守りたければ躊躇うな
お待たせしまして申し訳ありませんでした。お詫びとしてちょっと長めです。
気が付けばここにいる人間は工房メンバーにエリナ、そして先ほど逃げ遅れた兄妹だけだった。後は埋め尽くすように大量のモンスターが津波のように迫ってくる
「どっせいオラァ!!」
『ギュペェ?!』
「来んなし駄犬!!」
『ギャイン?!』
蒸気銃を思い切り振り被って走り寄ってきたゴブリンの頬を撃ち抜くキヤ。そしてそのままトリガーを引き背後から寄って来ていたコボルトを牽制する。蒸気銃は護身道具なので殺傷能力が低いのが仇になった。仕留めなければ仕留められるモンスターとの戦いで非殺傷武器は非常に不利だ。矢継ぎ早にモンスターが来るのでギアボックスの武器を取り出す暇もない。と
「吹き飛べ!!」
『ガブォ?!』
マーソウのパイルバンカーの強力な一撃によって吹き飛ばされた巨躯の魔物オークがキヤに迫っていた小型魔物を一気に潰した。
「キヤ! どうにか逃げるスキは出来ないか?!」
「十秒……いや、五秒でいい、持たせてくれ! 全員! 道具を出したらすぐ下がってくれ!」
「わかった!」
マーソウは上手く立ち回り魔物を吹き飛ばして肉弾として射出する。親友が作ってくれた決定的な隙。無駄には出来ない。キヤはギアボックスに登録されていた封印していた最終兵器を解き放つことを決めた
キヤはあくまで職人だ。自分の戦いはあくまでモノを作ること。だが目の前で今にも殺されてしまいそうな命を放っておけるほど薄情ではない。『誰かを護るための力』を持っているならなおさらだ。その誰かを護るための力は偶然にもキヤの手の中にあった。
いや、これは偶然なのだろうか? 偶然の一致か運命の合致か。ごちゃごちゃ考えても仕方ない、ジーっと手をこまねいていてもどうにもならない。キヤは意を決して封印していたコードを叫ぶ
「コール・ギアボックス!! 666(スリーシックス)パンドーラ!!」
キヤがギアボックスを掲げて叫ぶと、ギアボックスは口を開いて大量の部品を吐き出す。キヤに纏わりつくように吐き出された部品はやがて組み合わされ形作られ、大量の銃口を備えた兵器へと変貌する。
アニメに出てくるロボットのコックピットの周辺に雑に重火器を大量に張りつけたような、一部の人間が見ればロマン溢れるギアボックスの最強にして最凶の形態。一度引き金を引けば滅びの嬌声が溢れんばかりの絶望となって吐き出される禁忌の箱。
「全武装安全装置解除! 無限之銃声!! 一斉掃射!!!!」
ギアボックス・パンドラ形態に備わる自動照準機能により、キヤの前にある半透明のモニターに複数の赤い点が表示される。そして、破滅への引き金は解き放たれた。
「るゥゥゥゥオアァァァァァァァァ!!!!!」
肩部のガトリングが唸りを上げ、腰部のレールガンが猛り吠え、腕部の二連砲が咆哮する。背部に接続された六つの六連装ミサイルポッドのハッチが一斉に弾け飛び、小型ミサイルが前方へと無差別に降り注ぐ。
キヤが毎晩溜め込んでいた膨大な魔力を存分に威力に変換し蹂躙する。その余りの暴威に魔物は自分に何が起こっているかすら認識できずに死んでいく。気が付けば辺りの魔物は全て死んでいるか、恐慌状態で逃げ回っているものだけになった。
「やっべ、もう魔力が尽きる?!」
コックピットのモニターに表示されたエネルギー残量の表示が僅か数分経たずにイエローゾーンへと差し掛かっていた。慌ててパンドラ形態を解除するキヤ。ここはしのげたが、後のことを考えてある程度余裕は残しておきたい。
「全員、無事か?!」
「こっちは大丈夫だ!」
「ケホッ、平気!」
「こちらも大丈夫です!」
「よっしゃ、今のうちに逃げるぞ!」
全員の無事を確認しキヤは街へと向かおうとするが、帰宅用の馬車は全て無くなってしまっており、もちろん馬も一頭も残っていなかった。無我夢中で逃げるあまりのことだろう、理不尽ながらも強く怒ることは出来なかった。苛立ちから簡易馬房の柱を思い切り殴るキヤ
「クッソ!! マズいな……これ以上ここに居たら第二陣が来ないとも限らん……」
「キヤ、バイクは?」
「向こう、ホテルに置きっぱなしだ。クソ、レンタルできるからって油断してた……」
「もう一台製作して出せないか?」
マーソウの言葉にギアボックスの待機画面を開いてスワイプするキヤ。ある程度入っているものは把握していたが確認のためにスワイプを続ける。
「クッソダメだ、加工に使える資材が圧倒的に足りん、加工するための魔力とかもさっきので足らん。入ってるのは加工済みの……」
六体分の、魔歯車人形の部品だけだった。と、マギアゴーレムの名前の表示が僅かに光る。まるで許可を求めるように。こちらに手を伸ばすように。キヤはごくりと不安を飲み込み、意を決してアイコンをタップした。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ここはどこだ?
キヤは夢を見ているかのような浮遊感を味わっていた。見回しても全てに白い靄がかかっており、まともな視認はできそうにない。と、ある方向のモヤが急激に晴れ始めた。キヤは導かれるようにそこへと進んでいく。
次にキヤが目を開けた時には辺りは原生林のような風景になっていた。獣や鳥のような喧しい鳴き声が木霊し辺りのシダ植物を揺らしている。と、やかましい鳴き声に地響きが混じってきた。刹那、ドォン!! という轟音。そちらに意識を向けると、そこには激しくぶつかり合う二つの巨躯があった。
その二つの巨躯にキヤは見覚えがあった。一つは棘だらけの襟巻に鼻先の一本角、大地を踏みしめる太い四ツ足、スティラコサウルスのような魔物だ。そしてもう一つは巨大な体と顎に背中に大きな背びれを持つ肉食恐竜、スピノサウルスのような魔物だ。そして少し離れた崖の中腹にある大きな洞穴から、衝突する二匹を見ている巨大なケツァルコアトルスのような翼竜がいた。
あり得ないことだと脳内で混乱しつつもキヤは察した。これは彼らの過去の記憶なのだろう。
スティラコサウルスの背後には同族の大きな個体がまるで方陣を組むかのように並び立ち、仲間を鼓舞し敵に威嚇するように吠えている。その鼓舞に応えるようにジリジリと地面を足でこするスティラコサウルス、そんな彼を油断なく見やりながら隙を伺うスピノサウルス。そして二つの剣と盾は衝突した。
スピノサウルスの背びれが蒼白く発光したと思った瞬間、スピノサウルスは咆哮し彼の周囲に巨大な水塊が出現、高速で撃ち出される。それを予期していたのようにスティラコサウルスは襟巻に雷を纏わせ、電磁バリアのようなものを展開、水塊を弾き飛ばしてしまった。そうだ、彼らは古代の魔物。姿形が似ていてもキヤたちの世界の恐竜とは全く違うのだ。
攻撃が無効化されたにも関わらずスピノサウルスは動じず、吠えながらスティラコサウルスに接近する。同時に口の周りに魔力が集まり収束していく。それを見たスティラコサウルスは襟巻の雷を鼻先の一本角に集めていく。そしてスピノサウルスは収束した水魔法をウォーターカッターのように放つが、スティラコサウルスは雷の角でウォーターカッターを突き壊し、そのまま突進する。数トンに及ぶであろう巨体が激しくぶつかり合い、辺りが僅かに揺れた。そのまま組合い、押し合い、頭でド突き合い、実力は完全に拮抗しているようだ。が、その拮抗状態を崩すものが現れた。
爆音とも呼べる咆哮を上げて現れたのはドラゴンだ。二匹の大きさすら霞むほどの巨体は獰猛な威圧感をたたえながら歩を進めてくる。鼻先から伸びる一本角、岩を噛み砕く牙、尋常ではない強度の鱗、木々を蹴散らす巨躯、背中にはまだ幼いが空を駆けるための翼。太古の昔より生き続ける生きた化石、それがドラゴンなのだ。
今までぶつかり合っていた二匹は突然現れた乱入者に気を取られて一瞬硬直してしまった。真っ先に動いたのは意外なことに、二匹の戦いを見守っていた翼竜だった。
一斉掃射はロマン。デカい怪獣同士のプロレスはロマン。つまりこのお話は私の性癖です()




