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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第四部 君が立ち上がるために差し伸べる手
71/199

悪意、襲来 後編

前編後編で終わらなくてごめんなさい


PS キリ悪くなっちゃったのでタイトル変わりました








「平民風情が!!」


「さっきから同じことばっか言いやがって語彙力はどうしたよ貴族様よぉ!?」



 男三人相手にキヤは蒸気銃を巧みに操り善戦していた。剣士の切りかかりを銃身でいなし壁へとぶつけ、剣を振り回しながら飛びかかってくる自称王太子に蒸気を吹きつけ牽制し、ただ飛びかかってくる一番影の薄かったヒョロガリをヤクザキックで蹴り飛ばす。


 工房の壁を背にしているのでキヤは前方一八〇度を警戒していればいい。一対多数の護身術はギルバや多少・・の経験のあるゴルドワーフに立ち回りを教えてもらった。この三人の中で一番警戒すべきは剣士だ。彼は隣国では軍務大臣の息子で軍の入隊を目指して訓練していたので戦い方をある程度知っている。サボり気味だったせいで実力は落ちているものの、この中では一番油断のできない存在だ。



  全員を一旦弾き飛ばして蒸気銃を構えつつキヤはふと思う。この剣士はどうやって剣をこの王都に持ち込んだ?


 前述したとおり、この王都に武器を持ち込むには手続きと手順が必要となる。だが剣士の持っていた剣は鞘に入ってはいたが布を巻いていなかった。彼の件はどこに隠されていた? そしてこの人だかりなのに誰も一言も発さない。先ほどから聞こえてくるのはアホ男三人の声ばかり。



 その時、ヒュ、と風を切る音が聞こえた。刹那、パリンとガラスが割れる音が響くとキヤに強烈な立ち眩みが起こる。強烈な刺激臭が鼻に突き、ちゃんと立っていられない。一番きつい風邪をひいたときのような眩暈がキヤの平行感覚を容赦なくかき乱す。思わず膝をつき、胃の中のものを戻してしまった。



 盲点だった。女だからと言って戦えないなんて誰が言った?



「ゴメンなさい、でもポットーデ様のいうことを聞かないあなたが悪いんですよ?」



 手に小さなガラスの小瓶を持ちながら彼女は嗤う。彼女の持つスキルは「アイテムボックス」。自分しか使えない専用の収納空間にモノを収納しておけるスキルだ。彼女はそこに強烈な幻覚剤を仕込んでいたのだろう、ちなみに彼女は幻覚剤調合のスキルも持っていた。なんともピーキーすぎるが、彼女の性格とこの二つのスキルの噛み合いが良すぎて、誇張無しで彼女がいるだけで国が傾くだろう。


 王都に侵入するときも衛兵に幻覚剤を使ったのだろう、もちろんこの野次馬たちにも。



「がっ、ゲェ……て、めぇ」


「わたしだってこんなことしたくないんです! でもあなたがあの女を出さないから……こうするしかないんです。ポットーデ様、お願いしますね」



 彼女が引くと、ニヤニヤ嗤いながら三バカが近付いてくる足音が聞こえてくる。脳が激しく揺らされているような不快感と戦いながらキヤは蒸気銃を杖にして立ち上がろうとする



「見ろ、この平民立ち上がろうとしている!! 先ほどとは打って変わって無様だな?!」


「最初から賢い選択をしていればこうはならなかったのですよ?」


「さっきのお礼をさせてもらうぞ!!!」



 剣士が剣の腹を使ってキヤの顔面を横から殴り飛ばす。衝撃でキヤの奥歯が飛んだ。だがその一撃で少しだけキヤの平衡感覚が戻る。息つく暇もなく元王太子が蹲ったキヤの腹部につま先で蹴りを叩き込む。貴族の靴は先が尖っている場合が多く、元王太子の靴も例に漏れない。何もないはずの胃から胃酸がせり上がり口から吐き出される。


 途中やたらヒョロい攻撃があったような気がしたが、恐らくヒョロガリの攻撃だろう。これはどうでもいいが、的確に人体の弱点を突いてくる元王太子と鉄の剣を持つ剣士の攻撃がヤバイ。今はおそらく加減して弄っているのだろう、鍛えた人間が鉄の剣を本気で奮えば骨折で済まないはずだ。バカ共の容赦ない殴打でキヤの身体には痣や傷がどんどん増えていく。



 ひたすらキヤを弄り少々気が済んだのか、倒れたキヤの頭を踏みつけながら元王太子が嘲るような口調でキヤを諭す



「どうだ平民。泣いて謝りエリアスを差し出すなら許してやるぞ?」



 その提案にキヤは嗤いながら答えた



「は、ハハ……そいつのことは知らねぇが、だが……社員なかま守れなくて、何が社長リーダーだよ……身を挺して守ってくれる、仲間が、今のお前にはいるのか? え? ハダカの王様よぉ?」



 提案を受けれるどころか挑発してくる平民。元王太子は激昂し剣士から剣を奪い取り、まっすぐにキヤの首へと突きつける



「最後通牒だ、平民。エリアスを差し出せ」


「そいつを差し出せば、助けてくれるのか?」


「あぁ、余は寛容だからな、約束は守るぞ。そら、早く呼ぶがいい。呼ぶんだッッ!!!」



 キヤは満面の笑みを浮かべながら叫んだ



「だが断るッッ!!!!」


「死ねェェェェェェェ!!!!」






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 キィン、という金属の出す特有の軽い音が響いた。そしてザクリという土に何かが刺さる音。元王太子が持っていた剣が柄から折れていた。いつの間にか工房の玄関が開けられており、そこから美しい女性が現れていた。



「庶民を弄るなど感心しませんね。ですが、全くわからないと言えばウソになります。権力とは、力とは甘いものです。だからこそ、おぞましい罪には、恐ろしい罰が必要なのです。愚かな愚行を心の底から後悔するほどの、恐ろしい罰が、ね」



 凍てつく氷河に放り出されたかのような寒気が四人を襲う。それは彼女一人から発せられる、冷たい怒りと殺意。高い金属音を上げて彼女は両手に持っていた武器を連結させ薙刀を作り出す。そしてその限りなく透明に近い刃を元王太子へ向ける。



 カレン・フェアリス。可憐な妖精はキヤから見ればやはり可憐な妖精だが、彼ら四人から見ればそれは死神に見えた。

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