その戦士、重き鎧と轟雷(イカヅチ)を纏いて
お詫びと訂正
歯車人形を魔歯車人形に変更します。度々の訂正申し訳ありません。
そして投降の大幅な遅れ、申し訳ありませんでした。
先ほどまでキヤ達が居た川の下流に次々と魔物が現れた。ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、ファンタジーで見かける定番の低級から中級モンスターが群れとなって辺りを埋め尽くしていく。だれもかれも獲物と住み心地の良い場所、そしてあのドラゴンの手の届かない所を目指して歩み続ける。が、開けた場所に見たこともない魔物のようなものが佇んでいた。
その姿はダンジョンでよく見られる死霊系の魔物、スケルトンに雰囲気が似ていた。骨の塊であることは確かだが、魔物たちが見かけるスケルトンはどれも人間の骨で作られていた。だがそいつは違った。自分たちが見たこともない四足歩行の魔物のスケルトンだ。だがそれの骨はいつも見る骨とは違う。鈍く鋼色に輝くその骨はどこかゴブリンが持っている剣と同じのように見えた。そしてその骨の内側には小さな骨の欠片のようなものがぎっしり詰まっており、絶え間なく、そしてせわしなく蠢いていた。
と、そのスケルトンもどきの薄暗い眼窩から黄色い光が漏れだす。同時に首が動き、前足で地面をザリザリとひっかいた。魔物たちは本能的に悟った、スケルトンもどきは自分たちに敵意を向けていると。その瞬間、スケルトンもどきが尋常ではない速度で突進してきた。
最初に衝突したのはひときわ大きなオークジェネラル。冒険者ならBランクが集団で対処してやっと倒せるレベルの強力な魔物だ。その耐久性と筋力もは尋常ではなく、人間ならパンチ一発で絶命に至り、最悪肉塊になるだろう。だがもし衝突してきたものが人間ではなく数百キロ以上の鋼の塊ならどうだろうか?
突進に特化した体による重さ、そして鼻先の一本角による急所をピンポイントで刺し貫く一撃の鋭さ。反応できなかったオークジェネラルは強い衝撃を感じたと同時に即死した。
スケルトンもどき、もとい『魔歯車人形・マッド』は突き刺さったオーガの死体を首を振り回すことで他の魔物へと投げつけて魔物に混乱と破壊を齎した。足元のゴブリンやコボルトは踏みつぶし、オークやオーガは突進で吹き飛ばし、ウルフ系の魔物に囲まれれば襟巻から雷魔法を放って壊滅させ、それは最早蹂躙と言って差し支えない活躍ぶりだった。
『ギシャォォォォォォン!!!』
耳を突き貫くような鋼の動力から吐き出された咆哮が周囲に響き渡り、ゴブリンなど低級の魔物はその恐ろしさに腰を抜かしてしまった。
だがマッドの快進撃は長くは続かなかった。地響きを立て、小型の魔物を吹き飛ばしながら奥から現れたのはキングオーク。オーク種の中でトップレベルの危険度を誇る魔物だった。足元のゴブリンやコボルトを邪魔だと言わんばかりに踏みつぶし、蹴り飛ばしながら悠々と歩いてくる。キングオークはマッドの姿を見ると、おもむろにその辺りの木を片手で引っこ抜き、力む様子を見せる。するとキングオークの魔力が木に纏わりつき、ただの木材だったはずのものが粗雑な魔剣に匹敵する凶悪な凶器となった
『ゴォォォアァァァァァァァ!!!!!』
武器を掲げながら放たれたその勇猛猛々しい咆哮によって腰を抜かしていた魔物の軍勢は再び気勢を取り戻した。王たるカリスマも持ち合わせているらしい。
ある一定の強さを持つ生き物は、その魔力を武器に纏わせ使うことでそのスペックを大幅に上昇させることが出来るという。事実、A級冒険者ギルバの魔道義手は、ギルバの身に纏う強烈な放射魔力により変質し製作者の想定をはるかに上回るカタログスペックを叩きだしている。
それをほんの数秒で成し遂げるあたりこのキングオークは只者ではないだろう。なりたてのキングオークではなく、幾多の戦いと年月を重ね裏打ちされた実力によってそれに成った歴戦の戦士。対するマッドも太古より群れを守る守護者として戦い続けた歴戦の戦士。重量級の二大巨頭が今、激しい爆音と共に衝突した。
マッドの身体から金属と動力が軋むような音が響き、次の瞬間今までとは比べ物にならないスピードでキングオークへ向けてその巨体が射出された。鋼のストンプが大地を踏みしめるたびに大きく揺れるほどの地響きが起こり、他の魔物は手出しが出来なくなってしまう。そんなマッドを憮然とした態度で迎え撃つキングオーク。中級魔物なら数百単位で仕留められそうな一撃をキングオークは強化した即席の棍棒でガードする。即死級の一撃は防御できたもののキングオークはマッドの勢いにかなりのスピードで後ろへ後ろへと押されていく。
数十メートルほど押されたところでキングオークはカッと目を見開き、その太く強靭な足をズゥンという音がするほど思い切り強く踏ん張った。すると徐々にスピードが遅くなり、瓦礫を巻き上げながらも突進が抑えられていく。
『ブフォッ!!!』
そして突進が止まってしまった瞬間、キングオークは棍棒を跳ね上げるように動かしてマッドの攻撃を弾き、その歴戦の巨拳をマッドの頬へと叩きつけた。
『ギシュゥゥゥーーーン?!』
自慢の一撃を力で弾かれ、頬に突き刺さった強烈な衝撃にたたらを踏むマッド。その隙を歴戦の王が見逃すはずもない。振りかぶった棍棒の強烈な一撃がマッドへと叩き込まれた。鋼の身体とは言え尋常ではない一撃にパーツの一部にヒビが入り、マッドは岩壁に叩きつけられた。魔物たちは吠え、猛り、歓声を上げた。
岩壁が割れるほどの衝撃を受けながらもマッドは折れない。残存魔力は十分。あの時とは違う新たなる力。全身のあらゆる機関が唸りを上げる。そして彼は再び立ち上がった。
恐竜形態の頭部が真っ二つに分割、肩部の後ろへと移動し、腹部も中央から割れて背部に展開するように開く。その腹部に格納されていた腕部や脚部が解き放たれ、元あった四つ足が延長される形で、人間の手足にそっくりな新たな手足が出現した。そして鋼の巨人は立ち上がる。恐竜形態の頭部の中に格納されていた、重戦士の兜のような意匠の新たな頭部に雄々しき一本角が立ち上がる。
『歯車人形・重雷角竜戦士マッド』。太古の戦士が邪悪を焼き貫く雷を纏い、新たなる姿を以て今再び立ち上がった。
PS 誤字脱字チェックありがとうございます、毎度毎度助かってます。もう私ダメかもわからんね




