別れ、そして次に作るもの
色々あって数週間後。一通りのテストが終わり、完成品となった義手を付けたギルバは冒険者稼業に戻ることにしたようだ。キヤが色々と調子に乗っていろんな義手を作るものだから余計に帰還が伸びてしまったのだ。
街にある馬車の乗り合い所にキヤは旅立つギルバを見送りに来ている。サツキやゴルドワーフは所用で来れないそうだ
「それじゃあな」
「ギルバさん旅立っちゃうのかー……寂しくなるなー」
「それが冒険者というものだ。………俺としたことが、少し長居しすぎたな」
風に吹かれ、少し乱れた髪を後ろに撫で付けるギルバ。イケメン高身長がキザったらしい仕草するだけで絵になるってホント理不尽を感じる今日この頃
「開発遅延はホント申し訳ナイッス……なんせ初めてのことだらけだったんで……」
「いや、そうじゃない。お前がモノを作るのを見るのは面白かったからな。戦い以外で心が動いたのは初めてだった」
「そう言っていただけると嬉しいッス。これから拠点に帰られるんでしたね、どこでしたっけ?」
「ゲルテンベルグ国の端に位置するエルフェリアンという町だ。馬車を使えば三日とかからん。エルフェリアンに来るような用があったら俺を頼るといい」
「ウス! あ、月一とはいかないまでも定期的に義手を見せに来てくださいね? メンテナンスはタダでいいんで」
「フ、その時は頼んだぞ」
そうしてギルバはエルフェリアンへと帰っていった。なんか背負っている剣が増えているような気がしたが、ゴルドワーフから購入したのだろうか? あの形の鞘、どっかで見たような……そう一瞬思ったが、小腹が空いたので早く帰ることにした
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キヤが馬車の乗り合い所から帰ると、用事から帰っていたらしいサツキが、キヤとゴルドワーフ特製のオーブンでマフィンを焼いていた。焼きたての焼き菓子のかぐわしい匂いがキヤの小腹を刺激する
「たでまー。さーて次は何を作ろうかなーっと」
「おかえり。ギルバさんは発ったの?」
「おん。さっちゃんやゴルドさんによろしくって。何焼いてんの? メチャいい匂いじゃん」
「マフィン。オンディスさんのとこで分けてもらったナッツを散らしてあるわ」
「俺ナッツ系クッソ好きなんだけどやったぜ!」
気分が高揚したのか、指パッチンからの全力ガッツポーズをキメるキヤ。オーブンからマフィンを取り出して荒熱を取りながら、サツキはふと思い出す
「そういえばゴルドワーフさんが話があるって言ってたわよ?」
「ん、そなの? なんだろ。ゴルドさんどこ居るか知ってる?」
「今倉庫の近くにいるんじゃないかしら。そっちの方でモノを動かす音がしたから。ヤグルさん達はまだ寝てる」
「さんきゅ、行ってくるにゃあー」
「あ、つまみ食いしたら全身の関節の可動域を360度にするからそのつもりで」
「ままままさかそんな命知らずなことしませんですのことよ? ウフフフフフフフ」
カサカサカサと小走りにその場を立ち去るキヤ。焼き菓子はおやつの時間まで待つことにしよう。ちなみにヤグルたちがまだ寝ているのは、大量の魔石合成をして体力と魔力を限界まで使ってダウンしているためである。
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「あ、ゴルドさん。ここに居たンすか」
「あぁ、キヤちゃん」
サツキの言ったとおり、ゴルドワーフは倉庫に居た。どうやら自分の使っている道具を整理していたらしい。辺りには年季の入った金づちや鉄を掴むはさみなどが置かれている
「なんか俺に話があるそうスけど、なんです?」
「あぁ……そうね。コレを見てくれる?」
ゴルドワーフは足元に置いていた長い木箱を開ける。そこには特徴的な形をした片刃の剣が入っていた。そう、蒸気剣だ
「およ? これって……」
「そう。アナタの作り出した蒸気銃にワタシが刃を取り付けた武器よ。蒸気の噴出する勢いでただの一振りを強烈な一撃へと押し上げる……ワタシ自身、イカれてるとしか思えないモノよ」
後ろめたそうな表情で木箱のフタを撫でるゴルドワーフ。
「コレがどうかしたんスか?」
「ワタシはアナタの作り上げた非殺傷の護身武器を、正真正銘殺傷武器に変えてしまった。そうあるべきと作られたものの用途を捻じ曲げてしまった。そのことを……謝りたくて」
「…………え? なんで謝る必要があるンすか?」
「え?」
「え?」
「「??」」
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「あーそういうことッスか。いいっすよ、別に。俺が許せないのはあくまで道具を間違った用途で使ってバカみたいにケガしたり死んだりすることで、道具を発展 (♂)させて派生させるのは全然大丈夫ですから」
「そう……でも、本当にそれでいいの? コレでもし誰かが傷ついたりしたら……」
「ん、まぁまったく気にならないってワケじゃないですけど……ゴルドさんが作ったのならヘンなことにはならないでしょうし。なにより、自分の作ったモンが予想外の進化を遂げてるってのがなんというか……ワクワクしてますね! 蒸気銃が多くの無辜の人を救えたように、蒸気剣も多くの人を救える道具になってほしいッスね……あ、ちょっと触ってみてもイイっすか?」
「え、えぇ……気を付けてね? 一応は刃引きしてあるけど、かなり重いわよ?」
「おす!」
キヤはキラキラした目で蒸気剣を取り出し、いじくり始めた。ほんの少し魔力を入れて蒸気を発生させたり、ゆっくりかつデタラメに剣を振ったり、意味もなくカッコいいポーズをとったり。ゴルドワーフの胸につかえていた魚の小骨のような感覚がふわりと消えた。
そして蒸気剣はキヤたちの与り知らぬところで多くの人を救うこととなる。魔動義手をつけ、常識外の怪力で得物を操る蒼い鬼の手によって。
そしてキヤは蒸気剣のグリップを捻りながら、次はついにアレを作ってみようかと企んでいた。強力な出力をたたき出す魔石がヤグルたちのおかげで手に入るようになったのだから、この世界の移動手段に革命を起こしてみようかと




