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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第二部 鬼の腕(カイナ)
33/199

やさぐれた兄妹

また新キャラです。で、出ますよ……





「ぬわぁぁぁぁぁんもーーーーーー疲れたもぉぉぉぉぉん!!!」



 夕方、キヤはおばあちゃんとお話をした広場で叫んだ。幸い周りには誰もいないためその叫びは虚空へと消えた。今はおばあちゃんはいない。大きな木にもたれかかり、そのままずるずるとずり落ち座り込む。稲穂は首を垂れるほど喜ばれるが、残念ながらキヤの気分は地に落ちそうなほどブルーだった



 ヤナヤーツの工房から出て数日、職人ギルドに教えてもらった全ての魔石合成職人の工房へ赴いたものの、ことごとくが門前払い。心配されないようにサツキ達には気丈に振る舞うものの、さすがのキヤも心折れそうだった。



 いつものバンダナをほどき、ガシガシと頭をかく。試行錯誤すらできず、手をこまねいている状態はキヤにとって耐えがたいものだった。目の前に大好物を置かれているのに、食べることを許されないようなじれったい感情。もういっそ別の方法を探すべきなのか。



「やっぱダメだ! よし! 帰ってゴハン食う!!」



 何事も切り替えが大事だ。鬱屈してても仕方ない。キヤは跳ねるように立ち上がり、帰路へ着いた。気分が沈んでいるときは大体お腹いっぱいになればどうにかなるのだ。




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「アニキ、よかったの? あの工房の弟子辞めちゃって」


「あぁ……どうせあそこにいたままじゃ生活はよくならないだろう。王都を出て、別の街でひっそりやればまだマシだろうな。正直王都は職人が飽和してる、片田舎ならそこそこの需要はあるだろうさ」



 帰り路、少し奥まった路地の方から聞こえてきた二人の会話。キヤはなぜかその場で足を止めてしまった。足りない歯車ピースが、そこに落ちているような感じがして




「(それに、あのままあそこにいたらお前が良からぬことに関与させられていたかもしれないしな)」


「アニキどうしたの? 急に黙って」


「いや。もう一度求めてみよう、光を。夜でも消えない、白夜の光を……」


「うん。一緒に頑張ろう、アニキ」


「すいません、ちょいといいですかいお二方?」





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ




「なんだお前は? この辺りじゃ見かけない顔だな」



 兄妹の兄らしき青年が妹を庇うように前へ出る。年齢は十代後半だろうか。目つきが鋭く、この世界の職人がよく来ているコートはところどころほつれている。顔はよく見ればボロボロで傷も新しく、どうやらどこかでケンカをしてきたらしい。妹はどこか気弱そうで兄の後ろに隠れながらこちらを恐々と見ている。年齢は十代前半ほどだろうか。少々汚れているものの、磨けば光りそうだ。キヤは出来るだけ刺激しないように丁寧に対応することにする



「この辺りには割と最近来たんで、知らなくても仕方ないっすね。俺はコウタ キヤっていいます」


「……マーソウ。マーソウ ヤグル」


「えっと……マーシュン、です……」



 キヤの雰囲気から悪人ではないと思ってくれたのか、警戒しつつも自己紹介をしてくれた。



「お二人は何かの職人さんですか?」


「いや。職人見習いだった。追い出されたがな」


「違うもん! アニキは将来見越して出ていったんだよ! お父さん言ってたもん! 職人を大事にしない工房は長続きしないって!!」



 ため息をつきつつ妹の頭を撫でて諫めるマーソウ。お互いに思い合っているのがよくわかる。どうやら二人は以前いた工房で大変な思いをしていたようだ



「それは……その、お疲れ様です。ところで、何の職人さんをされてたんで?」


「……それを知って何になる? お前は俺たちから何を奪うつもりだ?」



 ぎり、と歯を食いしばり拳を構え、あからさまな殺気をキヤに向けるマーソウ。ファイトスタイルが堂に入っているのでケンカ慣れしているのだろう。攻撃されてはたまらないとキヤは思わず口走る



「そうですねぇ。とりあえず、あなた方から不安と空腹を奪いましょうか」


「「………は?」」





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「「がつがつもぐもぐむしゃむしゃゴクゴク」」



スパーンスパーン!!



「「んぐっ?!」」


「よく『噛んで』食え。いいな?」


「「…………!」」



 兄妹の頭をド突き、押しつぶされそうな重圧が込められた言葉にヤグル兄妹は無言で激しく頭をコクコクした。意外にも先ほどの言葉はキヤの口から出た言葉だった。普段とのギャップがありすぎてサツキもゴルドワーフもいつもより多めに目を見開いている。



 場面は変わってここはキヤ達の工房。あれからキヤはヤグル兄妹を工房へと招き、簡単な食事を二人に与えていた。サツキも事後承諾ながらどうにかお許しをもぎ取った。




「またキヤちゃんが誰を拾ってきたのかと思ったら……ヘンクツの所のお弟子さんじゃない。偶然ってあるものね……」


「え? ゴルさんお知り合い?」


「えぇ。昔にちょっと見かけただけから、そっちの子たちは覚えてないかもだけど」



 意外なところで接点があった。そういえばゴルドワーフは職人ギルドのご意見番、本職でなくとも少しは接点があってもおかしくはない。ちなみにキヤの雰囲気は普段通りに戻っている。兄妹は少し安心したのか、よく噛みながらも食事を続けた。



「あ、二人はそのまま食ってていいよ。ゴルさん、この二人何の職人の弟子やってたの?」


「魔石の合成職人よ。よく覚えてないけど、マーソウ君はなんだか尖った才能を持っていたような……」


「あー魔石の合成職人ね。なるほど……」





「ってえぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!」


「やかましいわよキヤ!!!」


「ここにきてさっちゃんのド突きツッコミ!!!」



 KO。勝者、サツキ イガラシ



「せめて常識を知り死になさい……」


「じ……柔の拳……」



 ともあれ、キヤにとって足りない歯車が現れたようだ。義手づくりは急速に進展していく………といいなぁ

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