いずれ多くのものを掴むであろう腕
意外と早くデキたなぁ~?
キヤ達は食後のお茶を楽しみながらヤグル兄妹の話を聞いていた。皆に出される軽いお茶請けのクッキーがキヤの分だけ小麦粉なのは置いといて
「それで、魔石の合成職人ってなんなのん? ふわっとはわかるけど、詳しく知っときたい。あとさっちゃん、お願いだから原材料そのまんまはカンベンしてください、オーガニックにも限度があると思うの」
「報告連絡相談もできないのは社会人としてNGなんで反省しなさい」
「ウィ……くそう、後でコイツを使ってカリフワのクロワッサン焼いてやる……」
「……話を進めていいか?」
しょぼくれるキヤはひとまず置いといてマーソウは話し出した。
「魔石の合成職人は名の通り、低級の魔石を複数合成し上級の魔石を作り出す職人だ。例えば低級の火の魔石を複数合成することで、王宮の食堂や魔法使いが使用する杖などに使われる中級の火の魔石が出来る。
その技術は工房ごとに極秘であり、その業は職人の数だけあると言われている。だから合成職人になりたいときは職人に弟子入りして技術を学ぶんだ。弟子入りの手始めに制約の魔法で秘密の漏洩を防ぎつつ、な」
「ほむほむ。それって魔法を使って合成するってこと?」
「それすらも言えない。禁を破った職人は職人ギルドから追放される。秘密の漏洩を防ぐために舌や手の腱を切られることすらあるくらいだ」
「あー、俺の故郷の鍛冶屋にそういう感じの逸話があったなー。鉄を冷やす水の温度を知ろうとして水に手を突っ込んだ息子の腕を切り落とした鍛冶師。おぉコエェ……」
「俺はオヤジが合成職人でな。技術を学ぶ前にオヤジが死に、合成職人を目指していた俺たちはヤナヤーツに弟子入りした。結果、やめたけどな」
「ふぅーん。でさ、マーソウさんは弟子を辞めた今でも合成職人になりたいの?」
「……どうだろうな。それを考える間もなくお前に拾われた。俺を雇ったところでなんの意味もないぞ? 俺がかろうじて合成できるのは普段使わないようなハズレの魔石の合成なんだから」
「具体的には?」
なぜかワクワクしたような表情で問うキヤにマーソウは怪訝な表情を浮かべる
「は? あぁ、ハズレの魔石、カラの魔石、推進の魔石、あとは極小の属性魔石を魔石(小)に出来るくらいだ。本来の合成職人なら魔石小から中へ、さらに一流ともなれば魔石の大や極大も作ることができる」
「回転……もとい、ハズレの魔石やカラの魔石の合成上限みたいなものはある? 合成できる魔石の数の自己ベストは?」
「……わからない、試したことはないな。大体二つ組み合わせて次の練習に入っていた。しかし、そんなことを聞いて何になる?」
「そんじゃ、今最大値を調べちゃおう!! 俺が一番大事にしてるのはそこなんで!」
机の上にどじゃらぁ……と大量のカラの魔石をブチ撒けながらキヤはイイ笑顔で笑っていた。マーソウの表情は引きつっていた。魔石をブチ撒けた後キヤはハッと何かを思い出したような表情でマーソウに問う
「あ、合成方法って秘密なんだっけ? スペース貸したほうがいい?」
「いや、構わないさ。どうせ下働きや雑用ばかりで秘密にすべきワザなんて伝授されてないし、俺はそもそも技術ナシで合成できるからな」
マーソウの言葉にゴルドワーフが手で口を覆いながら驚愕する
「あら! マーソウちゃんまさか『合成スキル』持ち?! やだぁ~すごいわねぇ!!」
「すきる? ジャムプロですか?」
「そのじゃむなんとかは知らないけど、マーソウちゃんは魔石の合成スキルを持ってる……ってことでいいのね?」
「あぁ。オヤジも同じスキル持ちで俺にもスキルが遺伝したらしい。だが……ちゃんと遺伝せず、クズスキルに格落ちしたがな」
マーソウが吐き捨てるように呟いた。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
マーソウが両手にカラの魔石を持ち目を瞑ると、マーソウを中心に淡い光が放たれ始める。そしてじわじわと両手の魔石が浮き上がり、やがてそれは引き合うように中心により始める。そしてマーソウがポツリとこぼすように『合成』と唱えると
一瞬にして魔石が合体、先ほどより少し大きなカラの魔石が出来た。キヤは出来た魔石を検分する。定規で大きさを測ったり、魔力を流し込んでみてキャパシティーを確認したりする
「ふむ……へぇ……さっきよりもちょっと大きさは大きくなったかな? あとは……うん、流し込める魔力も丁度二つ分くらい? うん、それじゃあひとまず限界を調べてみよう。マーソウさん、机の上のこれ全部使って一つに出来るだけ合成してみて。適度に休み入れながらでいいから、頼むよ~」
「こんなカラの魔石を合成して何になるっているんだ……お前たちも俺をバカにしているのか……笑えよ……」
感情の抜け落ちた表情で俯き、再び目をつぶり合成を始めるマーソウ。だがキヤは傲岸不遜に笑う
「少なくともコレが成功すれば一流の冒険者の仕事の大きな助けになって拍が付くと思うよ? 今ココにいないけど、ギルバさんって知ってる?」
「知ってる! 鬼神ギルバでしょ?! え、お兄ちゃんの魔石がギルバの使う道具になるの?!」
兄と同じように俯いていたマーシュンがパッと輝くような表情でこちらを見る。彼に憧れでも抱いているのだろうか。この流れはいい流れだ
「そそ。ギルバさん直々の依頼でね、今俺らが作ってるのは彼専用の革新的な道具。んだけっども、どうにも問題山積みでさ。これの完成は君たちにかかってるって言ってもいい」
「フン……都合のいいことばかり言って俺たちを騙すのか……いいだろう。出来たぞ。これでお前の言う革新的な道具とやらを作ってみろ」
「え?! もう出来たの?! はや! これもう終わりかいな! しかも大きさもさっきとほとんど変わってないし!! やっぱ、マーソウさんのウデを……最高やな!! よし、これで義手も完成だ!!」
マーソウが出来るわけがないという表情で合成した魔石をキヤに渡す。キヤはマーソウから魔石を受けとると同時にどこからか義手を取り出し手早く分解、そしてあらかじめ内部に作っておいた魔石を入れるためのスペースに先ほどの魔石をはめ込み、再度組み立てた。そして完成した義手を天高く掲げ、いつものダミ声で叫ぶ
「てってけてっーてっーってー!! ギルバさん専用義手~~!! ……カッコカリ」
「ほ、本当に作ったのか……あの一瞬で」
「うん、後は本当にこの魔石さえあれば完成だったからね! とはいえ、まだ使用実験とかはしなきゃなんだけど……ということで、コレが正式採用された暁にはお二人をウチの工房専属魔石合成職人にしたいんですけど、構いませんねッッ!!」
なんか妙にスゴ味のある雰囲気を醸し出したキヤに、兄妹はほんの少し期待してしまうのだった。
余談ですけど、ヤグル兄はどこぞのマスクドライダーのやさぐれたショウリョウバッタがモデルです。妹は轟音者の方がモデルかもしれません(適当)弟? 光の巨人になって戦ってます。




