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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第二部 鬼の腕(カイナ)
34/199

幕間 鍛冶職人ゴルドワーフ

ちょっとだけゴルドワーフさんを掘り下げます。あ、別に掘り♂下げるってそういうんじゃないんで勘違いしないでくださいね




 ゴルドワーフが武器を作らなくなってからどれほど経っただろうか。



 自我が芽生えた瞬間から自分の性別に疑問を持っていた。私はなに? ボクはなんだろう? 鍛冶師の家柄に生まれ幼少の頃から類稀なる鍛冶の才能を開花させていたものの、鍛冶仕事はその疑問に答えてはくれなかった。当時はまだ小さな胸にその疑問を仕舞ったまま、カノジョは成人を迎えた



 自身の工房を構えてから様々な武器や鎧を作り続けて数年。ゴルドワーフの元に彼が現れた。




 彼は冒険者だった。背は比較的小さいが、その機動力や魔法の力で大柄な男の集団ですら手玉に取る実力者だった。ゴルドワーフに武器を作ってもらうべく彼はゴルドワーフを尋ねた。彼に会った瞬間、ゴルドワーフの胸の中にしまっていた小さな疑問が一気に弾けた。



 胸が爆発しそうなくらいに高鳴る。だがゴルドワーフは既に成人してしまっていた。それが普通・・でないことを知ってしまっていた。ゴルドワーフは報われないその気持ちを全て鍛冶仕事に叩き込んだ。


熱せられた鉄に槌を叩きつけ、自分しかいない鍛冶場で涙を流しながら。自分の気持ちを叩き壊しながら、砕き潰しながら打ったその剣は皮肉にも、『壊れずの剣』の名をつけられた。



 数年後、ゴルドワーフの元へ壊れずの剣は返ってきた。




 その時すでにゴルドワーフの打った武器装備は伝説級といわれ、実力行使の奪い合いもザラの貴重品となっていたのだが、その剣だけはゴルドワーフの元へ帰ってきた。彼と一緒に行動していたパーティーメンバーの女魔法使いが届けてくれた。



 女魔法使いは涙を流し、しゃくりあげながら彼からの伝言を告げた



『あなたの想いに応えられなくてごめんなさい。この剣は僕の命を何度も救ってくれました。本当にありがとう』



 ゴルドワーフはその時を境に武器を作るのをやめた。髪を剃り、鍛え始めた。彼が彼女であった時間を置き去りにするために。体格のいい美丈夫から完全無欠の豪傑へ。彼をよく知る人物たちはその変貌ぶりに驚いたが、受け入れてくれた。彼がどんな人物であれ、友であることに変わりはなかったから。


 以来、ゴルドワーフはナベや包丁などの生活必需品の製造に精を出した。腕の立つ料理人は皆、彼の調理器具を欲しがる。鍛冶仕事のベクトルを変えたものの、そちらでもゴルドワーフは成功を収めた。


 だが胸の内ではじりじりと燻ぶる火種があった。





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 コウタ・キヤ。不思議な男だ。イケメンという訳でもなく、かといって不細工でもない正直フツメンと言った感じの男。だがどこかコミカルで、人との距離感が的確で、それでいて澄み渡っているのに底の見えない湖のような存在。彼の作り出すものはどこか浮世離れしていて、それでいて人に近い。あくまで人のために。そんなコンセプトが見えた。



 そしてゴルドワーフに彼の作り出すものに一枚噛む機会が訪れた。



 蒸気銃スチームガン。それはキヤが王都に来る前に、とある村の鍛冶師と一緒に作ったという護身武器。魔石を連動させ、強烈な勢いで発射される蒸気で外敵を追い払うという用途の武器。


 なんという発想力なのだろう。魔石は通常一つだけでもかなり強力な品であり、それを組み合わせることで『+(プラス)』から『×(カケル)』にランクアップさせたのだ。この世界のどこに、料理を作っているときに出ている湯気で身を守ろうと思う者がいるだろうか。



 そして完成した正式採用型蒸気銃。これが街の警邏に実装されてから休みなしの医者が休日を手にしたというほどの実績を残す。相手を近づかせず無力化し拘束する、近づかれても銃身で対応できしかも切り傷は与えない。ここに護身武器の完成系を見たゴルドワーフだが、キヤはまだまだアイデアはあるという。


 このときゴルドワーフはまるで彼の中に深淵を覗いているような感覚を覚えた。そして自分の中のかつての疼きが活発化するのを感じた。


『もしもこの武器がもっと攻撃性の高いもの……剣に応用できたなら』



 キヤのポリシーからは大きく外れてしまうもの。ゴルドワーフも自身の知的好奇心からは逃れられなかった。最悪、この工房を辞めることすら視野に入れて作業を開始した。




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「はい、これがワタシのとこに奇跡的に残ってた最後の一振り。お手入れを忘れてて、ちょっと磨かなきゃいけないけど。在庫処分ってことでロハでいいわ」


「磨くのはどうということはないが……さすがにロハはダメだろう。伝説の鍛冶師の最後の一振りとなれば尚更だ」



 ゴルドワーフはギルバに剣を渡しつつ苦笑いする。



「いいのよ、その辺の木っ端冒険者にくれてやるには惜しいモノだけど、ちゃんとしてるアナタにならあげてもいいわ。それにアナタ、義手で大きく出費するでしょうし」


「……心遣い感謝する。それで」



 貰った剣をパチンと鞘にしまうと、普段無表情なギルバがニヤリと口角を上げる。それはまるで新しいオモチャの発売を知った子どものようで



「そこに置いてある『見たこともない機構をした剣』は、一体なんだ?」


「……ワタシもものづくりをするものの端くれだしね。キヤちゃんを見てると、ちょっと昔のことを思い出しちゃって。はぁ、キヤちゃんに怒られそう。後でちゃんと謝らなきゃ」



 ギルバが指さす棚からゴルドワーフは、大きな片刃の剣を持ってきて机に置いた。シャムシールやカトラスと言われる剣のように刀身は緩やかな曲線を描き刃はブ厚く、刀のように斬るというよりは叩き切るといった方向性の剣のようだ。


 剣の横幅は峰に近づくにつれ厚くなっており、相当の強度を持っていることがわかる。そして切っ先に近い部分に非常に特徴的な穴が三つ空いていた。柄は通常に比べ長めで、拳二つ分より少々長いくらいの長さがある。


 そしてひときわ幅広い、刀でいうところのナカゴの部分には装飾と、意味深な分割線が見える。



「キヤちゃんの蒸気銃、スゴい勢いで蒸気が出るのよね。で、アタシはバカみたいにその勢いを剣を振り下ろす速度にプラス出来たら面白いんじゃないかって思っちゃって。蒸気銃の噴出口を曲げて、そのまま刃を付けて、色々と調整して。で出来上がったのがコレ。機構剣『インペラートム・カルミヌス』。あまりにアホ設計すぎてマトモな人間なら使えない剣よ」


どう見ても悪魔泣かすゲームの赤女王です本当にありがとうございました

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