一方その頃 He got a more power
内容よりもタイトルのスペル間違ってないかヒヤヒヤしてます。
ギルバがエルフェリアンに着いたとき、町は騒然とした空気に包まれていた。普段は穏やかな空気の町内はどこか張り詰めていて、人々も普段より慌ただしく動き回っているような気がする。ギルバは一縷の不安を感じながらも、いつも使っていた宿に部屋を取った後に冒険者ギルドへと向かった
ギルドに入ると、そこは街の中よりも騒然としており、ギルド職員がせわしなく動き回り、冒険者たちが騒がしく話し合っていた。間違いなく最高のタイミングで帰還をしてしまったようだ。ともかく突っ立ったままではどうしようもないので、顔見知りの受付嬢に話しかける
「久しぶりだな」
「ギルバさん! おかえりなさい! お怪我は大丈夫ですか?」
「あぁ。ところで……」
「あぁ、そうですね……今ちょっと大変なコトになってて、ちょっとこの町が慌ただしくなってるんです」
「何が起こった?」
「上級冒険者が次々と失踪してるんです。おそらく、ギルバさんも他人事ではないかと」
ふいに背後から男の声がした。ギルバが振り向くと、そこには一匹狼気質のギルバとも割と親交のある男が立っていた
「シタッパーか」
「お久しぶりですねギルバ。元気そうで何よりです」
人懐っこそうでどこか憎めない雰囲気の小男、シタッパーが微笑を浮かべながら立っていた。肩と頭には包帯を巻き、松葉杖をついている。ギルバの知るシタッパーでは考えられないその様に、ギルバは小声で話しかける
「お前ほどの手練れがそこまでやられたのか」
「あはは、さすがにお荷物を持った状態では全力は出せませんとも」
これは一部の人間しか知らないことだが、シタッパーは冒険者ギルドの裏の工作員であり、表沙汰にできないギルド職員の不始末や冒険者の不祥事をもみ消すための存在だ。己の身を守るためシタッパーという名前すら偽名だ。
ギルド内で悪事を働こうものなら彼らに狙われ、目をつけられたら決して逃げられないと言われるほどの恐ろしい集団なのである。彼らの強さは凄まじく、A級冒険者を単騎で始末できるという。彼とギルバは以前とあるひと悶着で顔見知りになって以来お互いに利用しあう仲である。
「詳しくお話しましょう。こちらへ」
「いいのか?」
「正直ボクは、ギルバこそこの状況を打開できる人だと思ってますよ」
「ランク落ちした負け犬冒険者に何を求めてるんだお前は」
「ボクは自分の目には自信があるので」
えてしてこういう底を見せない存在が一番厄介なのだ。ギルバは大人しくシタッパーの後についていった。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「端的に言いましょう。インクブスです」
「だろうな」
ギルド長の執務室よりも豪奢なギルド会議室に二人はいた。先ほどまでの柔らかい表情から一変、シタッパーは沈痛な表情で言葉を紡ぐ。そして彼の口から出たのは当然というべきか、ギルバが仕留め損ねたあのインクブスの蛮行だった
「数か月前にギルバさんが手傷を負わせたインクブスはどうやらタクヤンの手引きでこの辺りに来たようです」
「タクヤン? …………そんなヤツいたか?」
「ギルバがこのギルドに来て初日に叩きのめした小物ですよ。ともかく奴は制御とはいかないまでもインクブスをある程度自分の意志で誘導できる方法を知っていました。それを使ってインクブスをギルバにけしかけ……」
「なるほどな。そのタクヤンは」
「おそらくインクブスのエサでしょう。事後処理がラクになったので、その辺りだけは感謝してますよ」
薄く笑みを浮かべながらシタッパーは数枚の地図を机に広げる。それはこの辺りの山脈の地図で赤いバツが点々とついている。恐らく赤いバツの地点がインクブスが出現した地点なのだろう。地図を並べ、赤いバツを指で順番になぞるシタッパー
「インクブスにマーキングをつけ、斥候をつけることに成功しました。インクブスは徘徊性で特定の住処を持ちませんが、徘徊するのに一定のルートを通るようです。そしておそらくヤツが次に向かうのは……この崖の辺りです」
「……以前俺が戦った場所か」
なんの因果か、奴は以前ギルバに手傷を負わされた場所へと向かっているらしい。シタッパーは懐から依頼書を取り出しギルバに差し出す。
「ギルド職員として依頼します。インクブスを討伐せよ、ギルバ」
「……どうなっても知らんぞ」
差し出された依頼書をギルバは失ったはずの左腕で受け取った
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ギルド会議室から出てきた二人に剣呑な視線が一斉に突き刺さる。シタッパーは特に気にした様子もなく小声でぼやく
「あぁ、どうやらタクヤンがギルバを狙ってインクブスを呼び寄せたのが漏れたようですね……」
「間接的に関わっている俺を恨んでいる、と?」
「理不尽があれば他の誰かさんに八つ当たりしたくなるのが人間ってもんです。ハハッ、ホントにロクでもありませんね」
嘲笑うように小さく嗤うシタッパーにやれやれといった風なギルバ。その光景が不快に映ったのか、ガラの悪い……もとい、イキのよさそうな冒険者が数人、ニヤニヤとゲスな表情をしながら二人に迫る
「お前が負け犬ギルバと負け犬シタッパーか? ウワサ通りクソみてぇなやつらだぜ」
「お前らのせいでこの町はオシマイだ。どうしてくれるんだ? え?」
「悪いことをしたらケジメをつけるのが当たり前だよなぁ?」
完全に二人をナメきった態度でギルバたちにいちゃもんをつける冒険者たち。他の冒険者たちもそう思っているのか、剣呑な表情を二人に向けたままでギルバたちに助け船を出す気配はない
「とりあえずそのご立派な剣置いていけよ。迷惑料ってヤツだ。俺たちは優しいからなぁ? それでカンベンしてやるよ」
「ま、俺たち以外の冒険者がお前を許すとは思えねーけどなぁ!!」
「ギャハハハハハハハ!!」
「わかった。持っていけ」
「ギルバ?!」
あまりにも理不尽な要求に何の躊躇もなく受け入れるギルバに驚きを隠せないシタッパー。そんなシタッパーをよそに、ギルバは巨剣を抜刀しギルドの床に切っ先を軽く刺す
「持っていけるものならな」
ベキィ!!
ギルバが剣から手を離した瞬間、その巨剣はギルドの石床を砕きながら深く突き刺さった。その余りに非常識な光景に騒がしかったギルド全体がシン、と静まり返った
「……どうした? 持っていきたいんだろう? 誰も持って行かないなら、俺が持っていくぞ?」
そんな様子を気にした様子もなく、手近な空いていたイスに腰掛け、リラックスした様子で足を組むギルバ。この間ギルバはずっと無表情。『完全に彼らをナメきった態度』。冒険者というものは大なり小なり血の気が多いものの集まりだ。ギルバの態度は先ほどギルバたちに絡んだ冒険者たちの怒髪天をついたようだ
「テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
「こんなハリボテの剣なんざ……ッ!!」
石畳に打ち付けられた巨大な鉄の杭を引き抜ける人間はいるだろうか? 子どもでもわかることだ。だが自尊心を拗らせた者たちにはそれがわからない。いや、わかってはいるのだ。わかりたくないだけで。結局数人の力自慢の冒険者たちが挑んだものの、誰一人として人間にそれを引き抜くことはできなかった。
「………くだらね」
思わずボソリと一言こぼしたギルバは打ち付けられた剣を片手で軽く引き抜き、鞘に納めて歩き出す。自分のケジメをつけるため。いや、違う。己を敗北せしめた魔物を今度は打倒すために。そして自分のために持てる力を振り絞り、自分に新たな道を作ってくれたあの職人のために
次回 チ●コメイクライ! 悪いことしたら逆さ磔金●千切りの刑じゃー!! です。これはちゃんと書くので待っててね




