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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第四部 君が立ち上がるために差し伸べる手
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帰ってきた鬼神とプレゼント




「お前の工房は色んな意味で退屈せんなキヤ」


「まぁ退屈させないものを作ってる自覚はありますけどね、HAHAHA!」



 一か月ぶりに歯車鍛冶工房に現れたギルバはキヤと談笑をしながらお茶を啜った。キヤも話の受け答えをしつつちゃんと魔動義手のメンテをしている。ギルバが旅立ってから一ケ月、様々な戦いを経験しキズだらけになりつつも、ここに来るまでに義手としての仕事を全うし続けている義手にキヤは製作者として誇らしく思った。


 なんせギルバは腕を無くしても冒険者を続けるため一時降格していたところから、義手を付けてから元のランクまで再び返り咲いたのだから。ギルバの昇格に自分の作った道具の一助があったと思うと、職人にとってこれほど誇らしいものはない。


 ただやはり戦闘用の義手は各部品の摩耗が激しい部分もあり取り換えが必要なものもある。それを見越してキヤはあらかじめ作っておいた義手用の予備パーツを準備し取り換えていく。



「お前の作った義手にはよく助けられている。俺の腕を奪った魔物へのトドメもコイツがやってくれた」


「そういや冒険者ギルドで話題になってますよ~ギルバさん。鬼神ギルバ、返り咲く! だとか、隻腕にして隻腕に在らず! だとか」


「義手が付いているから隻腕ではないがな」


「ギルバさんが宣伝してくれてたおかげでちょいちょい義手義足の注文が入ってますよ、ホント感謝してるッス!」


「義手の出所を聞かれたから話しただけだ、宣伝などしていない」



 お茶請けとして出されたスイートナッツと呼ばれる甘いナッツを摘みむっつりと噛み締めるギルバだが、ギルバの足元からノワールが出てきてギルバを茶化す



『素直じゃないにゃあギルバ? 前キヤが言ってた、作った道具で多くの人が救われるようにという願いを叶えるためにちょいちょい手足が無くなった引退冒険者に宣伝を……ぶぎゃっ?!』



 無表情ながら眉間にしわを少し寄せ、ノワールの脳天に一撃を叩き込むギルバ。照れ隠しにしては威力が限りなく致死レベルだ。わざわざ義手を鉄拳制裁そのためのこぶしに変えてある辺りマジで容赦がない。キヤは思わず頭をかいて照れる



「あー、それは……ちょっと待ってマジで嬉しすぎる……ありがてぇっす。でもノワール、そういうのは本人の居ない所で言うべきだぞ?」


『アタシは魔物、人間の道理など知らんにゃあ。おいキヤ、そのナッツアタシにもよこすにゃあ、大皿いっぱいににゃあ!』


『クアァ』



 大き目のタンコブを作りながらもノワールはキヤにナッツを催促する。いつの間にかノワールと一緒に出てきていたセレーニャもナッツを求めて一声鳴いた。ギルバは呆れたようにため息をつくが、キヤは笑って答える



「大皿はムリだ、今出してるギルバさんのと同じくらいなら出せるよ」


『ケチ臭いにゃあ』


「申し訳ないがさっちゃんの逆鱗にきったねぇゴブリンの腰布ぶつけに行くのはノワールだけにしてくれ、俺は関係ないからな、OK?」


『時には魔物も謙虚が大事ですね間違いない』



 工房のドアの向こう側から一瞬漂ってきた身の毛もよだつ殺気に魔物であるはずのノワールですら語尾を忘れて姿勢を正す。数分もしないうちにさっちゃんがナッツの小皿を持ってきてくれた。去り際にサツキがノワールの顎下を撫でていたが、目が笑ってなかったような気がする。ノワールはナッツを平らげるとスゴスゴとギルバの影に戻った。ちなみにセレーニャは我関せずとナッツを一粒ずつ味わっていた。



「そういやギルバさん、いつの間にそっちの義手に付け替えたんです? 手品かってくらい早かったですけど」


「あぁ、お前が作った義手をその場その場で変えながら戦っていたら新しいスキルを習得してな」


「???」



 この世界の常識に未だ若干疎いキヤが宇宙猫顔しているとギルバは解説してくれた。てかキヤはもう少し自分のスキルだのステータスだのを気にするべきだと思う。まぁ知らなくてもやっていけているのだが




 ギルバが言うにはこの世界のスキルとは生まれた時に先天的に持っているスキルと後天的に習得するスキルがあるようだ。先天的スキルを持つ者はそこそこ希少でレアスキルの場合が多く、空間収納などがこれにあたる。後天的スキルは仕事を続けることで習得する場合が多く、料理人や大工などその種類は多岐にわたる。



「今回俺が習得したのは『高速換装クイックチェンジ』というスキルだ。名の通り、一瞬で義手を別のタイプの義手に換装できる」


「はぇ~スッゴい……それって武器とか服も含まれるんですかね?」


「武器は効果範囲内のようだが、服は含まれていなかった。だが戦闘中に高速で武器を切り替えながら戦うのは面白いぞ」


「どこぞのスタイリッシュアクションゲームかな? そうなると後は両手足の近接打撃用の籠手があればパーペキだな!」


「……次に俺が欲しいものをなぜ知っている?」


「……え、マジ?」





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 義手のメンテが終わり一旦ギルバは宿へと戻っていった。ちなみに言っていた打撃格闘用の籠手に関しては明日ゴルドワーフに相談するそうだ。一仕事終えたキヤがリビングに入ると、そこには落ち込んだカレンと彼女を慰めるその他面々がいた。



「あー……っと。なんでカレンはヘコんでんの?」


「ちょっとね。カレンちゃんのコンプレックスが……」



 ヘコんだカレンに代わりサツキが言うには、カレンは『魔力無し』と呼ばれる体質なのだそうだ。魔力無しとは名の通り体内の魔力が生成されず魔力のない体質の人のことだ。この世界での魔力は生き物ならばほとんどが体内に有しており、生命活動で生成されていく。一般人でも多少の魔力を持っており、魔法を使えるほどではないものの魔石を活性化させる程度には有している。が、極稀に一切の魔力を有さず生成もできない体質の人間が生まれてくるそうだ


 ちなみにどうやって発覚したのかというと、サツキが魔石を使ったコンロをカレンに着火するように頼んだところ、カレンが急にヘコんでしまったことから発覚したのだ。



「私は魔力量の多い貴族の娘です。生まれた直後に魔力無しと判定が出、その場で殺されそうにもなりましたが……母がどうにか私を守ってくださって……政略結婚の道具として王太子と婚約したものの……それはいいんです、終わったことですから。でも……この体質のせいで皆さんの足を引っ張ることが私には許せなくて……」



 俯きすぎてテーブルに額をぶつけるカレン。泣いてはいないものの、大分参っているようだ



「なるほどなー。わかった、どうにかしてみよう。ちょいと待っててよ」



 軽い感じで再び部屋から出ていくキヤ。そして加工用の工房から少し物を漁る音がしたと思ったらキヤが戻ってきた。



「出来たぞニューワン! 魔充の腕輪じゃ!」



 キヤが持ってきたのは金属製の腕輪だった。草を編み込み作った小さな花冠のような造形をしており、真ん中に小さなカラの魔石が輝いている。作り方は金属とカラの魔石(小)をギアボックスに入れ、タッチパネルをちょいちょいで完成だ。



「魔石の活性化用ならこんくらいの大きさの魔石で十分でしょ。多分これが一番てっとり早いと思います」


「なにがよ」


「あのキヤさん、これは……」



 最後に急に棒読みになるキヤ。なんか超重硬化しそうである。そして急にアクセサリーを差し出されたカレンは困惑しきりだ。ヘコんでる女の子にアクセサリープレゼントしてご機嫌を取る手法だろうか?



「コイツは『魔充の腕輪』。あ、魔獣じゃなくて魔力を充填って意味ね? このカラの魔石には魔力が込めることが出来るんだよ。コイツを使えば魔力が無くてもこの石の中の魔力に貯めた魔力を利用して魔石を活性化出来るってワケ。そら、コイツはウチに就職したお祝いってコトでプレゼントするよ」



 キヤは無意識にカレンの左腕を取り作ったばかりの腕輪をはめてあげる。一歩間違えば婚約申し込んでるみたいと言うかもう完全にソレですよね砂糖吐きそう。案の定カレンは頬を赤らめてるし残りメンバーは無言でヒュー!してるしそれに気付いたキヤは羞恥心で半日引きこもるしで割とエラいことになった。



歯車鍛冶工房は今日も平和です


これから毎日カレン(の腕輪)にはキヤの(魔力)をたっぷり注入されることになるでしょう。もう爆発してくれないかな

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