ギアボックス、その性能の片鱗
「そこで俺は言ってやったんですよ」
「ほう?」
「『俺たちが止まんねぇ限り……道は続く……!!』って」
「フハハ、崖を目の前にして言う言葉ではないな」
「その後ド突かれました、希望の花が咲き誇ったような気がしましたよ、HAHAHA!」
墓参りを終え墓標を清掃し、キヤとおばあちゃんとパーシヴァルは帰路についていた。一旦暗くなってしまった空気をかえるため、キヤはとっておきのジョークや特技のボイスパーカッションを駆使しながら歩く。口だけで多種多様な音を出しているのが珍しかったのか、おばあちゃんたちは感心しきりだ
「ほう、よくも口だけで多種多様な音を出せるものだ」
「楽器のない、お金のない人がどうにかして楽器のような音を出せないかと試行錯誤し出来たみたいですよ。俺の住んでたとこでもなかなか出来る人はいませんでした、ちょっとした俺の自慢です」
「スゴいわねぇ、魔法の類じゃないでしょう? たくさん練習したのねぇ」
「やりすぎて大人に怒られもしましたね、皆が寝静まった夜に練習するんじゃねぇって。反省反省☆」
「ははぁ、さては反省してないだろう、お前」
「バレました? HAHAHA!」
涙はもう流し終わった。ならば次は進むだけだ。キヤはそんなことを思いながら道化を演じ続ける。と
「ッ、コホッ、コホッコホッ、コホッ……」
突然おばあちゃんが咳き込み始めた。キヤは慌てたが、パーシヴァルは慌てずにおばあちゃんの背をさする。そして車いすの肘掛に備え付けられたドリンクホルダーから飲み物をおばあちゃんに渡す
「コホッ、コホッ……ごめんなさい、笑いすぎてむせちゃったわ。ありがとうパーシヴァル」
「いえ。大丈夫ですか」
「平気よ。心配かけてゴメンなさいね」
お茶を口に含みながらおばあちゃんは笑う。キヤはおばあちゃんの表情にほんの少し違和感というか、引っ掛かりのようなものを感じたが……その時だった。三人の歩く道の先に数人の男が立ちふさがっている。
「おうおうばーさん、随分と身なりがいいじゃねぇか~?」
「めずらしーもんもあるな。おいくら位したんだ? ん?」
「俺たちにも恵んでくれよ……頼むよ~」
「フヒヒ……老女……デュフフ……」
あからさまだ。最後のは特にやべぇ気がする。今時そんなテンプレいねーよって語録に加えてめちゃくちゃ色々と拗らせてそうだ。全員どう見てもカタギではない。THE蛮族といった風体に手には既に剣やら鈍器が握られている。
「……パーシヴァルさん、この場合どうすればいいでしょう?」
「ここまであからさまなのだ。迎撃準備すべきだろう」
パーシヴァルが剣を抜き放ち、キヤはギアボックスの持ち手をギュッ、と握る。
「一応聞いておくが、お前ら我々をどうするつもりだ?」
「なぁに、ちょっとばっかり俺たちにもお恵みをってところだ」
「どんな人間でも身ぐるみ剥いじまえばそれなりのカネになるだろ?」
「持ってるもん全部置いてって、どうぞ?」
「ドゥフッ、こぽぉっ……」
手に持った刃物をチラチラと弄びながら男たちはニヤニヤと笑っている。これはもうクロである
「パーシヴァルさん、ちょっとおばあちゃんを守っててもらえますか?」
「しかしキヤ、お前武術は……」
「その差を埋めるためにあるのが道具ってやつですよ。正直、こんなモン使いたくはなかったし使わないのが正解なんでしょうけど……正しい運用方法であれば、ましてやそれが誰かの助けになるならば! 俺は迷わず使いましょう!! んじゃ、行きますよォ?」
キヤは手に持ったギアボックスを正面に突き出し叫ぶ
「魔力回路接続、再現開始! 種別は固定砲台、数は六つで十二分!! コール・一〇八一!! 具現!!」
『魔力回路接続・コード、認証しました。登録者、キヤコウタの命令認証、固定砲台六台を具現します』
無機質な機械音声が響き渡った瞬間眩いばかりにギアボックスが光り輝き、そして一斉にネジが外れたかのようにバラバラになった。刹那、バラバラになった部品が一瞬にして粒子化し、凝固し、形を成し
六台の固定砲台として再構築された
「なっ……!」
「…………」
初めて見る魔道具、初めて見る出現したナニカ。魔道具には人間の理解の及ばない構造や魔術回路、そして原理を搭載したものは珍しくない。だがそれにしても、この魔道具……【ギアボックスは常軌を逸脱しすぎている。】
「こ……こけおどしだ!! 野郎どもやっちまえ!!」
「「「「ウォォォォォォ!!!」」」」
ついにチンピラ達は自前の武器を振りかざし怒号を上げながら突進してきた。キヤは慌てた様子もなく、手を上に掲げる。まるで今にも号令を下そうとしている指揮官のように
「構えィ!! 目標は前方、射角は九十! ただ真っすぐに狙えェ!!」
キヤの命に機敏に反応したソレは、上に乗った筒状の部分をチンピラ達へ向ける。そして
「一斉掃射!!」
キヤが号令と共に腕を振り下ろした。刹那、タレットと呼ばれたソレが筒の口から一斉に何かを高速連射し始めたのだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ?!?!」
「いででででででで?! な、なんだこ……ぐへっ?!」
「ンアッーーーーーーーー?!?!??!」
「あ、拙者マジこういうのむりぽ ふげっ?!」
「六台合計秒間百発で超速射出されるコルク弾……どうだ? 魔法よりも、そして武器よりもイタくて腹立つだろ?」
なんと弾丸はワインに栓をする際に用いられるコルクだった。確かにこれは非殺傷だが……非常に痛くて鬱陶しいだろう。そのコルクが謎技術で超速でヒットし激痛をもたらす。混乱するわ痛いわでもうチンピラはごちゃごちゃだ。
そのうちチンピラはこの攻撃の弱点に気づいた。どうやらバカではないらしい。頭目らしき男が他のチンピラを盾にし出したのだ
「おいオマエ!! 俺の前に立て!!」
「ちょ、おま!! なにし……あでででで?!」
「へへ、こうすりゃ攻撃は当たらねぇ……」
「あでで……やっべぇ」
「いいから前に行け……ん?」
そこには地面に置かれたものと同じような構造の巨大な筒をこちらに向けて構えているキヤがいた。
「種別は大砲……数は一つで十二分!! コール・002(マルマルニ)、具現!! 頭の悪そうなお前らでもわかるように言ってやるよ。王手詰みってヤツだ」
どこぞのヘタ錬のにほいがした? いいえ、それは杉〇です




