Ⅰ
勇哉は私の幼い頃の幼馴染だ。でも、いつだっただろうか、勇哉は市外に引っ越してしまったのでそれ以来会っていなかった。
そんな勇哉と再会したのは、高校2年生になった時だった。勇哉が私と同じ高校に入学して来たのだ。そして、私の入っている部活の仮入部にやって来て、そのまま入部したのだった。
「はじめまして。山中勇哉です」
私に高校で初めて会った時、勇哉はそう言った。
幼い頃の幼馴染は、私のことを覚えていなかった。
それでもやはり、幼い頃の幼馴染だったからだろうか、一緒に過ごすうちに、私と勇哉の心に恋心が芽生えた。
そして、いつしか付き合うようになった。
だけどまだ先輩後輩関係から抜け出せない感じが否めない。未だに勇哉は私のことを「友香先輩」と呼ぶのだ。しかも、話すときはいつも敬語。
そろそろ「友香」って呼んでもらったり、タメ語で話してもらったりしたいものだ。
今日は勇哉とデートをしていた。
「あ!これ、僕がずっと欲しいって思ってたハンカチなんです」
「じゃあ買ってあげるよ」
「いいんですか?」
「だって今日は勇哉の誕生祝いを買いに来たんだよ?当たり前じゃん!」
「ありがとうございます!」
……これをデートと呼べるかは謎だったが、まぁ、いいとしよう。
「なら明日、僕は先輩にとっておきのプレゼントを渡しますね」
「いいの?」
「だって、これで3つ目ですよ?なんか申し訳なくて」
「いいの、気にしないで」
「いえ、気にしますよ。だから先輩、プレゼント、楽しみにしててくださいね?」
「分かった、分かった」
「やった」
それは、とても楽しいひと時だった。
……だけど、今日は最悪の日になることに、その時はまだ気付いていなかった。




