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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第三部 歩み続ける者たちに新たな足(しゅだん)を
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歯車鍛冶工房の財政事情







「失礼、キヤ殿はご在宅か?」



 工房の扉の向こうからノックと共に聞き覚えのある声が聞こえた。たまたま聞き取ったサツキが扉を開けて応対する



「あぁ、確かパーシヴァルさん……でしたっけ」


「あぁ、そうだ。キヤ殿はご在宅かな?」


「いますよ。どうぞ」


「失礼する」



 パーシヴァルはサツキに案内されて外の実験場に入る。そこではキヤがゴツくした自転車のようなものをいじくっていた



「あれ? パーシヴァルさんじゃないスか、どうも! どうしたんです?」


「以前城に呼び出した話を少しな。その様子だと大分立ち直ったように見える」


「あはは、頼れる仲間のおかげでどうにか……立ち話もなんですしリビング行きましょうか」





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「この前は呼び出したのに放置してしまってすまなかったな。あの日の王城は未曽有の大混乱に陥っていたんだ。私もキミを連れて来てからすぐに混乱の鎮圧に駆り出されてしまってな……」


「あー、うろ覚えッスけどそんな感じはしてましたね。気にしないでください、どうせあの時の俺だったらマトモな会話すら出来なかったんじゃないですかね、ハハハ」


「そういってもらえるとありがたい。それで、あの時の要件をここで済ませようと思うんだが」


「大丈夫なんですか、ソレ? 守秘義務的なアレは」


「大丈夫だ。あの日君を呼び出したのは皇后様の命令で最期を看取ってもらうために呼び出したんだ。だが王族の部屋にほぼ無名の一般人を入れるわけにもいかん。さらに皇后さまの容態を貴族を差し置いて一般人のキヤ殿が知っているのも問題がある」


「それは仕方ないですね……貴族だなんだと色々あるでしょうし、大丈夫ですよ」


「すまないな。それでなんだが……君の作った魔動車いすを正式に王家で買い取ろうという話になってな」


「え? でもアレは俺がおば……皇后さまにプレゼントしたもので」


「職人の仕事にはそれ相応の報酬が支払われるべきだ。皇后様も実はそのことを気にしておられていてな……この話を聞いたとある方がキヤ殿に正式に報酬を支払うべきと言ってな。キヤ殿と面識のあった私が値段交渉に来たわけだ」


「そうスか……」



 キヤとしては正直どちらでもいいと思っている。なぜなら魔動車いす代もゴルドワーフたちの技術代もキヤのポケットマネーから出ているので工房の財政的にはそれほど問題ではない。乱暴な言い方をすればキヤの趣味で作ったものを皇后さまにプレゼントした形になっているからだ。だがパーシヴァルたちはそう思っていないらしい。まぁ貴族や王族のメンツなど色々と難しい問題があるのだろう。



「んー、わかりました。とりあえずウチの財務大臣に話聞いてみてそっから値段出してみます」


「そうか。それではひとまず今回の事の迷惑料含めた手付金を支払っておく、受け取ってくれ」



 そう言うとパーシヴァルは机の上にズシンと音が鳴るほどの重さの金貨袋を置いた。キヤが思わず飲んでいたお茶を吹きそうになるがギリギリで堪えた



「一先ず金貨百枚だ。白金貨でもよかったが、さすがに使いづらいだろうからな」


「ボフゥ?! ぶほはっ、ゲッホゲッホ!!!」



 中身を聞いて堪えきれずキヤは吹いた。吹いたお茶がサツキが奇麗にしたばかりの机をべちょべちょに濡らす。金貨一枚でおよそ一万円、それが百枚。百万円である。



「いや、いやいや、いやいやいやいやいや!! そこまで製作費も経費も掛かってないですよ?! 精々本体代が金貨一枚とちょっとくらいですって!! そこに諸費用入ってもやっと半分超えるくらいですよ?!」



 キヤが元居た世界で電動車いすは十万円台から販売されているが、ここは異世界である。一番金のかかる動力である回転の魔石は電動モーターにくらべ激安、ゴルドワーフやマーソウたちの技術代や材料費を差っ引いても金貨百枚には及ばない。しかもこの金貨百枚が手付金だ、この後にさらに商品代が支払われるのである。小市民であるキヤの感覚からすればどう考えてもボりすぎである



「本来踏むべき手順が色々とすっ飛んでしまっていたからな。皇后様が正体を隠していたのもあるが、それはこちらの落ち度だ。だからキヤ殿は気にせず受け取っておけ、出ないとこちらへの非礼となる」


「うぬぬぬぬ……」


「皇后様のお気遣いを無碍にしたいのであれば、受け取らないのもありなのかもしれないがな」


「うごごごごごご……イジワルっすよ……わかりました、これは受け取ります。値段の方は経理や従業員と相談して決めますんで、待ってもらっても?」


「わかった。そうだな、三日後くらいにまたこちらに来よう」






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 数時間後の工房の夕食風景。サツキの作る旨い料理を食いつつもキヤの表情はすぐれない。キヤから話を聞いたサツキの表情もすぐれない。純粋にはしゃいでいるのはマーシュンくらいだ。ゴルドワーフは年の功もあって動じていないが、マーソウはポーカーフェイスをしているものの手が震えている。



「どうしようさっちゃん……胃が蒸発しちゃう……」


「わかるけど……わかるけども。向き合わなきゃ、現実と! ゴルドさん、こういった場合の値段ってどう付けられてるんです?」



 こういったこと(貴族の買い物)にからっきしの現代人きやとさつきは年長者のゴルドワーフに知恵を借りる



「そうねぇ。モノによるけど、こういった高額の商品の取引で手付金は基本的に買った商品の十パーセントくらいが相場かしら。本来なら注文を取って手付金を貰って、出来たら商品を渡し残りの代金を払うことになるわね。今回みたいなのはレアケースだから何とも言いづらいけど、金貨百枚貰った以上少なくとも金貨九百枚以上の値が付かないとメンツを潰しかねないわ。支払いを完遂するのは上流階級のマナーだからね」


「うぎぎぎ……ゴルドさんの魔動車いす作った時の仕事はどれくらいの値段になりそうです?」


「そうねぇ、加工自体はキヤちゃんのセンバンを貸してもらったからスゴく楽だったのよね。新しいシゲキにも勉強にもなったし、一月のお給料と同じくらいが個人的にはいいかしら」


「額一桁上げてもいいですか?」


「隠居同然の身だしそんなに貰っても使わないから結構よ、気持ちだけ受け取っておくわ」


「デスヨネー」




 ここで歯車鍛冶工房の財政事情に少し突っ込んでみるとしよう。歯車鍛冶工房の給料は月給制を採用している。この世界では基本的に歩合制、つまり売り上げがそのまま収入に直結する体制がほとんどだが、キヤたちは様々な特許や発明品で安定した収入が見込めるため月給制となっている。


 従業員の給料はキヤが大体金貨二十枚、サツキは十五枚、マーソウが十枚、マーシュンが五枚、そしてゴルドワーフが三十枚程度だ。少なめに見えるが、従業員全員の衣食住が工房の経費で落ちるため給料そのままが手取りとなる。


 キヤは一応工房長という肩書からそこそこ給料がないと示しがつかないため他の従業員よりも多めになっている。サツキも実質副社長的立ち位置なので然り。ゴルドワーフは経験の足りないキヤたちのアドバイザーの役目、そして今までの経歴や仕事の過酷さも鑑みてこの額となっている。本来ならもっと出すとキヤたちは言ったのだが、ゴルド自身過去に積み上げたかなりの貯蓄があり、本人の希望もあってこの値段ということになった。マーソウは実質新人社員なので十枚からのスタート。マーシュンは未成年の為五枚からのスタートだ。



 そこにさらに新しいものを開発した際に、開発に関わった従業員にボーナスが加算される。なので一番給料が少ないヤグル兄妹ですらこの王都ではかなりの高給取りとなっている。ゴルドワーフに関しては隠居の身にして王都トップレベルの商会幹部の収入に匹敵する可能性がある。



 これでも工房全体のお金のごく一部で、経費はもっと巨額になる。キヤが魔物の素材や研究費として自由にできる経費が一番大きいものの経費全体で見た時はおよそ三十パーセントほど、衣食住が十五パーセント、仕事に必要な道具などを揃えるの経費が十パーセントほど。そしてオンディス侯爵やハナツキ商会に返済する借金に残りの経費に充てられていたが、この工房が動き出して数か月でほとんど完済してしまっている。逆に新商品を開発し売り渡した利権で出た利益の一部が帰って来てしまう始末。これが大体一月。



 キヤ達はヘタな貴族たちよりもお金持ちになっているのだ。しかもさらに貯蓄は増え続ける。オンディス侯爵やハナツキ商会が情報統制でキヤたちを守っていなければもっとキヤたちの周りは策謀と欲望で混沌としていただろう



ついこの間まで一般人の金銭感覚だった人間の価値観が歪みそうになるのは間違いない。





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ






「ふむ、それは大変ですねぇ。私も侯爵を継いだばかりの時は同じような悩みをもっていたのを思い出しましたよぉ」


「またハンドさんに連れ戻されても知りませんよオンディスさん」


「名目上子飼いの職人の仕事の視察ですから大丈夫ですよ、今ではキヤさん達はベッケンハイム家の一大収入源ですから」



 後日、紅茶を優雅に飲みながら久しぶりに現れたオンディスは言う。



「え、そんなに貢献出来てます? ウチ」


「えぇ。キヤさん達の活躍を見越してベッケンハイム家は回転の魔石などの鉱脈を数か所抑えましてねぇ、ハナツキ商会さんが商品の材料である魔石を買い取ってくれるんですよぉ。おかげで領地の経済に中々の余裕が出来ました。キヤさんには感謝してもしきれませんねぇ」



 価値無しの魔石が最低限のコストで莫大な金を生み出したのだ、鶏が金の卵を産んだ感覚なのだろう。オンディスの表情も最初に出会った時よりも緩んでいるように見える



「っと、話が逸れましたねぇ。私の主観でよければアドバイスしましょうかぁ?」


「お願いします」




 結局値段は手付金含め金貨千五百枚で纏まった。そしてキヤはこの収入で王都の近くの広い土地を購入することにした。そう、大規模な実験施設を作るために。そして完成したものを王家に献上すればトントンだろうと


正直色々とガバいかもしれませんがこまけぇことはいいんだよ!!


さて大規模な実験場なんて作ってキヤは何を作るつもりなんでしょうねぇ(すっとぼけ

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