空っぽの君に新たな名前を
これ読んでブラックコーヒーが旨く感じたら俺の勝ち、なんで負けたか明日までに考えといてください(暴論)
「「あらヤダかわいいじゃないヤダ~~~」」
「これが……私?」
数十分後、ゴルドワーフの手によって髪が整えられ短くなったエリアスがいた。鏡を見て目を丸くするエリアスにキヤと臨時理髪師がクネクネとエリアスの可愛さにダミ声で悶えている。オンディスたちはエリアス生存の隠ぺい工作の為先に帰った。
どうでもいいがゴルドワーフのハサミ捌きはプロレベルである。あのゴツゴツした指からは想像できないほどの繊細で華麗なハサミ捌きはその辺のプロが裸足どころか服投げ捨てて全裸で逃げ出すレベルである。そしてイメチェンをしたエリアスの髪型はショートになり、顔の両サイドが気持ち長めになっている。
「髪質が割と素直だったからどんな髪型でもイケたでしょうけど……どうせ短くするならダイタンにバッサリ切るのも手かなって思って。これくらい切れば別人レベルでしょ? 新しい自分、ハッケンってカンジ?」
「ゴルドさんがガチすぎてヤベーイ! それはともかくいいじゃんいいじゃん! なんか今のほうが身軽そう」
腰くらいまであった長髪を一気にうなじが見えるくらいまで切ったのだ、そりゃ身軽にもなるだろう。重量的な意味で
「で、どうよ? めんどくさいしがらみ全部捨てて新しい自分になった気分は」
「……肩の荷が下りた気がします。ありがとうございます」
エリアスに浮かんだその笑顔は彼女の心からの笑顔だった。
「そういや名前も変えたほうがいいかな? 平民っぽい名前ってなんかある?」
「そうねぇ……どうせならキヤちゃんが考えてあげれば? 彼女を引き取るっていうならちゃんと責任を取らなきゃネ?」
エリアスの方を見てウインクしながらゴルドワーフがいう。なぜかエリアスが俯いて頬を染めているような気がするが、気のせいだろう。キヤは顎に手を当て宙を見て考え始める
「あー…………カレンとか? カレン・フェアリスなんてどうよ」
「その心は?」
「その心はって……由来みたいなもんスか? あー……別に言わなくていいでしょそんなの」
恥ずかしそうに鼻の下をこすり目線をそらしながらキヤはごまかすが、そうは問屋が卸さなかった。ニヤニヤ笑いながらキヤを突っつくゴルドワーフ
「あらダメよ、名前は親が願いを込めて付けるもの。適当に付けたなんてかわいそうよ?これからずっとその名前で呼ばれるんだから真剣に考えたっていう証が欲しいものだわ」
「えぇ……どうしても言わなきゃダメっすか?」
「ダメよ。ホラホラ吐いちゃいなさい、ラクになれるわよ?」
「うごご……」
やがてキヤは目線をずらしたまま恥ずかしそうに言った。
「可憐で妖精みたいな女の子ってことで……」
その瞬間エリアスとキヤの頭から蒸気がボフッと吹き上がり、二人は頭を抱えて蹲ってしまった。察していたのかゴルドワーフは口元を抑えて隠しきれないニヤニヤ笑いをしている。あ、やべ、もう殴る壁がねぇ、クソ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
二人が羞恥で悶絶し回復してからしばらく後、エリアスことカレンといつものメンバーが顔合わせのためリビングに集まっていた。
「なるほど、キヤもなかなかカワイイとこあるじゃない。可憐で妖精みたいでカワイイって」
「せっかく治まってきた羞恥心掘り起こして傷口に塩コショウ擦りこむのヤメロォ!! あとカワイイとは言ってねぇ!! カレンさんはどちらかといえば綺麗系だから!」
「カワイイとこを否定しちゃってカレンちゃんを傷つけたと思って必死にフォローしてるけど結果的にさらにカレンちゃんを褒めてるトコなんか最高に滑稽ね、なにこれツブヤキッターによくある甘々の恋愛マンガかなんか?」
「くっ、殺せ!! いっそ殺せ!! むしろお前ら殺して俺生きる!! ヤロゥオブクラッシャァァァァァァ(訳・野郎、ブッ殺してやるぁぁぁ)!!!!!!」
「マーソウ、ちょっとキヤを縛って口に布噛ませといてやって」
「これが副社長のやるこ―――むごご……!!」
マーソウに取り押さえられ両手両足をイスに縛られさるぐつわ代わりの布を嚙まされたキヤは観念したのか俯いてしくしく泣きだした。さすがに可哀そうと思ったのかマーシュンが俯いたキヤの頭を撫でて慰めている。そんなキヤはほっといてメンバーは自己紹介を始める
「とりあえず自己紹介ね。私はサツキ、サツキ・イガラシ。この工房の実質副社長みたいなものよ。何かあったら私かゴルドワーフさんに聞いてね」
「金属加工兼相談役、ゴルドワーフ・ハインラノットよ。改めてよろしくネ?」
「魔石合成担当、マーソウ・ヤグル」
「魔石合成補佐、マーシュン・ヤグルです!」
「エリ……コホン、カレン・フェアリス、です。よろしくお願いいたします」
自分を想って付けられた、想いのこもったその名前で自己紹介する。カレンは言葉にできない充足感を胸いっぱいに噛み締めていた
「それじゃカレンちゃん入社を祝ってパーティしましょ! サツキちゃん、いいわよね?」
「そうね、せっかくだしパーッとやるのもいいかも。それじゃ皆、準備手伝ってくれる?」
「「「了解!」」」
「モガーーーー、モゴモゴ!!」
「それじゃ私とマーシュンは料理の準備するわ、ゴルドワーフさんとマーソウは別の準備してくれる?」
「「わかった(わ)」」
そうサツキが音頭を取ると一斉にキヤとカレン以外が部屋から出て行ってしまった。皆が出て行ってしまったのでキヤは縋るような目でカレンを見る
「大丈夫ですかキヤさん? 今解きますね」
「モゴモゴ……」
どうにか縄を解き一息つく二人。後で割とガチで固めに結んでいたマーソウをシバいとこうとキヤは思っていた。
「解いてくれてありがと。あのマーソウのヤロウ、後でボコスカにシバいとかないと……」
「いえ……それよりも、私を保護してくださってありがとうございます」
「いえいえ。これからもよろしくな、カレン」
「はい、キヤさん」
どちらからということもなく二人は笑い合う。貴族だった頃は毎日表情を崩さないように、感情を押し殺して生きてきたカレン。ここでは虚勢を張らずに、ありのままを受け入れてくれる人たちがいる。カレンは少しだけ、追放されてよかったかも、なんてことを思っていた。
「ところでドアの前で聞き耳立ててるアホ共ォ!!!! パーティやるんだったらとっとと準備して来いやぁ!!!」
突然キヤが立ち上がりリビングのドアを蹴とばすと、ドアの向こうからバタバタバタと騒がしい音が聞こえてきた。堪えきれずカレンは声を上げて笑った。
どこぞのハンバーグ師匠がアマーーーイとか言いそう




