Ⅸ
あの時、私達は駅へと向かう路地を、2人で歩いていた。
私は律儀に道の端を歩き、勇哉は車通りが少ないからと、車道の中央を歩いていた。
「危ないよ、勇哉」
「このぐらい大丈夫ですよ、友香先輩」
ひやひやしながら私が注意しても、勇哉は平気そうに歩いていた。
そんな時、不意に私が後ろを振り向くと、猛スピードで走る車がすぐそこにいた。無音で走る車だったから、勇哉は全く気付かなかったのだ。
「……勇哉!」
私は勇哉を突き飛ばした。勇哉は飛ばされた。
それと同時に、車が私に衝突した。
その時、勇哉が街路樹に体を打ったのが見えた。その後感じたのは、とてつもない痛み。既に目の前が真っ暗になっていた。
(勇哉、街路樹にぶつかったけど……大丈夫だったの?)
朦朧とする意識の中、考えた。
(あのまま頭を打って死んだりしていないよね?)
遠くの方から救急車のサイレンが聞こえてきた。
——今考えると、こんなに早く救急車が来るわけもないのだから、きっとたまたま近くを通り過ぎた、全く関係のないものだったのだろう。
「もう間に合わない」
「多分死んでるぞ」
そんな通行人の声が聞こえる。
その時、ふっつりと意識が途切れた。
——今思うと、あの通行人たちの言葉は、明らかに私に向けられたものだった。
気がついた時にはあの街路樹の前にいた。
勇哉は、いない。
そう気付いた時、私の記憶は無意識のうちに書き換えられてしまっていた。
(……勇哉は、死んでしまった)
私が突き飛ばして、頭を打ったせいで。
私はこうやって助かってしまった。強く押したがために前によろめいて、すんでのところで車を避けてしまったのだ、と。
(私のせいで、勇哉が死んだ)
私は、そう思い込んでしまったのだ。
そして私は、あの路地を彷徨っていた。
そんな私を勇哉が見つけてくれて……
ドン!ドドン!
「……死んだのは、私」
「そうだよ、友香」




