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異世界のマ歯車鍛冶(ギアスミス)!  作者: 優暮バッタ
第二部 鬼の腕(カイナ)
32/199

こんなことしてタナトス……ただで済むと思ってんのかよ!!

いつから作業進捗が前進したと錯覚していた?



「たでまー」


「おかえり。その袋は?」


「職人街でタダで貰ったカラの魔石ってヤツ。また後で解説する」


「りょ」



 サツキと短いやり取りを交わした後、キヤは手洗いとうがいに洗面所へ向かう。夕食まではしばらくあるので、おばあさんから教えてもらったカラの魔石の調査をすることにする。そのために一先ずゴルドワーフを呼んだ




「ゴルさーん、ちょいといいですかい?」


「あらキヤくん。何か収穫はあったのかしら?」


「ある人からアドバイス貰いまして。ちょいと検証実験に付き合ってもらえません?」


「いいわよ」



 素材倉庫の机の上に貰ってきた魔石をじゃらりとバラまく。袋から出てきたのはいずれも透明な色の魔石だ。普通魔石とはその石に封じられた属性の色に染まることが多い。代表的なもので例えると、火の魔石なら赤、水なら青、風なら緑、土なら黄色と言った感じだ。ちなみに回転の魔石は鈍色、推進の魔石は薄い水色だ


 キヤが机に上にばらまいたのは通称カラの魔石。魔石に封じられた魔力が枯渇すると透明に変化する、いわゆる『魔石の搾りかす』だ



「カラの魔石なんてどうするつもりなの?」


「ちょっと面白いこと聞きまして。百聞は一見に如かずってね」



 キヤは適当なカラの魔石を拳に握りこむと、魔力を流し込み始める。自分の中から流れ出た魔力が徐々にカラの魔石に入っていくのを感覚で理解し、ほくそ笑むキヤ



「カラの魔石に魔力流し込んでどうするの?」


「コイツをギルバさんの義手に仕込んで、余剰魔力をコイツに吸わせようかと。そしたら糸束にかかる負担も軽減されるかなって」


「あら、いいじゃない! でも溜まった魔力はどうするつもり?」



 魔力とは自然界に存在する超自然的エネルギーの総称で、魔法使いはこれにコトダマを用いた『呪文』を使うことで空気中の魔力や自分の内包した魔力に干渉し魔法を使う。自分の内部にある魔力など知れているが、空気中の魔力に干渉する際は一歩間違えれば大惨事を引き起こす可能性もある。


 ギルバの魔力は一般魔法使いと違いけた違いに多いので、ヘタをすれば許容量を超えた魔石が破裂する可能性もあるのだ。



「そうなんですよねぇ。徐々に魔力が抜けていくなら放置でヨシ、溜まったままならどうにかして発散させる方法を考えないと」



 ちなみに元火の魔石のカラの魔石に魔力を流し込んでも、もう一度火の魔石になったりはしない。ただの魔力を蓄えた魔石となる。そしてキヤは突破口を見つけたものの、また新たな壁にぶつかることとなる





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「アイデアは悪くない。だが問題はそれだけじゃなく、俺の魔力を受け止め続けることのできるカラの魔石がないことだ」



 カラの魔石の実験後、キヤはギルバの宿泊している宿屋を訪ね報告をしていた。キヤの新たなアイデアを聞いたギルバは最初こそ感心していたものの、すぐに渋面をする



「あー……やっぱりそうですよね?」


「一般家庭で出る大きさのカラの魔石百粒でようやくマトモに俺の魔力を受け止められるだろう。一粒では即破裂してもおかしくない」


「あちゃぁ……別にアイデア練らなきゃいけないかなぁ……」



 ガシガシと頭をかくキヤにギルバはふと思い出したことを口にした



「そういえばキヤ。お前は魔石の合成職人を知っているか?」




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



ぽーい ドサッ!!



「帰れ帰れ!! なんで俺様がそんなくだらん仕事をしなければならんのだ!!」


「いやぁ話だけでも」


「話もハナクソもあるか!!俺様はな、これから国に!! 依頼された仕事をせにゃならんのだ!!」


「それなら仕方ないね♂」


「ケッ!!!」



バタン!!!!!



「……………びえん」



 追い出されました。




ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 取り付く島もないとはよく言ったものである。ギルバから話を聞いた後キヤはこの王都一番の魔石の合成職人と言われている『イヤーミ・ヤナヤーツ』の工房へと足を運んだ。が、結果は先ほどの通り。ちなみにヤナヤーツが言っていた国からの仕事というのはウソだ。数々の再現品のおかげでキヤは職人ギルドでも期待の新人と認識されているが、それを快く思わない存在はいる。ヤナヤーツはその筆頭だ


 ヤナヤーツは期待の新人ともてはやされているキヤが自分を頼ってきたのが愉快で仕方なかった。出る杭を叩く、ヤナヤーツはキヤを陥れるためにキヤを追い出してからすぐ町中の合成職人に連絡を取りキヤの頼みを聞かないように根回しした。


 王都一番の合成職人というのはダテでなく、職人ギルドでもそこそこの権力を持っていたのがキヤにとって最悪の形で降りかかってきたのだ。ヤナヤーツはこれを皮切りに歯車鍛冶工房に嫌がらせを始めようと計画したが、そうは問屋が卸さなかった。



 ある日にキヤ達全員がそれぞれの事情で工房から離れていた時のこと。怪しげな男が手にこれまた怪しげなビンを携えて工房に近づいていた。



「ククク……この火炎瓶をヤツの工房に……」


「おやぁ、どちら様ですかぁ? 随分と物騒なものをお持ちのようですが」



 男がまさに工房に火炎瓶を放り込もうとしたとき、背後で二つのガラスが光った



「ァ? うるせ……ひいっ?! オンディス侯爵?!」


「おっと、これはお忍びの外出ですので声を小さく」



 妖艶に自分の唇にひとさし指をあてがうオンディス。男は無言で頷くしかなかった。オンディスが自分を見る目が完全に獲物を見つけた肉食獣のソレだったからだ。オンディスはスンスンと形のいい鼻を微妙に動かす。



「そのビン……とても強い酒精のお酒のようですねぇ。火を近づければ燃えるほどの強さの。ただ飲む分には構いませんが、なぜ口の部分に火の魔石が張り付いているんです?」



 どこかで書いたが、オンディスは元々チート級 弓兵アーチャーだ。風に乗って流れてくる獲物の匂いだけで獲物の大体の位置情報がわかるほどの規格外。そんな彼だからこそ火炎瓶に詰められた強烈な酒精と魔石の匂いを感じ取れたのだ。当たり前だが、普通の人間は密閉されているビンから漂う酒精も、無臭の魔石の匂いも感じ取れるはずはない



「詳しくお話をお聞かせ願えますかぁ? デクノボー木工工房のお弟子さん?」



 身元割れ済み、王手詰チェックメイトみ入りましたー。話はキヤ達の与り知らぬところで進み、収束していく





問題点「久しぶりだな、義手制作進捗」


進捗「問題点?! 殺されたはずじゃ?!」


問題点「残念だったな。トリックだよ」※訳 問題山積みです

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