がらせると今度はキヤがドアの前に腕を組み仁王立ちした。
「すんません、お客さんですか? 残念ながらウチは小売りは別の商会に委託しておりまして、商品の購入はそちらをご利用ください」
「なんだ平民。ここの主か? ここにエリアスが居るのはわかっている、早く我々に差し出せ」
「HAHAHAHA!!」
「おぉ、わかってくれるな! ハハハハハ!!!」
「ちょっと何言ってるかわかんないんで帰ってもらっても? お客様じゃないなら営業妨害なんで」
「貴様っ!!」
ハイキヤコイツキライ。満面の笑みで拒絶するキヤ。カレンをまるでモノのように扱い、かつ礼節もへったくれもない態度、自分たちが絶対と信じてやまないその救えない心証、執拗なまでの身分差別。オンディス侯爵の高貴な貴族オーラやギルガメスの圧倒的王様オーラで慣らしていたせいか、キヤは少々の偉い人や貴族相手では怯まない心を手に入れていた。
「貴様! 平民の分際で我らに逆らうのか!」
「ケガをしないうちにいうことを聞いたほうがいいと思いますがね」
「俺たちが大人しくしている間にいうことを聞いたほうがいいと思うぞ? ン?」
なんかイキった態度しているの男が三人、そしてその横にか弱い雰囲気を醸し出しつつ表情はゲッスいのが隠しきれていない女一人。おそらく黒幕はこの女なのだろう、キヤは心の中で男女平等パンチの準備を始めた。
「まずこういうのは自己紹介からでしょうよ、貴族ってのは礼節を重んじる人たちなのでは? エリアスって人がどんな人かはわかりませんけど、ヒトをモノ扱いするのは許されざるですよ? そこんとこわかってます?」
「余はエスパランシア公国王太子、ポットーデ・オワリデヴァンである!! 平民よ、平伏せよ!!」
「エスパランシア公国ってウチの隣の国ですよね? こういう国家間の訪問ってもっと大掛かりな物でしょ? ソッチの護衛も少なすぎるしなによりウチの国から大使みたいな人が応対するはずだ、でも要人の証明であるウチの国の紋章も、ソッチの国の紋章も付けた人は見受けられない。こうならないように止めるはずだ。それにアンタたちの格好……貴族にしては汚れすぎてる。つまりアンタたちは貴族から平民に落ちたやつらだ、以上QED証明完了」
真顔でキヤは正論をガトリングのように乱射するが、常識を知らない存在に正論は通じない。だが全く効かなかったわけではなく、青筋を立てるくらいには腹を立てたようだ。その中でも短気そうな帯剣した男が怒りを隠そうともせずキヤに迫る。しかも手は剣の柄を握り今にも抜剣しそうだ
「おいテメェふざけんなよ?! 大人しくいうこと聞かねぇと切り殺すぞ!」
「この国じゃ貴族だろうが平民だろうが暴力振るった時点で犯罪だ、正当防衛以外はな。ブタ箱に行きたいなら好きにしろよ、もちろん俺は抵抗するぜ? コイツでな」
キヤが背負っていた蒸気銃を抜き放ち、グリップを捻り魔石を活性化させる。すると今まで黙っていた女がしゃしゃり出てきて涙目でキヤに迫る
「やめてください! お願いします、あなたがあの女を引き渡してくれればこちらも暴力を振るわずに済むんです。だから大人しくポットーデ様のいうことを聞いてください!」
「居もしない人を出せとか訳わかんないですね、知ってました? 他人の家を許可なく家探しするのは王様だろうと勇者だろうと許されないんですよ? そういうヒトをどういうか知ってますか? ド・ロ・ボ・ウ、って言うんですよ? 強盗って言ってもいいですね。いや、アンタらの場合は人さらいのほうが正しいか」
「ヒドい! 私はただ争いたくないだけなのに!!」
「ヒデェのはアンタの頭だろうが、お前ホント現実見えてないな。その様子じゃ今まで一方的に奪い取るばっかりの人生だったんだろ? そりゃこんなのになるわな。ともかく、痛くもねぇハラを探られんのはゴメンだ。人を探してるなら王都の騎士団でも尋ねるんだな」
にべもないキヤについにキレた短気そうな剣士は剣を引き抜きキヤに振り下ろす
「死ね、平民風情が!!!!」
「やったな? やっちまったな? やっちまったなぁお前? だったら抵抗させてもらうぜ、単細胞」
蒸気銃で剣を受け止めながらキヤは押し込めていた怒りを爆発させた
書いててめちゃくちゃハラ立ってきた




