生きる《戦う》ために、再び立ち上がれ
翼を含めればドラゴンに匹敵する大きさ。そんな空を覆いつくさんばかりの大きさの翼竜は強く羽ばたきながら特徴的なトサカに魔力を収束させていく。そして台風を凝縮したかのような威力の風の弾丸を容赦なくドラゴンに放った。
風の弾丸の威力たるや、ドラゴンに着弾と同時に辺りの植物が一斉に数百メートル吹き飛ばされスティラコサウルスの群れやスピノサウルスも例外なく大きく吹き飛ばした。この凄まじいいまでの威力にドラゴンすらバランスを崩して横倒しに倒れた。
翼竜のあまりの剣幕にキヤは不思議に思い崖の方を見ると、なるほどそこには翼竜の巣と思わしきものがあった。ちらりと見えたその中には大きな卵が数個鎮座している。子を護るために命を賭けてドラゴンを追い散らそうと出撃したのだ。スティラコサウルスとスピノサウルスの戦いを見ていたのも自分の巣に被害が及ばないかヒヤヒヤしながら見守っていたのだろう。
カン高い咆哮を上げながらの油断せずトサカに魔力を収束させている翼竜。横倒しになったままもがくドラゴンだが、ふいに首の方向を変えて上空へとへ巨大な火炎弾を吐いた。その火炎弾はある程度の高度を経て急激に方向を変えて落ちていった。翼竜の巣がある方向へと
先ほどほどではないものの衝撃と爆風が辺りに広がる。翼竜は燃え盛る巣を見て絶叫した。子を失ってしまった悲痛な叫びがキヤの耳を刺した。さらにドラゴンは容赦しない。翼竜は戦闘中にもかかわらずドラゴンに背を向けてしまっていたのだ。
ドラゴンは即座に起き上がりその巨体で飛び上がり、太い爪で翼竜の翼膜を引き裂き、そのまま全体重をかけて地面に叩き落とした。今度は身体へのダメージで悲痛な叫びをあげる翼竜。そのときキヤはドラゴンがニヤリと嗤ったような気がした。
翼の骨も折れ翼竜は満身創痍。このままドラゴンのエサになるかと思った瞬間ドラゴンの左横から凄まじい勢いで何かが衝突した。スピノサウルスだ。体勢を崩したドラゴンの首に噛みつき、前足のツメで鱗を剥ぐ。苦痛の声を上げ振り払おうともがくドラゴンだが、スピノサウルスはすぐに口を離して距離を置く。だがドラゴンの攻撃射程から逃げきれず尻尾の思い一撃を食らって大きく後退させられた。だがダメージを押してスピノサウルスは口に魔力を収束させウォーターカッターを鱗が剥がれた場所に噴射。深くはないもののドラゴンに傷を負わせた。
ドラゴンは血を流しぐしょぬれになりつつも魔力を収束、巨大な火炎弾をスピノサウルス目掛けて発射しようとした。が、今度は右横から凄まじい勢いで何かが衝突した。スティラコサウルスだ。より突進に特化したスティラコサウルスの一撃にドラゴンは思わず倒れこむ。その隙をスティラコサウルスは見逃さない。角に魔力を収束、強烈な雷撃をドラゴンへ向けて発射した。瞬時に膨大な魔力を使った影響か、荒く息をこぼすスティラコサウルス。
強烈な雷撃を水を被った影響で全身余すところなくダメージを負ったドラゴンはついに動かなくなった。それを見届けたスピノサウルスはゆっくりと踵を返し、若干足を引きずりながらどこかへ去っていった。スティラコサウルスはよろめきながらも仲間と合流し去っていった。翼が折れ致命傷を負った翼竜は体を引きずって燃やされてしまった巣の方へ歩き出した。
ここでキヤの視界が真っ白になった。そして場面は変わる。
どこかの深い渓谷の崖の上だ。飛行に重要にな翼膜をほとんど失い、折れた翼の骨は歪に繋がって、それでも翼竜は空を目指した。今までなんでもなかった高い場所がこんなにも恐ろしい。だが翼竜は飛んだ。翼竜は飛ぶことが好きだったのだ。風を切り裂き景色を置き去りにし、目まぐるしく変わる空の世界が好きだった。
そして翼竜は渓谷の底に流れる川の中へと飛び立っていった。
スピノサウルスはあてどなく歩いていた。角竜に喧嘩を売ったのは食うため、生存のため,、捕食するためではない。命の削り合い、互いの全てをかけてぶつかり合う戦いが好きだった。よく見ればその体には数多の傷が刻み込まれ、その生き様の苛烈さがにじみ出ている。だが今回の戦いはさすがに響いた。思い切り体当たりしたときに首の関節に異常をきたし、ドラゴンの尻尾の衝撃であばら骨が内蔵に突き刺さっている。
どうにか居心地よさそうな水辺へやってきた。倒れこむように水へと体を浸す。もう一度立ち上がれたら、今度はどんな奴と戦おうか。そんなことを考えながらスピノサウルスは眠りについた。それ以降スピノサウルスは目覚めることはなかった。
本来スティラコサウルスは土魔法を得意とする。土を盛り上げ巣を作り、その巣の大きさが大きければメスにモテる。だが彼は突然変異か土魔法が使えず、代わりに雷魔法が使えた。彼は孤高だった。仲間は気にせず受け入れてくれているが、自分は恐らく子孫を残せない。本能的に悟っていたのだろうか。だからこそ彼は率先して群れを狙う敵と戦った。
ズタボロに傷つき、それでも立ち上がり敵と戦う彼を仲間は慕った。だからこそだろう。最早動けなくなり、倒れてしまった誇り高い戦士を無残に食われるまで放置することは容認しがたいことだった。繁殖期以外で使うことのない土魔法で彼の遺骸を優しく包んでいく。
そして群れが去った後には小高い丘が出来ていた。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「……ヤ! キヤ!! どうした?!」
「大丈夫ですかキヤさん?!」
マーソウに揺り起こされハッと意識を取り戻したキヤ。頬が少し濡れている。壮絶な彼らの生き様、だが言葉で表すことが出来ない美しさ。その重みがキヤに涙を流させたのだろう。ギアボックスの画面を撫でる。
「ごめんな……ゆっくり寝てたのに、叩き起こしちまって……でも、あなたたちがそうしたように、俺もそうしたいんだ……最後まで、戦い抜きたい。だから、このちっぽけな俺に、力を貸してください!!」
その言葉に応えるように、強く光る選択肢。キヤに迷いはなかった。
「万雷の拍手を送れ!!! マッド・ロック・チェスター!!!!」
太古の息吹と鋼の鼓動、重なり合った巨大な三つの咆哮が辺りに木霊した。
どこかで見たんですが、拍手喝采のことを嵐を呼ぶ、トルネードコールって言うみたいなんですが、調べても出てこないんですよね……まぁそのほうが面白いので採用してます。どこぞの春日部の五歳児が出てくるのがほとんどでしょうがw
次回、鋼の重戦士、立つ




