雷角竜と豚王の決着
Side マッド
マッドは右肩にマウントされた襟巻の盾を外して左手に構え、背中にマウントしていた尻尾が変形したランスを相手に突きつけるように構える。他の二体よりも重い強固な鎧と強固な盾で並大抵の攻撃では響かない防御力で耐え、右手のランスとランスに付与された雷エンチャントで相手の防御を突き貫く。たった一人の防御陣形、それがマッドの戦闘スタイルである。
対するキングオークは単純明快。その巨体と凄まじい筋力で叩き潰す。さらに打撃攻撃にはめっぽう強くその厚い脂肪が威力を半減させ、彼が持つスキルの『自己再生』で並大抵の攻撃ではすぐに回復されてしまう。厚い脂肪の下は筋肉の塊で、その凄まじいまでの筋密度は膨大な破壊力を生み出す。まさにたった一人の対軍兵器と言えるだろう。
マッドがランスを構えながら地響きを立ててキングオークに突進、ランスの射程に入った瞬間凄まじい勢いでランスをキングオークへ向けて突き入れる。それを丸太でいなすキングオークだが、その隙を縫うようにマッドは盾に雷をエンチャント、そのまま思い切り正面から盾をキングオークに叩きつける。キングオークに物理耐性はあるが、逆に物理耐性に影響を受けない雷エネルギーは彼に非常によく効いた。だがキングオークはその持ち前のタフネスであっという間に持ち直し、両手で持った丸太でマッドを思い切り突き飛ばし体制を崩させ、いわゆるヤクザキックでこれまた思い切り蹴飛ばした。キングオークは短足だがその巨体を支えるために脚部は上半身以上に筋密度は凄まじい。たたらを踏むようにマッドは押し出されてしまった
持ち直したキングオークは魔力によって強化された丸太を思い切り振り被ってマッドに叩きつける。マッドはそれを盾で受け止めるが、その尋常ではない威力に大きく五メートルほども後退させられる。魔力によって強化されたはずの魔鋼の盾の一部がひしゃげるくらいの威力、まともに受けては盾とマッドの腕が持たないだろう。今の一撃でマッドの左肩の関節パーツが決して少なくないダメージを受けて軋んだ。
されどマッドの闘争本能は衰えず、むしろ爆発的に燃え上がる。兜の口の部分が口のように割れ開き、マッドは猛り狂うように吠えた。
『ギュラァァァァァァァ!!!!!』
怒りと共に手に持つ槍を天高く掲げるマッド。スタンピードが始まってから曇り始めていた空の雲が急激に暗さを帯びる。そして天空でジラジラと黄金の光が瞬き始め、マッドの咆哮に呼応するように雷が唸りを上げ始めた。刹那、真っ黒になった雲から轟雷がマッドの掲げるランスへと降り注ぐ。その余りのエネルギーにマッドから漏れ出た雷が周囲に降り注ぎ倒れていた木々を焼き尽くしていった。同時にランスが金色の雷を纏って輝きだし、根元から激しく回転を始めたのだ。
『金雷槍グヴィン・ヴェルグ』。嵐の化身であり雷を司るマッドが携える形を持った雷霆。同時に雷エネルギーはマッドにも伝染し、マッドの重装甲の一部が展開、黄金に輝きだす。護りに重きを置くマッドが己の矜持を投げ捨てて倒すべき敵を見出した時に変形する、相手を撃ち滅ぼすための形態。『轟雷纏い』である。
キングオークはただ彼を見ていた。一つは王としての矜持から。一つは彼の纏う金色の雷が、自身が初めて美しいと思えるものだったからだ。おもむろにキングオークは手に持った木を地面に深く突き刺す。そして目視できるほどの膨大な魔力を周囲の地面ごと刺した木に流し込む。キングオークの土魔法の影響を受けた土はキングオークの突き刺した木に纏わりつき、強く、強く結びつき、凝固していく。キングオークがそれを引き抜いたとき、それはキングオークの身の丈を超える巨大なハルバードになっていた。
ハルバードを横薙ぎに振り回すキングオーク。丸太状態ですらマッドの重装甲にダメージを与えるほどの攻撃、マトモに当たればその重量でねじ切るように両断されるのは必至だ。キングオークが先ほどやってきた攻撃のいなしをマッドは学び、盾でハルバードの攻撃を受け流すようになった。
何度かの衝突でマッドは長物の攻略方法を本能的に悟ったのか、インファイト戦を挑む。刃の届かない内側に潜り込み、そして振り回す前で威力が乗る前の刃を盾で固定、金色のランスをキングオークへと突き立てる。
金色を纏ったランスはキングオークの左肩に突き刺さり、その回転によってさらに深く肉へ食い込んでいき、さらにその回転は雷をキングオークの体内へと解き放ちながら深くへと沈んでいく。
歯を食いしばり、スキルの自己再生で全力で発動させ、それでもなお雷はキングオークの体内を焼いていく。マッドも、キングオークも互いに力の限り絶叫する。マッドは全身全霊を込めたその一撃で終わらさんために。キングオークは苦痛の声をごまかし己を鼓舞するために。そして決着は訪れた。
キングオークの魔力が尽き、自己再生が停止。さらに魔力を纏わせていたハルバードも崩れ、丸太は燃え上がり崩れた。さらにダメ押しでマッドが雷を全開にする。その強烈な雷の衝撃でキングオークはその巨体を吹き飛ばされ、何の因果か先ほどマッドが叩きつけられていた崖にめり込むように叩きつけられた。衝撃で崖が崩れ、キングオークは崖の崩落に飲み込まれて行った。
マッドが纏っていた雷を解除し、装甲が元に戻る。そして数秒崩れた崖を見やり、踵を返して恐竜形態へ戻った。そして少なくないダメージを引きずりながらゆっくりと仲間がいる方向へ歩き出す。先ほどまで鳴り響いていた雷は静かになった。
だが次は風が少しずつ強くなり始めていた。
ちょっとでも迫力が出てたらいいなぁ




